リ・インベンション―概念のブレークスルーをどう生み出すか
三品和広(著)
,三品ゼミ(著)
/東洋経済新報社
作品情報
「どうする?日本企業」の続編として、日本企業がとるべき道を示します。
経済の成長期に機能した戦略が、成熟期以降もそのまま機能するとは限りません。
成長ありきの戦略論はいったん忘れて、本書で提示する「リ・インベンション」に取り組んでみてはどうでしょうか。
他社と同じ次元で「イノベーション」に邁進すると、同質化競争は避けられません。
次元の違う製品を生み出し、ブルーオーシャンへといたる道をどう歩むか。
それには、個人の挑戦や、企業家精神をどう発揮させるかがカギを握ります。
「リ・インベンション」の9つの具体例を紹介し、具体的な日本企業改造案も提示します。
これからの時代をつくるビジネスパーソンの必読書です。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (17件のレビュー)
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P:285 推定文字数:203490(17行×42字×P) 抜き書き:2541字 感想:355字 付箋数:8
(対ページ付箋:2.80%、対文字抜き書き:1.24%、対抜き書き感想:13.97%)
…
※付随して読みたい本
どうする? 日本企業(東洋経済新報社) 三品和広
話題は広くて、少し古い音楽や絵画でのイノベーション的限界により日の目を見なかった作品群の話など、とても惹きつけられて一気に読める。
・織機で布を織るには開口、よこ入れ、打ちの三つの動作が必要。たて糸の偶数群と奇数群を上下に分け(開口)、その間を杼(ヒ)という道具でよこ糸を通す(よこ入れ)。通したよこ糸を筬(オサ)で手前に打ち、たて糸に組み込む。
1733年、イギリスのジョン・ケイによる飛び杼の発明(手前のレバーを片手で引くと杼が飛ぶ)で生産性が格段に向上した。
1950頃からウォータージェットやエアジェットでよこ糸を飛ばす無杼織機が登場。
明治初期までの手動の有杼織機では1分間にせいぜい40回のよこ入れしかできなかったが、現在のジェット織機は1分に1900回よこ入れ可能。一反織るのに16時間かかったものが1分程度しか必要無くなった。単純計算で約1000倍。まさに正真正銘のイノベーションである。
その立役者となったのが日本のメーカー(津田駒)だが…革新織機の効果は5年も持続しません。1980年をピークにグラフは下降を始めます。一時は15%に届こうとしていた営業利益率も、1994年にはマイナスに転じてしまいます。それ以降は現在まで大きく上下動を繰り返すだけです。技術者たちの懸命の努力を、利益は反映していないのです。
>>/> 技術の進歩の凄まじさ。昔は服が税金だったのに。
・私たちはリ・インベンションを「ある製品について、いまとなっては解消できるようになったにもかかわらず放置されている不合理や、かつては合理だったもののなかに新たに芽生えた不合理を解消すべく、当該製品を特徴づけると長らく考えられてきた特性パラメーターを無視して、誰に、何を、どのように提供すべきものなのかにまで立ち返り、評価軸自体を作り替えること」と定義しています。この定義からは、イノベーションとリ・インベンションの違いを次の三点に集約できます。
①狙いの違い。
イノベーションは表面的には高付加価値化を狙いますが、その基準点は競合製品に置かれます。それに対してリ・インベンションは、従来製品では満たされていなかったニーズに応えることに狙いがあります。
②従来のパラメーターに対する態度の違い。
イノベーションは競合製品との差異化を狙うので、従来のパラメーターを肯定的に捉えます。肯定したうえで競わないと、競合製品より優れていることを証明できないためです。それに対してリ・インベンションは、従来のパラメーターを否定します。従来のパラメーターでは捉え切れていない不合理の解消に狙いがあるためです。
③必要とされる力の違い。
イノベーションの成否は技術的なブレークスルーを生み出せるかどうかにかかっています。そこでは組織的な技術力が問われます。一方、リ・インベンションの成否は誰に、何を、どのように提供するものなのかというコンセプトにかかっています。そこでは必ずしも技術力は必要なく、構想力が問われます。
>>/> 存在する商品をこの二つに分けるのは中々難しいけれど、このユーザー志向はいつも頭に有ってよいと思う。
・模倣できないマインドの違いは、消費者には丸見えになります。恐ろしいことに、製品の細部が作り手のマインドを映し出してしまうからです。使い勝手の悪いデザイン、安いと叫ぶパーツ、形ばかりの警告シール、心地悪い操作音、無愛想なエラーメッセージなどは、誰かが妥協をした証です。
>>/> 耳が痛い。。
・アイパッドのソフトウェアキーボードのキーは四角形として画面上に表示されますが、タッチを感知する領域は六角形になっています。これで間隔のズレを許容するわけです。ただし、感知領域を拡大すると、オーバーラップができてしまい、キーの判別に困ってしまいます。この問題を、アイパッドはユーザーが次にタッチするキーを予測して、そのキーの感知領域を瞬時に広げることで解決しています。ユーザーは気持ちよくアイパッドを使いこなしていると感じるはずですが、その裏方でアイパッドは涙ぐましい努力をしてくれているのです。
>>/> 複雑な現実は複雑な方法でしか解決できないけれど、何とかなってしまうのがテクノロジー。
・1979年7月、ソニーはウォークマンを世に問いました。しかし、発売から一ヶ月経った時点での売り上げ実績は、目標に遠く及ばず、わずか3000台にとどまりました。売れるはずがないと悲観論を唱えた人たちは、密かにほくそ笑んだに違いありません。
ここでソニーは学生を集め、ウォークマンを手渡して、自由に使ってもらう活動を繰り返しました。…常識に挑戦するウォークマン(ラジオからお気に入りの曲を録音するエアチェックが大流行していて録音機能を取り去ることは考えられなかった)は、単に知名度を上げるだけでは購買につながりません。使用体験や、使っている人を見る疑似体験が不可欠だったのです。
>>/> ウォークマンの斬新さは今では伝説だけれど、当初はやはり非常識だったのか。その時には体験をショウアップする必要があるんだ!
・トランジスタラジオが価格破壊を免れなかったのに、なぜウォークマンは20年もの長きにわたって市場に君臨することができたのでしょうか。面白いことに、TR-55の追随品は発売翌日に登場しましたが、ウォークマンの追随品が出るには13ヶ月を要しています。
>>/> 誰もやろうとしないし、していないから追随できない。
・フォー・ザ・レスト・オブ・アス、先端から取り残された普通の人たちのために。技術だけではダメなんだ、人文科学と結びつけないと。―スティーブ・ジョブズ
>>/> ギークなテクノロジーおたくだったはずなのに、何故これが大事だと信じられたんだろう。
・テイラーの教えとは、不合理な自己流に走りがちな従業員を、専門化が合理的に作成する作業標準に従わせなさいというものです。科学的経営は、大量生産方式を確立したヘンリー・フォードが大規模自動車工場に適用して大成功を収めたのみならず、太平洋戦争でアメリカに挑んだ日本を完膚無きまで打ちのめす原動力となったことで、誰もが正しいと信じていました。
それなのに、よりによって敗戦国の日本が、彼我の生産力の差を嫌というほど思い知らされたにもかかわらず、戦後は科学的経営の教えに反して全員経営に走ったのです。そして、終戦から30年も経つと、日本はテレビや自動車のモノ造りでアメリカを凌駕し始めました。このように説明を加えると「驚嘆」の意味が伝わるかと思います。
>>/> その組織の傾向は泥臭いイノベーション、技術進歩、ガラパゴスに向いているというわけですね。続きを読む投稿日:2014.06.30
このレビューはネタバレを含みます
■ひとことで言うと?
レビューの続きを読む
リ・インベンションの鍵は「こだわり」「顧客洞察」「少数精鋭チーム」
■キーポイント
- リ・インベンションとは
- 既存製品の再発明
- 暗黙の不合理の…解消、新技術による革新的な性能向上
- 既存のコンセプト(評価軸)を疑う
- 誰に(Who)、何を(What)、どうやって(How)届けるか?
- リ・インベンションに必要なこと
- 強いこだわり:「やりたいこと」を中心に据える
- 深い顧客洞察:ユーザーの潜在的な需要を発見・創出する
- 自由な少数精鋭チーム:既存組織のしがらみに囚われずに活動する続きを読む投稿日:2023.06.19
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