教養としての「意識」
アントニオ・ダマシオ(著)
,千葉敏生(著)
/ダイヤモンド社
作品情報
生物としての人間の成功に大きく貢献した意識。感情、知性、心、認識、そして意識は、どのようなしくみで関わりあっているのか。あえて専門用語なしで書かれた最先端の洞察を通じて、解明不能と言われた「意識の秘密」が明かされる
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商品情報
- シリーズ
- 教養としての「意識」
- 著者
- アントニオ・ダマシオ, 千葉敏生
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- ダイヤモンド社
- 書籍発売日
- 2022.08.02
- Reader Store発売日
- 2022.08.03
- ファイルサイズ
- 3.9MB
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この作品のレビュー
平均 3.1 (8件のレビュー)
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「感情は心の平穏を乱す」
いかにもダイヤモンド社らしいキャッチーなタイトルで、"できるビジネスパーソンのための必須教養"みたいな売り方がされているが、安易に手に取るとエラい目にあうと思う。
「心と意識は同義ではないし、意識と…覚醒も別物である」ってどういうこと?
200ページほどの薄い本なんだけど、まず章立てからして変わっている。
1章が21ページなのに、4章は77ページで、これは2章と3章を足し合わせたよりも多い。
意識についての短い本を出版社から勧められて書き始めたら、大半が感情についての記述になってしまった感じだが、読めば納得する。
「感情が存在し、感情の主体が特定されれば心に意識は宿る」
これが、原題の『FEELING AND KNOWING』の意味なのだろう。
それにつけてもまずは感情、感情。
「私たちが何かを感じるのは、心に意識があるからだ。そして、私たちに意識があるのは、感情があるからなのだ!」
「感情こそが、意識という名の冒険の出発地なのだ」
ここから延々と感情の仕組みについての解説が始まるのだが、本書でもっとも読み応えのあった箇所でもある。
なにしろ「感情の進化の歴史は臆病な会話から始まった」なんて文章がさらりと出てくるから痺れる。
感情は、生物に「自分自身の生命の体験」を与える。
「感情があるからこそ、生物は、食べる、飲む、排泄するといった生命維持に欠かせない内臓機能の調整、恐れ、怒り、嫌悪、軽蔑を感じている最中に生じる防御姿勢、協力などの社会的な協調行動や葛藤、繁栄、喜び、高揚の誇示、さらには生殖に関連する行動の誇示などを行っている自分自身の身体の状態を、各々の心に描き出すことができるのだ」
また、感情とは「対話型の知覚である」とも。
さらに感情の持つハイブリッドな性質がまた面白い。
私たちの感情は「まったく独立した存在などではない」。
感情は対象と混じり合っている。
「実際、感情とその対象との間には、ほとんど距離がない。身体の構造と神経系との間で交わされる類を見ない密接な会話のおかげで、感情は私たちの感じる物事や出来事と交じり合う」
なぜなら内受容系のニューロンの大多数が、髄鞘によって絶縁されておらず、身体からの信号が神経信号と直接相互作用できるようになっているためだ。
つまり、絶縁体がないということは、特定方向だけに信号が流れるのではなく、全方位で信号が広く混じり合うということ。
ゆえに感情は心と身体をつなぐことできる。
「感情があるからこそ、心は何も尋ねられなくても自ずと、心と身体が一体であり、それぞれがもう一方に属していることを認識できる。こうして、物理的な身体を心的現象と隔ててきた古典的な空白が、感情のおかげで自然と埋められるのだ」
感情によって意識的なプロセスがつくり出される。
「感情こそが意識を生み、心の残りの部分へと惜しみなく分け与えた」
しかし感情だけでは意識は生じない。
「感情が存在し、感情の主体が特定されれば心に意識が宿る」というように、心の所有者であるという感覚もまた必要になってくる。
「意識が生じ始めるのは、その生物こそが心の所有者であるということを指し示す知識によって、心の流れが豊かになったときだ。つまり、私の心の内容が意識的なものになり始めるのは、『私』こそが現在心に保持されている内容の所有者であると、特定されたときなのだ」。
こうした所有者としての自覚を原題の『KNOWING』が指しているのではないか。
ここでいう豊かさは「心と意識は同義ではない」ということにも関係していて、すべての心の状態が必ずしも意識を伴うわけではないこと、意識とは、心の状態が豊かになったものだとも語っている。
意識とは、いくつもの心的事象が寄与する生物学的なプロセスから生じる「特定の心の状態」のことなのだ。
このように意識は、それがなければ何事も認識しえないし、文化を発展させ、歴史の道筋を変えたとも言われるほど重要なものなのだが、実は苦しみから意識が生まれたのではないかという指摘は大変興味深い。
「進化の過程において、意識が感情、とりわけネガティブな感情の手によって生み出された。痛みや苦しみ、死の認識は、幸福や快より大きな原動力になる」からだ。
このように意識とは、人間にとって有用だが、禁断の果実でもあったわけだ。続きを読む投稿日:2022.11.17
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このレビューはネタバレを含みます
『ビジョンとともに働くということ』(山口周 中川淳)で【ソマティック・マーカー】を知り、その関連書を読みたいと思って手に取った『ダマシオ教授の 教養としての「意識」 機械が到達できない最後の人間性』(…アントニオ・ダマシオ)。
レビューの続きを読む
ソマティック・マーカーというのは、本書著者が出した《意思決定において情動的な身体反応が重要な信号を提供するという仮説》であり、
簡単に言えば、《人が何かを実行しようと思った時の判断には、身体感覚や感情が不可欠》というものです。
「え、大事な事を体の感覚と感情で決めちゃっていいの」と思いますが、
過去の経験によって生まれた情動(身体感覚)・感情を記憶する部分である眼窩前頭皮質が除去された事で、
今まで通りの行動ができなくなくなり、同じミスを繰り返したり、意思決定ができなくなったりした事例があったそうです。
今回の本では、その感情を出す人の意識はどのようにして作られているかが書かれており、
❶ホメオスタシス(体外環境が変化しても体内の環境を保つために内分泌系、自律神経系、免疫系などに変化が起きる機能)由来の感情。
[ホメオスタシスの例]
暑い時、体温を下げるために汗をかく。
寒い時、体温を上げるために体を震えさせる。…etc。
❷情動的感情(記憶から呼び戻された今この瞬間の私、最近の私、遠い昔の私についての知識)
の2つで出来上がってるとの事で、
答えを出すのが難しい物事を「疑問には答えがあるし、難問は解ける」とずっと研究し続けるダマシオさんって、すっごいチャレンジャーだなって思いました。
「私たちの感情や近くの客体と主体な同じ生物の内部に共存するので「相互作用が可能になる」と読んだ時には、
《大笑いする事を続けたらガン細胞が減った話》や『マカン・マラン』(古内一絵)の《満たされない気持ちより先にお腹を先に満たして気持ちを整理する話》を思い出しましたし、
体と気持ちは繋がってるから体にとって良い事をしないと、
気持ちの面に表れるんだと思った1冊でした。続きを読む投稿日:2023.09.01
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