「家族と私」の境界線を見つめ直す。この機会に本で学ぼう -VOL.14-
2019.09.27 - 特集
「家族のように」という言葉は、いつまでキラキラと輝き続けるのでしょうか?
個人や企業における多様性やダイバーシティーが推進される社会になっても、「家族」だけは今も無条件に幸せの代名詞のまま。本当は家族にだってそれぞれの形があるはずなのに、職場や医療など多くの場面で「家族のように」は画一的に使われます。
今回のテーマは、『「家族と私」の境界線』。
一度立ち止まって、「家族なんだから…」という言葉が持つ背景について考えます。
子の代わりに親同士がお見合いをする「代理婚活」。「女性活躍」の波に、取り残されていると感じる非正規女性──。結婚、仕事、単身、子育て、食などをテーマに、古い制度と新たな価値観の狭間を生きる「平成時代の家族」の姿を追う。
安泰で幸福であってこそ、家族――。広く信じられてきたこのイメージは、もはや幻想である。そのことは、親子、夫婦、兄弟姉妹の関係で悩む人が多い事実からも言えるだろう。「絆」や「愛」だけでは解決しない。私たちは、そろそろ、この現実と向き合わなくてはならない。無職の子どもと、親。「持てる世代」の親と墓守娘。引きこもりや依存症。経済的DV、離婚・・・・・・。家族問題と長年とりくんできた臨床心理士の著者は、家族問題をとく鍵は、「お金」だと指摘する。本書において、豊富な事例とともに、問題の根幹、現代社会の影響を浮かび上がらせ、具体的な提言もこころみる。「信頼関係がなくなったとき家族の権力・支配構造があらわになる。そうであるなら、むしろそれを駆使し、活用して信頼関係の再構築ができないだろうか。お金の出し方を工夫し、操作して、息子や娘の回復を図る。その工夫を説明しているのが本書の特徴だ」とことんリアルな事例とともに、ありうべき展望を描く、信田さよ子の決定版家族論。