吸血鬼ハンターたちの読書会
グレイディ・ヘンドリクス(著)
,原島文世(訳)
/早川書房
作品情報
アメリカ南部の高級住宅街に住むパトリシア。彼女の忙しい毎日の息抜きは、主婦仲間との連続殺人ノンフィクションの読書会だ。だがある晩、近所の嫌味な老婦人が血まみれでアライグマの死骸をむさぼっているのに遭遇し――不安と興奮に満ちた傑作吸血鬼ホラー
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 吸血鬼ハンターたちの読書会
- 著者
- グレイディ・ヘンドリクス, 原島文世
- 出版社
- 早川書房
- 書籍発売日
- 2022.04.20
- Reader Store発売日
- 2022.04.20
- ファイルサイズ
- 1.2MB
- ページ数
- 488ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
主婦 Housewife(名詞)ー軽薄で役に立たない女性または少女ーオックスフォード英語辞典 小型版 一九七一年
この物語の舞台は、1988年〜1997年のアメリカ南部。主人公で主婦のパトリシアは、…格式ばった読書会の参加をやめ、数人ほどの主婦たちの、犯罪実録書やホラー小説などを読む読書会に参加していた。
ある日パトリシアは自宅の庭で、アライグマの死体を屠っていた隣人老婦に片耳を食いちぎられてしまう。
そして謝罪に来たその老婦の大甥であるという男ジェームズを快く家に招き入れてしまう。
しかしジェームズはなんと吸血鬼だったのだ!
そしてそのことを知っているのは、パトリシアを始めとした読書会の主婦たちだけ…
いやジェームズが吸血鬼って書いちゃうなんて重大なネタバレじゃないか!と思われそうだが(実際ジェームズが吸血鬼であると本文で断言されるまでかなりのページ数を要する)、これ本書のあらすじに書かれてるんですよ。
それに、本書を楽しく(?)読み進めるうえで、この程度のネタバレは全然問題ないのである。
(でも以下からはネタバレを多少含むのでご注意ください。)
展開として、気づいた時にはジェームズは3年の月日をかけて地域全体を巻き込んで完全に地域に溶け込み、主人公たちの夫である白人男性たちの信頼を勝ち取ってしまっていた…という状況から、いかにしてジェームズを排除するのかが本題である。
ジェームズは完全に地域に溶け込み切るまでに、既に黒人居住区の子どもたちを多く屠り死なせている。この居住区にはパトリシアの家の家事サポートや義母の介護サポートをしてくれているミセス・グリーンの家族もあり、ミセス・グリーンはパトリシアたちに助けを求めていた。
しかしその時点で、パトリシアたちは黒人の子どもたちを助けることができず、いや、自己保身のために助けることを諦め見捨ててしまった。
今度こそは自分たちの子どもたちを守りたい…!
しかし状況はパトリシアの孤軍奮闘状態。
1人じゃどうしようもない…
どうすれば子どもたちを守れるだろう…?
本書は手に汗握る、(そしてパトリシアの孤軍奮闘ぶりに冷や汗ダラダラ胃がキリキリする)ホラーエンターテイメントでありながら、主婦としての女性の立場、黒人の立場、白人男性の優位的な立場にスポットを当て、弱き者を弱き者として扱い続けてたまるかといった熱いメッセージを持っている。
感想冒頭に引用した「主婦」の言葉の意味は、本書冒頭に書かれているものだ。
また作者は、親たちの物語を書きたかった、自分の母親たちに吸血鬼と闘って欲しかった、と言っている。
そしてこの物語における戦いは、「公正なものではない」、とも。
直接的には吸血鬼と主婦たちの闘いであるが、実際的には優位にある白人男性たちと、地位の低い主婦や黒人たちとの闘いである、と感じた。
物語で、ジェームズの危険性を訴えたパトリシアに対する、夫カーター(職業精神科医)による妻の扱いは侮蔑的なものだった。子どもたちの目の前で母親としての権威を失墜させ、精神病院に入院させママは異常なのだと見せつけた。それでいて自分は理想的な良き父親像を演じ、実際そうなのだと思い込んでいる。
下手するとジェームズよりよっぽど「敵」ではないかと思ってしまった。鼻持ちならないキャラクターである(そしてそれらの行動は現在ではDVと認識されるものだろう)。この物語の時代柄、妻へのこういった扱いが認められていたのだろうが…
またジェームズ自身も見た目は白人男性であり、自分の白人男性としての優位性と、世界で唯一存在する吸血鬼としての自尊心を過大に持ち備え、パトリシアたち主婦をかなり見下した暴言を吐いている。
ホラーエンターテイメントであるが、これらの要素も加わり、かなり読み応えのある作品となっている。
現在日本でも、主婦の立場は弱い。主婦の家の仕事の多さと忙しさを知りもしないで、主婦は気楽でいいなどと言われるのだから憤慨ものである。
本書でも、パトリシアの誰にも(夫にも)助けられず育児家事にと目の回るような忙しさに追われている描写が細かくされている。
それらの努力や愛情が、子どもになかなか伝わらないもどかしさも。
ジェームズと対する時の主婦たちの連帯感と奮闘ぶりも見どころである。彼女たちの誰1人が欠けてもこの展開にはならない。
ぜひたくさんの人に読んでほしい。
また本書にはたくさんの実在するホラー小説や犯罪実録本が登場し、すべてではないがほとんどの章題がそれらの作品のタイトルから付けられている(「マディソン郡の橋」「冷血」「テッド・バンディー「アメリカの模範青年」の血塗られた闇」など)。
参考文献もそれだけ膨大である。
残念ながら、章題に使われた書物は私はどれも読んだことがないので、なぜこの章にこのタイトルが選ばれたのか、といった理由は分からない。
面白そうなものがあれば、いくつか読んでみたいと思う。
最後に、作者の著作は、本作が初邦訳だそうだ。
面白い題材のホラー作品を書く方だと本作を読んで思ったので、ぜひ他の著作も邦訳・出版されてほしいものである。
続きを読む投稿日:2022.07.03
このレビューはネタバレを含みます
元看護師の主婦パトリシアは隣の家のおばあさんが変になっちゃう姿や義母が大量のネズミに殺されたり明らかにおかしいことが起こっていることに気づく。ジェイムズハリスが男たちをお金で取り込み、おかしさに気づい…て警察に連れて行こうとしたら男たちに反故にされたり途中わかっているのにムズムズしてモヤモヤした。何百年も生きてきた相手を倒す方法を色々なドラキュラ本から探してみんなで実行する姿は本当の姿だと思う。そうでもしないと倒せなかった。生半可な方法じゃないところに納得。実際におかしなことが起こっても、見つけた本人が病気かおかしな人と思われるのも本当だと思う。ミセスグリーンやシックスマイルとの生活、パトリシアたちの偏見なども南部の独特の雰囲気を感じた。ジェイムズが今までどんな人生だったのかも気になった。誰かに吸血鬼にされたならその前の人生とか。最後にパトリシアがカーターと離婚して終わったのもスッキリした。最後に題名をもう一度見てネタバレじゃんと思ったが、そこまでの道が長くてすっかり忘れていた。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2022.09.06
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。