ニヒリズムとテクノロジー

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  ABAKAHEMP

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  テクノロジーによって拡張・増幅されるニヒリズム

  「どんなテクノロジーも、最初は鍵だが、最後は檻となる」と言われるとおり、我々のためにある道具と見ていたのが、人間もこの手段の支配下に入り、テクノロジーのための道具になってしまうという、主客の逆転現象。…
  畏怖や敬意の対象と崇める日本人とは違い、西洋人は自然を、単なる目標達成の手段と考え、自分たちの要求を満たすためだけに存在するもの、必要に応じて利用されるエネルギー源としてコントロールされるものとみなしたが、我々もテクノロジーとの関係においては、オンデマンドで利用されるべき、用象として従属させられている。
  
  現代の産業は、人の需要や必要性に応えることを目的とする人間のロジックではなく、テクノロジーのロジックに合わせて動き、テクノロジーの要求やニーズに応えることに主眼が置かれている。
  最新の牧場で導入されている搾乳ロボットも、人間に追い立てられず牛の生理に合わせたフレンドリーな側面がある一方で、乳頭形状などからロボットに適合しない牛は淘汰される。
  省力化で余暇が増えると考えていたら、24時間不定期で携帯に電話がかかるロボット中心の日常。
  あるいは家庭に導入されたルンバも、仕事しやすいように家中を整理整頓する必要ある。
  
  テクノロジーはまるで、私たちが目標に到達する手助けをしてくれるのではなく、我々に手伝わせることで、自らの目標に到達しようとしているようだ。
  ゴールを設定するのは人ではなくテクノロジーで、私たちの活動や価値観を形作っている。
  歩いている途中で印象的なものを目にしても、ツイッターでウケそうか、インスタ映えするかを考えてしまう。
  我々は世界を、自分の目ではなく、そうしたアプリケーションの目を通じて眺め、カワイイと感じたり、思い出に残るかどうかを決めているのだ。
  
  これは騙されているとか、欺かれているといった話ではない。
  自らそう求めているのだ。
  人生に背を向け、決断の重荷を取り除いてくれる支配者を求める、我々のニヒリズムの傾向がそうさせている。
  
  「テクノロジーがいかに人のニヒリスティックな面を引き出し、拡張して、意識の重荷、意思決定の重荷、無力さの重荷、個人であることの重荷、説明責任の重荷を引き受けないようにさせ」ているかを本書は明らかにしている。
  
  自らも放送局のような配信者になれると喜んだユーチューバーも、いまや自らをコンテンツ工場と化して日々せっせと配信しつづけている。
  コンテンツのビュッフェでのんびり食事するつもりでいたネットフリックスユーザーも、コンテンツの早食い競争に出場しているような、日々ビンジ消費を促され続けている。
  
  「ARやVRがもたらす自由は、逃げられる自由で、つくり上げる自由ではない。言い換えると、ユーザーに向けてつくられた自由で、ユーザーがつくった自由ではない」。
  「現実逃避」から「現実置換」のニヒリズムに移ってきているようだ。
  
  人間の動きはデータに変換され、データはパターンに変換され、そのパターンはアルゴリズムによって評価される。
  人生の定量化により、行動は目的から切り離され、主体である「行動する人物」からも切り離す。
  重要なのは人ではなく、数字。
  人生は、歩数やカロリー数などのデータの集合体だ。
  行為者なき行動は、まさにニーチェが定義したニヒリスティックそのもの。
  
  アルゴリズムに人間の行動が予測できるとしたら、それは単に人が予測可能になってきただけだ。
  私たちは予測可能であるために、没個性的で規則的な、算定が可能な存在となった。
  たしかにプログラマーがアルゴリズムをつくったのだが、そこで生まれた結果はプログラマーにも説明できない。
  機械が私たちのことをどんどん学習していく一方で、人はどんどん機械のことがわからくなっていく。
  何という逆説。
  しかも、アルゴリズムがわかりにくく、不透明であればあるほど、人々はより信頼を寄せていくという、さらなる逆説。
  間違いを犯しうる、人という卑小な存在を超え、絶対確実性のオーラを纏っている。
  
  テクノロジーは私たちの気を逸らし(テクノロジー催眠)、人をデータ化することで信頼可能な存在にし(データドリブンな活動)、力を与え(娯楽経済)、まとめる役割を果たしている(畜群ネットワーキング)。
  どれもニヒリスティクで病気だ。
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  投稿日：2022.01.09

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  1873221番目の読書家

  すごく好きだった。
  いかにSNSに人が依存してるかがわかる。
  好きな表現で、電車で携帯をいじってる人達をみると、洗脳させれているゾンビのよう。
  まさにその通り。今の世間の常識はネットの情報ばっかり。自…分でしっかり考える。続きを読む

  投稿日：2023.04.21

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