雑誌月刊『ムー』三上編集長インタビュー

雑誌月刊『ムー』三上編集長インタビュー

2018.06.22 - 特集

月刊『ムー』と言えば、そしてオカルトと言えばこの人!三上編集長ロングインタビューを掲載。ご自身の経歴や“オカルトへの思い”など貴重な内容を収録しています。
※WEB書評投稿サイト「シミルボン」編集部で行ったインタビューを、Reader Storeで掲載しています。

1979年創刊からもうすぐ40年という長き歴史を誇る雑誌『ムー』。時代とともに様々な話題をふりまいてきた、この独創的な雑誌について、いまいちどその歴史と編集方針について知りたいと考えたシミルボン編集部は、清水の舞台から飛び降りる覚悟で突撃レポートを敢行した。以下は、その一部始終である。
インタビューにお応えくださったのは、『ムー』編集長の三上丈晴氏である。

『ムー』誕生とその素地について

シミルボン編集部 まず、『ムー』という雑誌が誕生するまでの流れを教えていただきたいのですが。

三上 弊社は、もともとは学習指導要領にのっとった出版をしていまして、そのなかにおいては『ムー』は肩身の狭い存在でしてね。かつては、《科学》と《学習》という学年誌をやっていましたが、その上の学年に《コース》という雑誌がありまして、中1コースから高3コースまで。

シミルボン編集部 他社の学年習雑誌と対置するような感じでしたね。

三上 中学以上は旺文社さんですね。向こうは高校3年が『蛍雪時代』。旺文社の《時代》と学研の《コース》が2大学習誌としてあったんですね。教科書のアンチョコ(注・教科書内容を圧縮したテキスト)の部分が軸で、学年年代が上がると、それ以外のスポーツだとか芸能だとかの読み物の割合が多くなっていって、小学校よりも中学、中学よりも高校のほうが一般誌に近い内容になっていった。で、もともとは《コース》の編集部が始まりなんですね。3年分ある《コース》で、夏休みなどになると、読み物特集が組まれる――ミステリーゾーンとか、大予言特集とか――そうすると、人気がぼーんと上がる。

ちょうど1970年代の後半というのは雑誌ブームのときでしてね、創刊ラッシュで、弊社でも雑誌を創ろうということで、雨後の筍のように登場させた。カメラ雑誌の『CAPA』や、アイドル雑誌の『BOMB』だとかが生まれていったんです。

シミルボン編集部 どれも長寿雑誌になっていますね。

三上 アンケートを取って、需要があるようなテーマがあれば、それを雑誌にしよう、と。そして1979年11月に『ムー』を創刊。当時は隔月誌でした。いまよりも版型がひとまわり大きくて、マンガ、芸能、小説といったフィクションが主体でした。どうしても学年誌出身なので、読者対象としているのが中高生。その世代に向けたエンターテイメント雑誌として、そういう要素があったんです。

隔月で始めて1年ほどたって、なかなか数字は伸びない。そこでリニューアルということになり、どうせマニア雑誌なのだから、思いっきり特化してしまおうということになりまして。小学生でも歳相応よりも上のレベルの記事を読みこなすように、中高生向けだけではなくて、一般の大人でも読めるものにしようとシフトしたんです。ノンフィクション主体で、芸能記事などは排除しようと。それで1980年11月に版型をいまのサイズに小さくして、よりマニア向けにしたところ、ぽーんと数字が出て、そこから順調に推移するようになったんです。

『ムー』編集長 三上丈晴氏

シミルボン編集部 この時代、メディアでも、こういう素材の人気が高かったですよね。

三上 矢追純一さんが《木曜スペシャル》などでUFOスペシャルをやっていましたね。ネッシーが話題になり、ユリ・ゲラーが来日していた。一方で心霊写真が流行って、学校の教室に一人ぐらい心霊写真集を持ち込んできて、休み時間、人だかりができていたとかね(笑)。

シミルボン編集部 (笑)

三上 そのような状況で、こういう雑誌が少なかったという背景もあって。そういう流れの受け皿に『ムー』がなったんです。それから38年。「なんとかやってきたなあ!」と(笑)。
だいぶ大人向けには変わってはきましたが、どうしても作りが学年誌なんです。たとえば読者投稿の部分などは学年誌の香りが残っています。

シミルボン編集部 立ち上げの頃から、あまり変わっていないということですよね。

三上 どちらかというと“保守”というか、こういう不思議現象などのテーマを扱うのは実は非常に難しい。作り手が茶化したら思い切りシラケてしまう。そのあたりは、読者がすごく敏感に感じ取ります。かといって、作り手が思い切りはまって記事を作ると、読者は“引く”。
だから色んな競合誌が出てきては消えていったのも、この距離感のつかみかたを失敗したのではないかと思います。

シミルボン編集部 20代のときに買っていた分なんですが(と80年代の号をおもむろに取り出す)。比較すると、本質はあまり変わっていないのがわかります。構成も記事も。

三上 デザイナーの作り方も、写真を軸にした新聞や事典などに近いですよね。こういうところで、誌面的な印象として信頼感を出していこうとしていたんです。

シミルボン編集部 三上さんは最初から『ムー』に配属されたのですか?

三上 最初は《歴史群像》というムックの編集部に配属されました。意外に知られていませんが、《歴史群像》は、もともと『ムー』の別冊として創刊されたんですよ。同じ《高校コース》出身の編集部が作っていました。そこの半年後に新たな雑誌創刊の話がもちあがり、内部での人事異動に合わせて『ムー』編集部に転属となりました。あれから、もう四半世紀が過ぎましたね。

シミルボン編集部 もともと、そちらの素養のある方が選ばれて、かと思っていました。

三上 基本的に、普通のサラリーマンですよ(笑)。

シミルボン編集部 当時は、どういう体制で編集されていたのですか?

三上 今と変わらず、4、5人ですね。ただ、フリーの編集の方々が実際には記事を集めてきて、社員編集はその記事の窓口という立場ですね。

シミルボン編集部 まずはネタと。そこは作り方が変わっていないのでしょうね。

三上 毎日、UFOが飛んでいるわけでもないので(笑)。みなさんは、うちの編集部を“怪しい人間の集まり”と思いがちだけれど、基本は雑誌というのは、どこまでも媒体なんですよ。あくまでも“研究家やライターの原稿を載せる”、そこは一貫しています。《正論》や《諸君!》のようなオピニオン雑誌ではないので。

シミルボン編集部 特集記事とかは、どのようにして決めていらっしゃるのですか?

三上 どうしても雑誌なので、そのときに流行っているものを入れていく。ネタがあれば使います。何かネタないですか?(笑)
基本的には、研究家の方の提案に基づいて。バランスを取りながら決めています。

シミルボン編集部 季節感などは考えますか?

三上 年末は、翌年一年を通しての予言めいたことを入れたりもします。月刊誌ですから、付録もふくめて、それなりの配慮はしています。

シミルボン編集部 読者からの要望などはありますか?

三上 来ますが、決まりきったものが多いですね。だいたい、ネタの種類はそんなにない!(笑) 同じネタだけど、料理の仕方が違うだけです。

シミルボン編集部 科学雑誌的な創りの記事も目立つようになってきていますが。

三上 理屈も必要ではあるけれど、さっきも言ったように、作り手側があまり入り込んでもまずいし、茶化すのもまずい。そんな距離感のなかで、懐疑的なスタンスを取って展開していく。
たとえば何か超常現象があったとして、まずは、一般常識の観点から考えられる仮説をすべて検証し、それでも説明がつかない部分をはっきりさせた上で、大胆な仮説をもちだしてくる。その仮説も、100%正しいというわけではないけれど、独自性が記事のオリジナリティとなって読者に訴えかけるのです。

シミルボン編集部 反響の大きいコーナーは? 実用的なページとかになりますか?

三上 実用スペシャルのテーマに関しては、かつては超能力開発や密教呪術などが人気でしたが、最近は、修行系といいますか、難しいことを要求するような企画は敬遠される傾向にありますね。

シミルボン編集部 編集長ご自身が気になっているテーマは、どのへんでしょうか?

三上 ムーが扱っているテーマはUFOや超能力、古代文明、秘密結社にしても、みな通底しているんですよね。包括的に、それが興味深いところじゃないでしょうか。

たとえば《異星人解剖フィルム》について考えてみる

シミルボン編集部 上がってきた写真や記事は、そのまま載せるのではなくて、ふるいにかけて、が基本ですよね。

三上 もちろんトリック写真はいっぱいあってね。でも、フェイク(偽造)写真にも、実は意味がある。
10年ぐらい前に《異星人解剖フィルム》というものが公開されました。仰々しい、頭が大きくて身体の小さい“グレイ”タイプの異星人が手術台に載っていて、それを解剖していくという映像です。
「これは墜落したUFOに乗っていた異星人だ、というふれこみで全世界に公開された。様々な反響を呼んだあとで、これはおかしいんじゃないかという意見が出てきた。最終的に、レイ・サンティリという男が「あれは自分たちが作ったものだ」と告白して、結局フェイク映像ということで幕が下りた。

シミルボン編集部 はい。聞いたことがあります。

三上 じつは、フェイク映像でしたで、終わりではない。あれが日本でも地上波で流れたあとで、視聴者から電話がかかってきた。テレビ・ディレクターのところにね。「異星人解剖フィルムを見ました。わたしは、この人に会ったことがあります」と。それとは別に、著名な検死官の先生にフィルムを見てもらったところ「異星人かどうかは別として、これは本物の死体を解剖している可能性がある」と答えが返ってきた。
ディレクターが最初の「会ったことがある」という連絡をくれた視聴者にコンタクトすると、相手は「アメリカのLAで会いました。その女性は車椅子を使っていた」と説明した。なぜなら手足が不自由だったから。その原因は、当人の母親がマンハッタン・プロジェクトの人体実験の被害者だったからだという。
『宇宙人解剖フィルム』の話があったのはクリントン政権の時代で、当時、アメリカ政府はマンハッタン・プロジェクトにまつわる人体実験の存在について認めている(※参照『プルトニウムファイル いま明かされる放射能人体実験の全貌』アイリーン・ウェルサム 翔泳社刊)。
あの『異星人解剖フィルム』は、あの時期に放映しろという条件つきで用意されたものだった。彼らはあの時期に“告発”のためのフィルムを用意した可能性がある。
でも、そのためにあんなに費用をかけてまでやるだろうか? 
UFO問題の恐ろしいところは、結局、軍事問題が関わってくるということ。だから『異星人解剖フィルム』というのは“ただのフェイク”ではすまない話なんだ。

ピューリツァー賞受賞ジャーナリストの大著、新装版で登場!「プルトニウムの人体投与」

本書は2000年8月に翔泳社より刊行された『プルトニウムファイル』上下巻を合本にしたうえで、若干の加筆・修正をし、訳者あとがきを一部新しくした新装版です。

プルトニウム原子の誕生からわずか四年半、マンハッタン計画が正式に発足し、放射能の人体への影響を知りたいがために、アメリカは国費をつかって放射能「人体実験」をはじめた。その厚い国家秘密の壁は、半世紀を経て一人の女性記者によって崩れはじめたのだった。そして「人体実験」の機密のヴェールは開かれ、コードネームだけの被害者たちは、ようやく生身の人間と変わった。

しかし、汚染されてしまった被害者の体は?実験によって亡くなった人は?秘密主義の名残りが、実験にかかわった医師たちの秘密隠蔽や言い逃れに変わるのか・・・・・・?

別のものの見方を提示する

三上 読者も鵜呑みにはしていない。読み手のほうがレベルが高いというか、書かれた情報を自分なりに考えている。こちらは、どこまでもエンターテイメントのひとつとして情報を提供しているわけだけれども。
学校では、ちょっと頭の良い子が隠れて読んでたりとかしていたからね(笑)。

シミルボン編集部 いや、結構メジャーでしたよ(笑)。

三上 でも、合コンに持っていっても、みんなドン引きするだけでしょう(笑)。実際は、話をしているうちに何かのきっかけで『ムー』の話が出て「きみもか?!」という反応があったりするほうが多いのでは? ある意味、隠れキリシタンみたいなものですよ(苦笑)。

シミルボン編集部 『ムー』は、普段考えない、ものの見方を教えてくれるところが面白いですね。

三上 学校では決まり切ったことしか教えない。答えがあって、それとは異なるものは✖になる。でも「それって、本当か?」と。
たとえば進化論にしてもそう。確定的なものとして通用しているけれど、著名な学者で進化論を信じていない人もいる。進化論は科学的な考えかたではないのに、教科書には堂々と載っているけれど。
たとえば、ノーベル生物学賞ってないでしょう。生理・医学賞ならある。生物学というのは、いまだに博物学の側面がある。
よく「『ムー』って科学的じゃないですよね」って言われても、じゃあ、あなたは科学について知っているのですかって? 
科学的にこだわる人は「1+1=2」って言う。「9+1=10」。では「11+2」は?

シミルボン編集部 13(笑)。

三上 答えは「1」です。毎日、生活で使っているじゃないですか。

シミルボン編集部 12進法ですか。

三上 そう。たとえば占いで、生年月日の数字をどんどん足して、一桁の数字にしていくやりかたがある。1+9+9+9とか。あれって何だと思う?

シミルボン編集部 足し算(笑)。

三上 これ、小学校の2年生の時に習っているんですよ。算数で。これは9で割った余りを出しているですよ。つまり、すべての数を1から9までの数に変換している。
さらに、一桁の数字を3×3のマス目に入れると、魔方法陣ができあがる。これが気学のもとになって、五黄といった九星がある。みんな魔方陣がもとなんですよ。
相撲の土俵は黄色い。黒土や赤土ではだめ。土俵の上に屋根があるのは、神社を意味していたり、昔は柱があったのが、柱を取っ払ってしまった。いまでは四隅に房が飾られているけれど、それぞれ異なった東西南北を象徴する色がついている。
中華思想では中原が世界の中心であり、中国の皇帝は天命を受けた天子だとされる。ゆえに、漢民族の祖である伝説の初代の帝は“黄帝”と呼ばれる。

シミルボン編集部 なるほど。目からウロコの話ですね。

三上 国文学の世界でも、こういう占術や神秘思想の知識が必要になる。和歌の掛詞(かけことば)があるでしょ。「松」に「待つ」を掛けたりね。ほかにも3つ、4つ掛けたりする場合もある。
そもそも、和歌は暗号なんですよ。「ノストラダムスの予言」や聖書と同じ。全部、象徴で語られている。それを読み解かないと本当の意味がわからないようにできている。
いまだに謎が解けていないのが『百人一首』。冷泉家のものは一部組み合わせが異なっている。この歌人にして、この歌を選んだ理由がわからないことが多い。
三十六歌仙と百人一首の共通点は何か? 平方数なんだよ。これも、縦横斜めの数字を考えて魔方陣を作ることができる。
古今和歌集の奥義に「古今伝授」というものがある。代々、師匠から弟子ひとりにのみ継承される秘密の教義です。関ケ原の合戦のとき、継承者は細川幽斎だった。敗軍の武将である彼が死ねば、永遠に「古今伝授」の奥義が失われる。それゆえ、朝廷から早馬が来て助かった。

本当と嘘

三上 本当らしいことが嘘の場合もあれば、嘘っぽいところに本当が隠されていることもある。UFOについて言うなら軍事。たとえば自衛隊だってUFOを確認している。航空自衛隊の空将の方が見ている。データも取っている。
日本列島の上空に、夜中、一切の飛行機が飛んでいないはずなのに、出雲から気仙沼まで三分で飛ぶ発光体がいた。これは何だ? データ収集しているはずなのに、自衛隊に問い合わせても「ありません」という返事。防衛大臣に訊いてもわからない。
ところが、不思議なことにデータがアメリカから出てくる。アメリカは情報自由法というのがあって、請求すればデータを確認できる。1980年代、裁判を起こして情報開示を求めたことがあって、情報を出させた。いっぱい黒塗りになってはいたけれど。そのなかに、日本の自衛隊がUFO出現を受けてスクランブル発進したことなどが載っている。でも、日本にはその情報はない。
異星人やUFOは夢のあるファンタジーととらえがちだけれど、実体は違う。リアルな軍事問題だ。情報の機密性の高さでいうと、水爆よりも上なのです。

シミルボン編集部 それだけ脅威ということですよね。

三上 この世界は法律というルールで管理されているのだけれど、それはUFOや超能力を想定していない。いる、いない、でなく想定していない。
たとえば警察学校で学ぶ法律問題などのなかに、呪いの藁人形がある。これは「取り締まれません」となっている。「呪いで殺されました」と訴えても、取り合ってもらえないでしょう。

時折見せる三上氏の不敵な笑み。正に“本当と嘘”を体現する人物である。

アニメ&ラノベ世代にも《ムー》を!

シミルボン編集部 現在の読者層はどのへんですか?

三上 当初は、中高生を想定していた。それが、ずっと持ち上がってきている感じかな。なので、いまは中高生から70代、80代まで。中核は40代でしょうか。

シミルボン編集部 うちのストアの読者層と重なります。象徴や記号に興味のない層には、届きにくいということですか?

三上 アニメなどに、そういうものはキーワードとして入ってきています。使い勝手がいいのでしょうね。魔法陣に、天使や悪魔を召喚するとか、もうみんな同じでしょ。もっと深いところまで踏み込んでくる若い人は“マニア”ですね。

シミルボン編集部 熱心な読者に支えられているんですね。編集長にとって『ムー』とは、一言で表現すると?

三上 哲学雑誌にして、エンタメ雑誌。あくまでも知的エンターテイメント雑誌です。


文責:尾之上浩司

世に伝わる超常現象を信じるか信じないかは、あなた次第です。

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