マンガを掘りつくせ!Manga Diggin’ vol.5.5 『激!! 極虎一家』PART2

マンガを掘りつくせ!Manga Diggin’ vol.5.5 『激!! 極虎一家』PART2

2017.05.24 - 特集

『激!!極虎一家』の最強ヒゲ面ヒロイン
‟女の中の女”枢斬暗屯子の恋

前回に引き続き、第6回も宮下あきら先生の名作『激!!極虎一家』をReader Storeのサブカル担当・野本が熱く語らせていただきます。えっ? もうお腹いっぱいだって? いやいや、本作の魅力はとても一度では表現しきれないのですよ! 今回は少年マンガ誌にその名を刻む、‟伝説のヒロイン”を紹介します。

決め台詞は「犯したる!」 現在もネタにされる圧倒的な個性!

『激!!極虎一家』を紹介するうえで、どうしてもここで語っておきたい強烈なキャラクターがいる。男くさい男ばかりの本作にあって、唯一のヒロインともいえる枢斬暗屯子(すうざん あんとんこ)だ。いや、ちょっとお待ちを……。つい勢いで‟ヒロイン”……と言い切ってしまったのだが、その言葉の責任を取るのは本当に難しい。なぜならこの枢斬暗屯子、筋骨隆々のたくましい体を持ち、男もうらやむような豊かなヒゲをたくわえているからだ。そこらの不良男子なんて一撃でぶちのめしてしまう彼女の決め台詞は『犯したる!』。美女に言われても嫌な言葉だが、暗屯子が放つと‟死刑執行”に近いくらいのニュアンスを持つ。それが実現した日には、男として生きる道を捨てる以外の選択肢は無くなるだろう。

 強烈な個性を持つ彼女だが、決して性同一障害では無い。誤解しないでほしいのだが、彼女は生物学的に‟正真正銘”の女性であり、スケバン風だがセーラー服に身を包む現役バリバリの女子高生なのだ。スカートに刺繍された文字は、「花の女子高生 処女一直線」(その中身は越中ふんどし)……。近年、女子高生を‟JK”などと略して、一部の男性層からはいまだカルト的な人気を誇っているが、彼女は彼らにとってユートピアを崩壊させる破壊神であり、すべての幻想に終焉を告げる者なのだ。その火力は『風の谷のナウシカ』の巨神兵をも凌ぐマンガ界の古代兵器……。うーん、彼女を形容し始めると、本当に言葉が止まらない。しかし、そんな暗屯子にもある日突然春が訪れる――。

学帽政と対峙することになった枢斬暗屯子。並みの男なら屁でもない彼女だが、政と比べればさすがに役者が違う。さんざんののしられながら殴られ、圧倒的な力の差を見せつけられたままボコボコに……。敗北を受け入れた時、暗屯子は気づく。そう、政は彼女の顔に傷が残らないよう手加減していたのだ。‟政、カッコいい”と思わず叫んでしまいそうだが、それは大きな罠。初めて男に優しくされた暗屯子は、一瞬にして政にフォーリンラブ! 乙女化は一気に加速していき、政はたちまち追われる身となってしまう。しかし、悪いことばかりではない。どこからともなく駆けつける暗屯子に、政は何度もピンチを救われることになる。暗屯子登場のテーマソングは、松任谷由実の「守ってあげたい」。『なんじゃあ、このガマガエルみてえな歌声は…?』と、虎たち周囲の人間が耳を塞ぐのが定番だ。冷静沈着でクールな政も、この時ばかりは額に汗を浮かべている……。

まったく嬉しそうではない政なのだが、心の中では感謝しているはず。愛のために体を張る枢斬暗屯子は、まさしく‟女の中の女”。本作に登場するたくましい男たちと並べても引けを取らないほどの魅力がある。8巻収録の『暗屯子・夢のはざま!の巻』は、彼女が母性に目覚める姿を描いたスピンオフ的な作品。思わず笑ってしまうほど勘違いしながらも、ひたすら真っすぐに‟女性”であろうとする枢斬暗屯子の姿は妙にかわいらしい。…とはいえ、「恋人にしたい女性キャラ」で彼女に清き一票を捧げるような、勇気のある男性は1人も現れないだろうけど。

(本記事は2017/1/31に、【es】エンタメステーションに掲載されたものです)

※本記事は連載当時の社会性を鑑み、作者の「表現の自由」を最大限に尊重して執筆しています。

ド田舎の米田村に住む天涯孤独の少年・虎は、勉強はイマイチだが喧嘩はめっぽう強かった。東京へ修学旅行で行った虎は、金もないのに盛り場で遊びまくり、そこへ現れた極道達をぶちのめす。そのハンパじゃない強さから百年に一人の逸材として、東京中の極道からスカウトされる虎だったが、自分をスカウトに来ない「極政一家」が気にかかる。そして「極政一家」に乗り込んだ虎は、学帽政と出会い……!?

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コンシェルジュ・プロフィール

野本和義

幼少時からお受験戦争に駆り出され、順風満帆にエリートコースをひた走るも、‟男の生きざま”を追求すべく編集者(=アウトロー)の道に。ストリート雑誌からキャリアをスタートさせ、その後、さまざまなジャンルの雑誌・マンガの制作に携わる。出版業界の新時代到来を感じ、Reader Store編成部に参加。

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※本コラムは連載当時の社会性を鑑み、作者の「表現の自由」を最大限に尊重して執筆しています。

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