雑誌月刊『ムー』三上編集長インタビュー
2018.06.22 - 特集
月刊『ムー』と言えば、そしてオカルトと言えばこの人!三上編集長ロングインタビューを掲載。ご自身の経歴や“オカルトへの思い”など貴重な内容を収録しています。
※WEB書評投稿サイト「シミルボン」編集部で行ったインタビューを、Reader Storeで掲載しています。
『ムー』誕生とその素地について
シミルボン編集部 この時代、メディアでも、こういう素材の人気が高かったですよね。
三上 矢追純一さんが《木曜スペシャル》などでUFOスペシャルをやっていましたね。ネッシーが話題になり、ユリ・ゲラーが来日していた。一方で心霊写真が流行って、学校の教室に一人ぐらい心霊写真集を持ち込んできて、休み時間、人だかりができていたとかね(笑)。
シミルボン編集部 (笑)
三上 そのような状況で、こういう雑誌が少なかったという背景もあって。そういう流れの受け皿に『ムー』がなったんです。それから38年。「なんとかやってきたなあ!」と(笑)。
だいぶ大人向けには変わってはきましたが、どうしても作りが学年誌なんです。たとえば読者投稿の部分などは学年誌の香りが残っています。
シミルボン編集部 立ち上げの頃から、あまり変わっていないということですよね。
三上 どちらかというと“保守”というか、こういう不思議現象などのテーマを扱うのは実は非常に難しい。作り手が茶化したら思い切りシラケてしまう。そのあたりは、読者がすごく敏感に感じ取ります。かといって、作り手が思い切りはまって記事を作ると、読者は“引く”。
だから色んな競合誌が出てきては消えていったのも、この距離感のつかみかたを失敗したのではないかと思います。
シミルボン編集部 20代のときに買っていた分なんですが(と80年代の号をおもむろに取り出す)。比較すると、本質はあまり変わっていないのがわかります。構成も記事も。
三上 デザイナーの作り方も、写真を軸にした新聞や事典などに近いですよね。こういうところで、誌面的な印象として信頼感を出していこうとしていたんです。
三上 最初は《歴史群像》というムックの編集部に配属されました。意外に知られていませんが、《歴史群像》は、もともと『ムー』の別冊として創刊されたんですよ。同じ《高校コース》出身の編集部が作っていました。そこの半年後に新たな雑誌創刊の話がもちあがり、内部での人事異動に合わせて『ムー』編集部に転属となりました。あれから、もう四半世紀が過ぎましたね。
シミルボン編集部 もともと、そちらの素養のある方が選ばれて、かと思っていました。
三上 基本的に、普通のサラリーマンですよ(笑)。
シミルボン編集部 当時は、どういう体制で編集されていたのですか?
三上 今と変わらず、4、5人ですね。ただ、フリーの編集の方々が実際には記事を集めてきて、社員編集はその記事の窓口という立場ですね。
シミルボン編集部 まずはネタと。そこは作り方が変わっていないのでしょうね。
三上 毎日、UFOが飛んでいるわけでもないので(笑)。みなさんは、うちの編集部を“怪しい人間の集まり”と思いがちだけれど、基本は雑誌というのは、どこまでも媒体なんですよ。あくまでも“研究家やライターの原稿を載せる”、そこは一貫しています。《正論》や《諸君!》のようなオピニオン雑誌ではないので。
シミルボン編集部 特集記事とかは、どのようにして決めていらっしゃるのですか?
三上 どうしても雑誌なので、そのときに流行っているものを入れていく。ネタがあれば使います。何かネタないですか?(笑)
基本的には、研究家の方の提案に基づいて。バランスを取りながら決めています。
シミルボン編集部 季節感などは考えますか?
三上 年末は、翌年一年を通しての予言めいたことを入れたりもします。月刊誌ですから、付録もふくめて、それなりの配慮はしています。
シミルボン編集部 読者からの要望などはありますか?
三上 来ますが、決まりきったものが多いですね。だいたい、ネタの種類はそんなにない!(笑) 同じネタだけど、料理の仕方が違うだけです。
三上 理屈も必要ではあるけれど、さっきも言ったように、作り手側があまり入り込んでもまずいし、茶化すのもまずい。そんな距離感のなかで、懐疑的なスタンスを取って展開していく。
たとえば何か超常現象があったとして、まずは、一般常識の観点から考えられる仮説をすべて検証し、それでも説明がつかない部分をはっきりさせた上で、大胆な仮説をもちだしてくる。その仮説も、100%正しいというわけではないけれど、独自性が記事のオリジナリティとなって読者に訴えかけるのです。
シミルボン編集部 反響の大きいコーナーは? 実用的なページとかになりますか?
三上 実用スペシャルのテーマに関しては、かつては超能力開発や密教呪術などが人気でしたが、最近は、修行系といいますか、難しいことを要求するような企画は敬遠される傾向にありますね。
シミルボン編集部 編集長ご自身が気になっているテーマは、どのへんでしょうか?
三上 ムーが扱っているテーマはUFOや超能力、古代文明、秘密結社にしても、みな通底しているんですよね。包括的に、それが興味深いところじゃないでしょうか。
たとえば《異星人解剖フィルム》について考えてみる
ピューリツァー賞受賞ジャーナリストの大著、新装版で登場!「プルトニウムの人体投与」
本書は2000年8月に翔泳社より刊行された『プルトニウムファイル』上下巻を合本にしたうえで、若干の加筆・修正をし、訳者あとがきを一部新しくした新装版です。
プルトニウム原子の誕生からわずか四年半、マンハッタン計画が正式に発足し、放射能の人体への影響を知りたいがために、アメリカは国費をつかって放射能「人体実験」をはじめた。その厚い国家秘密の壁は、半世紀を経て一人の女性記者によって崩れはじめたのだった。そして「人体実験」の機密のヴェールは開かれ、コードネームだけの被害者たちは、ようやく生身の人間と変わった。
しかし、汚染されてしまった被害者の体は?実験によって亡くなった人は?秘密主義の名残りが、実験にかかわった医師たちの秘密隠蔽や言い逃れに変わるのか・・・・・・?
別のものの見方を提示する
本当と嘘
三上 本当らしいことが嘘の場合もあれば、嘘っぽいところに本当が隠されていることもある。UFOについて言うなら軍事。たとえば自衛隊だってUFOを確認している。航空自衛隊の空将の方が見ている。データも取っている。
日本列島の上空に、夜中、一切の飛行機が飛んでいないはずなのに、出雲から気仙沼まで三分で飛ぶ発光体がいた。これは何だ? データ収集しているはずなのに、自衛隊に問い合わせても「ありません」という返事。防衛大臣に訊いてもわからない。
ところが、不思議なことにデータがアメリカから出てくる。アメリカは情報自由法というのがあって、請求すればデータを確認できる。1980年代、裁判を起こして情報開示を求めたことがあって、情報を出させた。いっぱい黒塗りになってはいたけれど。そのなかに、日本の自衛隊がUFO出現を受けてスクランブル発進したことなどが載っている。でも、日本にはその情報はない。
異星人やUFOは夢のあるファンタジーととらえがちだけれど、実体は違う。リアルな軍事問題だ。情報の機密性の高さでいうと、水爆よりも上なのです。
シミルボン編集部 それだけ脅威ということですよね。
三上 この世界は法律というルールで管理されているのだけれど、それはUFOや超能力を想定していない。いる、いない、でなく想定していない。
たとえば警察学校で学ぶ法律問題などのなかに、呪いの藁人形がある。これは「取り締まれません」となっている。「呪いで殺されました」と訴えても、取り合ってもらえないでしょう。
アニメ&ラノベ世代にも《ムー》を!
シミルボン編集部 現在の読者層はどのへんですか?
三上 当初は、中高生を想定していた。それが、ずっと持ち上がってきている感じかな。なので、いまは中高生から70代、80代まで。中核は40代でしょうか。
シミルボン編集部 うちのストアの読者層と重なります。象徴や記号に興味のない層には、届きにくいということですか?
三上 アニメなどに、そういうものはキーワードとして入ってきています。使い勝手がいいのでしょうね。魔法陣に、天使や悪魔を召喚するとか、もうみんな同じでしょ。もっと深いところまで踏み込んでくる若い人は“マニア”ですね。
シミルボン編集部 熱心な読者に支えられているんですね。編集長にとって『ムー』とは、一言で表現すると?
三上 哲学雑誌にして、エンタメ雑誌。あくまでも知的エンターテイメント雑誌です。
文責:尾之上浩司