シャギー・ベイン
ダグラス・スチュアート(著)
,黒原敏行(訳)
/早川書房
作品情報
デビュー作にして、英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞。英語圏で100万部突破の話題作。1980年代、英国グラスゴー。“男らしさ"を求める時代に馴染めない少年シャギーにとって、自分を認めてくれる母アグネスの存在は彼の全てだった。アグネスは、エリザベス・テイラー似の美女。誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった。しかし、浮気性の夫がアグネスを捨ててから、彼女は酒に溺れていき、唯一の収入である給付金さえも酒代に費やしてしまう。共に住む姉兄は、母を見限って家を離れていくが、まだ幼いシャギーはひとり必死にアグネスに寄り添い──。けっして生きる誇りを忘れなかった母子の絆を描く、デビュー作にして、英米の文学界を席巻したブッカー賞受賞作。
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商品情報
- シリーズ
- シャギー・ベイン
- 著者
- ダグラス・スチュアート, 黒原敏行
- 出版社
- 早川書房
- 書籍発売日
- 2022.04.20
- Reader Store発売日
- 2022.04.20
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 616ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (14件のレビュー)
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自分を普通の男の子にしてください
ほんと小説らしい小説を読んだというのが第一の感想。
伏線がどうだとか、改行の多いまるでト書きの脚本のような薄っぺらい日本の小説とは、こうも違うかと。
ブッカー賞受賞も頷けるけど、それをこれが処女作…で、文学を専門に学んだ経験もなければ、そもそも家に本なんてなかったっていうデザイナー屋さんが書き上げたというのだから恐れ入る。
インタビューで著者は、もともと発表するつもりもない原稿をなぜ10年も書き続けたのかと問われ、労働者階級の子供として強いられた"沈黙"と"男らしさ"に対するなじめさが原点にあったと語っている。
男性婚が合法化されたニューヨークで暮らし、本書の唯一の読者であった恋人と結婚している著者こそ、シャギーのモデルだろうと思ったが、本人はそれを否定している。
ただ、自身の原体験のかなりの部分を反映させているのは確か。
「ママのためならなんでもするよ。ぼくはもっとママに優しくして、今より良くしてあげるんだ。だから神さま、母親が頑張ってお酒を飲まずにいさせてください。ぼくもきちんと生活して、普通の男の子になりますから」
どうやったら自分は普通の男になれるんだろうと、歩き方を練習し、好きでもないボールを追いかける。
本書で重要な台詞は二人の人物から発せられる。
一人は、アグネスが道ばたで飛び込んだ車両修理場の男。
「自分の人生を狂わせた相手に意趣返しがしたい? それなら自分の人生を生きることだよ」、と。
もう一人が兄のリーク。
「おれと同じ間違いはするな。ママはもうよくならない。そのときが来たらおまえも出ていかなくちゃだめだ。おまえが助けられるのは自分だけだ」
「おまえはまだ自分に嘘をついてるぞ。自分を見てみろ!おまえを助けられる人間はおまえしかいないんだ、シャギー」
最後の最後に、リークがシャギーに、可愛い玩具で遊ぶ男の子を描いたスケッチを送って、前から弟の本性に気づいていたことを暗に知らせるシーンは最高で、これから自分のために自分らしい人生を生きろよと励ましているみたいだった。
「シャギーは約束を守れないことを確信した。母親は酒のことで嘘をついたが、自分も母親に嘘をついたのだ。母親は絶対に断酒ができないし、自分は、寒風のなか可愛い女の子とふたりで坐っていても、普通の男の子のような気持ちになることはできないのだった」
アグネスのモデルも著者の母親なのだろうか?
アグネスは「往年の大女優エリザベス・テイラーに似ている美人」という設定だが、そこまではいかなくてもかなり子供にとって誇らしい憧れの存在だったのではないだろうか。
それほどの美しさを持ちながらもアグネスは、「生ぬるいスペシャルブルー1缶のためにニコチン色をした男にまさぐられ」、「きみんちは、おじさんが多い? いや、親戚のおじさんじゃなくて、おじさん」と子供に意味深な会話をさせるほど落ちぶれているのだ。
この辺りの描写は体験談かと思うほど、精緻で生々しく、重苦しい。
ズリ山の窪みでシャギーが脚をとられ抜け出せなくなる描写も印象的だ。
最初は軽快に駆けってクレーターを横切ろうとするのだが、次第にゴム長靴が立てる音の変化に気づく。
最初は、「ぺたっ、ぺたっ、ぺたっと、太った手で太った腿を叩くような」歯切れのいい音から、「スプーンの腹で冷めた粥を叩くようなびとっ、びとっという濡れた音」に変わる。
「飢えた泥から長靴が抜けなくなった。アイスキャンデーをしゃぶる食いしん坊な口のように、泥が足を吸いこんできた。泥がシャギーを食べはじめている。もう助からない」。
デザイナーという職業柄なのか、描写がとても視覚的だ。
朝の光は「ミルクを入れすぎた紅茶の色」のようだし、遠くから見渡すグラスゴーの街は「低い雲の切れめから午後の陽射しの熊手がかいて」いるようだと表現する。
その一方で実に肉感的な描写も。
「涙が長く太く流れ出るさまは、まるで目が小便をしているよう」だし、絶体絶命のピンチで焦ると「目の裏側が汗をかきはじめる」。
二日酔いで眠るアグネスは、「溶けたろうそくのよう」で、両脚からは力が抜け、頭は片側に垂れていると描写する。続きを読む投稿日:2022.09.29
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作者の自伝的小説らしい。作者=シャギーではないにしろ、作者が社会的に成功しているということで、読み切れた気がする。
子供は親を選べない。どうしようもない母親だが、最後まで見捨てなかった少年。
投稿日:2024.01.19
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