政府は巨大化する 小さな政府の終焉
マーク・ロビンソン(著)
,月谷真紀(訳)
/日本経済新聞出版
作品情報
■大増税か、国家の役割の縮小か。それとも債務危機か。逃れられない究極の選択。従来の常識を覆す新鮮な問題提起。世界各国の経済・財政事情に通暁する財政のプロが、コロナ危機を経て、さらにこの先30年にわたる国家財政の未来を描く。2020年フィナンシャル・タイムズ紙ベスト経済書。■医療、介護、気候変動、年金、インフラ整備、格差問題、教育投資、雇用確保・・・・・・。コロナ禍への緊急対応のうえに、政府に持続的に加わる支出拡大の圧力。国家財政はこれからどうなるのか。政府が直面する本当に重要な課題は何か。■実は、支出拡大の最大の領域は、技術の進歩が顕著な医療だ。年金はもはや大きな焦点ではなく、パンデミック対応も脇役でしかない。大きな政府か、小さな政府かというイデオロギーの違い、政策選択の内容にかかわらず、各国はこれまでにない財政の膨張に直面せざるをえないのだ。■先進国経済に通じた財政改革の指南役が、数量データ、バランスのとれた明晰な分析、緻密な論理構成をもとに先進国財政が直面する支出拡大圧力を読み解く。医療技術と医療費増大の因果関係、雇用安定化・所得補助とデジタル化、介護サービスの展望、気候変動問題と国家財政の関係など、経済構造の変化と財政との関わりを明快に分析。さらに、ボーモルの「コスト病」説の問題、現代貨幣理論の誤りなど、経済理論上の論点も浮かび上がらせる。
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商品情報
- シリーズ
- 政府は巨大化する 小さな政府の終焉
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2022.01.19
- Reader Store発売日
- 2022.01.19
- ファイルサイズ
- 8.6MB
- ページ数
- 440ページ
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この作品のレビュー
平均 3.7 (3件のレビュー)
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政府のやる気の問題ではすまない
政府支出はこれから巨大化する、しかも恒久的に。
具体的には、2050年までにすべての先進国で、最低でもGDPの7%の増加となる。
内訳は、医療支出が4%、介護支出1%、気候対策1%強と、医療費が大…部分を占めている。
これは「小さな政府」論者が敗れ、「大きな政府」論者や増税派が政治的に勝利するからではない。
「政府のイデオロギー上の姿勢とは関係なく、政府支出に大きく影響する外部要因と圧力の結果として、大幅な支出増が起きるのだ」
こう書くと"医療支出が増える? あぁ高齢化するからだな"と考えるかもしれないが、実は違う。
長期の支出圧力の中で最大の分野は医療関連だが、医療支出増の主な要因は人口高齢化ではなく、医療の技術的進歩にある。
つまり「医療の力」の急拡大が、将来の医療支出を増加させる最大の要因なのだ。
それもこれも高齢化してるからじゃないのと疑問に思うかもしれないが、高齢化自体も実は医療技術の進歩の帰結なのだ。
寿命が延びたのは、次々に新しい治療法が確立して、なかなか死ななくなったから。
"あぁ、要は健康寿命が延びて、高齢者の健康状態が良くなったからということね"、というのもまた間違い。
「実際は日本でさえ、この数十年は不健康寿命が延びるトレンドが見られる。高齢者の健康寿命が延びていれば起きているはずの状況とは逆に、日本の高齢人口における慢性疾患の有病率(慢性疾患を抱える高齢者の割合)は増えてきている」
要は、健康になっているからじゃなくて、昔なら死んでたような慢性疾患はあっても、医学の進歩で死なずにすんでいるというだけ。
だから、今後30年間のトレンドとして、日本では高齢化の進展がかつてほど急ではなくなるからといって、医療支出の増加がそれに伴って鈍化することもないのだ。
高齢化より、精密医療やカスタマイズ医療といった、医療の技術的トレンドを追った方が、よっぽど的確なのはそのためだ。
新しい治療法のたゆまぬ開発といったイノベーションが、医療支出を増加させてきた。
医療技術の進歩が、慢性疾患の治療期間を延ばすという形で、慢性疾患に対する新薬のイノベーションを起こし、医薬品価格を高額化させるという形で、コスト増に大きな役割を果たしている。
なぜイノベーションが医療に強い支出増をもたらすのか?
それは、新しいより優れた治療法への潜在的なニーズが常に膨大に控えているからだ。
本来なら、イノベーションによって生産性を高め、大幅なコスト節減効果をもたらすはずなのに、それ以上に強い支出増のインパクトをもたらしている根本的な理由もそこにある。
つまり潜在的な医療ニーズが未来永劫存在し続けるがために、新しくより優れた治療の開発が進み、それによって支出は増大し続ける。
新世代デジタル技術の積極的な採用によってもコストは節減しない。
人工知能、ロボットその他の関連技術が医療サービスのコストを大きく削減し、政府への予算圧力を抑制できる、むしろ改善できると考える楽観主義者がいるが、それも間違いだ。
そのカラクリはボーモルのコスト病説のロジックで簡単に説明できる。
今後も大幅に増え続ける、新しいより優れた治療法への支出の増大分を相殺するだけの症例単位コスト削減を実現して、医療支出の対GDP比増大の動きを止めるには、医療の生産性向上がその他経済の生産性向上よりもはるかに速くなければならないのだが、医療産業の構造上それは難しい。
診断と手術の完全自動化は、自動運転車よりも実現が技術的に難しい。
つまり、医療産業において生産性を上げる新技術の対象領域は経済全体に比べて小さいのだ。
そのため医療は、時間とともに漸進的に高額になりつづけてしまう。
「小さな政府」論者が言ってる"無駄を減らすだけで支出を抑制できる"というのはあまりに空疎な主張で、「大きな政府」論者が言ってる、やれ"ベーシックインカムの導入だとか、高等教育の無償化だ"なども、それら追加コストなど許されないほどの莫大な財政支出が待っているのだ。
単純に"紙幣を増刷すればよい"というMMT論者の主張も論破して、ほら吹きと斥けている。
希望の拠り所となっている技術の進歩そのものが、我々の首を締めているという主張はなかなか痺れる。
政治的には、大増税も医療サービスの対象範囲の大幅縮小も選択できず、かといって財政破綻を回避するためには、値上げせず同価格帯を維持するため商品の分量を減らす企業と同じように、やってますと言いながら次々に医療サービスが削られる未来しか見えてこない。
令和の姨捨山も近いな。続きを読む投稿日:2022.09.14
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医療、年金、気候変動…。コロナ禍への緊急対応に加え、長年、支出拡大の圧力が政府を苦しめている。国家財政は今後、どうなるのか?先進国政府が直面する課題を読み解く書籍。
新型コロナ禍とそれによる経済危機…は、先進国の政府支出を大きく膨れ上がらせた。大半の先進国では、コロナ禍前の債務が未曾有の水準にあったため、政府支出の大幅増をコロナ禍後も恒久化すれば危機を迎える。平常な状態が戻れば、支出減による債務の縮小に注力すべきである。
一方、長期的にみると、政府支出はこれからも大きく増える可能性がある。その要因は、例えば次のようなものだ。
・医療:慢性疾患の有病率の増加、高額な治療法の開発、医薬品への支出増などで医療支出が増加する。
・高齢化:人口高齢化により、介護と年金の支出が増える。
・地球温暖化対策:「気候投資への出資」など、気候変動に対処するための支出が増加する。
政府支出が増大しそうな分野には、所得補助もある。例えば、貧困の拡大を危惧し、「ベーシックインカム」(政府がすべての人に無条件で支給する定額所得)の導入を求める人々がいる。だが、この制度は、貧困層に不利益をもたらす。既存の福祉給付の方が、ベーシックインカムの給付よりも高いからだ。
多くの政府は、長年にわたって支出を切り詰めており、削減の余地は少ない。よって、巨額の支出増の財源を継続的に確保するには、納税者の大多数に大幅な増税をする必要がある。
増税と支出削減を避けるために財政赤字を認めると、いずれは債務危機やインフレの加速、経済危機をもたらす。新型コロナ禍で、このリスクは大幅に高まった。続きを読む投稿日:2023.08.21
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