Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.5 かっこいい男とはこういうもの

Serendipity ~偶発的な出会い~ vol.5 かっこいい男とはこういうもの

2017.05.08 - 特集

※本記事は2011.2.4時点のものとなります。

モテるため? それとも自分自身のため? 理由はともあれ、男子たるもの、日々〈男〉を磨いておきたいもの。おしゃれとは、ジェントルな振る舞いとは、かっこいい生き方とは……バレンタイン前だからというわけではありませんが、素敵な紳士になるための作法を学んでみませんか。

ひとつのことを徹底的に突き詰めていく情熱、それがダンディズム。

ひとつのことを徹底的に突き詰めていく情熱、それがダンディズム。 マニュアル本通りに振る舞っても、紳士の佇まいは作り出せない。

世界で一流といわれる酒場で、飲み姿や佇まいが"様"になっている人は、経験値も教養もある紳士だと僕は思っている。こればっかりはマニュアル本の通りに振る舞ったからといって、決して作り出せるものではない。ましてやピンストライプのスーツを着ればいいってもんじゃない。

僕が14、5歳のころは、女の子にモテたい一心でギターを覚えたし、一生懸命アルバイトもした。そうして稼いだお金で女の子を六本木のレストランに連れて行ったりした。いま思えば背伸びもいいとこ、ませた若造だね。そんな調子でナイトクラブにも出入りしてたもんだから、ヤクザにすごまれたり怖い思いもしたけれど、いろんなことを学んだよ。僕にとってはどれも学校だった。女との付き合い方もそうして身につけた。ショーン・コネリー主演の映画『小説家を見つけたら』にもあるけど、男は頭を使って、女と駆け引きをする中でだんだんと心の機微や女心が読めるようになってくる。好きだ好きだというよりむしろ、嫌いと言った方が心に響く時があると気付く。女が男を育ててるんだよ。
男は失敗しないと分からない生き物。

一方で、いろんな本を読むことも薦めたい。早いうちから多くの生き方や価値観に触れることで、見えてくるものもある。最初は手当たり次第読んでいても、年と共に焦点が絞られてくる。そうして限られた範囲を突き詰めていると、再びいろいろな物事が繋がり出して、視野が広がることがある。男は、それをさらに自分なりの答えとしてまとめなくちゃいけない。たとえば中村浩さんが書いた『糞尿博士・世界漫遊記』。内容は割愛するけど、ここには彼が突き詰め続けた糞尿への想いと成果が凝縮してる。彼こそ究極のダンディズムだ。『炉辺夜話』を書いた宮本常一さんもそう。日本中を歩いて回った民族学者なんだけど、彼もいい。つまるところダンディズムとは、ひとつのことを徹底的に突き詰めていく情熱なんだな。


僕は、男が出来上がるのに50年はかかると思っている。いろんな知識に触れ、経験を得るからこそ、男として成熟する。箇条書きされた要点だけの都合いいものなんか真に受けても駄目。ダンディズムとは、なるべく遠回り。そもそも男は失敗しないと分からない生き物なんだ。だから失敗してない男はどこか面白みに欠けるよ。

紙で味わう一冊

「時雨の記」 / 中里 恒子 (著)/ 文藝春秋

紙で味わう一冊 大人の恋を描いた名作。大人の恋がどういうものか知りたいならこれ。男目線で描いているためか、女性作家ものながら男でもギリギリ共感できる。主人公の男は普段、ものすごく紳士的に振る舞うのに、時にビックリするくらい図々しかったりもする。これも恋愛の機微、押しどころ引き際を分かってるからだろうな。

Profile

渡邊かをる アート・ディレクター

1943年、東京・築地生まれ。(株)渡邊かをるインク主宰。キリンラガービールのラベルをデザインするなど、広告のアート・ディレクターとして活躍する一方、陶磁器、美術全般への造詣の深さと、その粋なライフ・スタイルにも定評がある。鎌倉に昭和初期の建物(旧横浜銀行由比ガ浜出張所)をそのまま生かしたバー「ザ・バンク」(TEL:0467-60-6170)をオープン。

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