リバーサイド・チルドレン
梓崎優(著)
/創元推理文庫
作品情報
カンボジアの地を彷徨う日本人少年は、現地のストリートチルドレンに拾われた。「迷惑はな、かけるものなんだよ」過酷な環境下でも、そこには仲間がいて、笑いがあり、信頼があった。しかし、あまりにもささやかな安息の日々は、ある朝突然破られる――。彼らを襲う、動機不明の連続殺人。少年が苦悩の果てに辿り着いた、胸を抉る真相とは? 激賞を浴びた第5回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、連作化した『叫びと祈り』で2011年本屋大賞にノミネートされた俊英が放った、渾身の第一長編。第16回大藪春彦賞受賞作。/解説=吉田伸子
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商品情報
- シリーズ
- リバーサイド・チルドレン
- 著者
- 梓崎優
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元推理文庫
- 書籍発売日
- 2021.08.31
- Reader Store発売日
- 2021.08.31
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 376ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (7件のレビュー)
-
デビュー作の『叫びと祈り』では砂漠をいくキャラバンに始まり、果ては病気が蔓延した未開の原住民の集落という設定でもミステリを成立させた梓崎優さん。
その著者の第一長編の舞台がカンボジア。さらにストリート…チルドレンが主人公のミステリーと、またとない設定にそれだけで強い興味を惹かれました。
前半で描かれるのはストリートチルドレンの日常。社会や大人、そして警察につまはじきにされながらも仲間たちで助け合い、日々を精一杯過ごす子どもたち。しかしその日常も暗転。
仲間の一人が警官に殺されてから、穏やかな日常は崩壊。混乱と不安、そして絶望のなか一人、また一人と子供たちは殺され、そして崩壊していくコミュニティ。社会から顧みられない子供たちの絶望が、強く心に突き刺さります。
前作の『叫びと祈り』でも特殊な設定を成立させる描写力にも感嘆しましたが、このリバーサイド・チルドレンでもその描写力は健在。ごみを拾い生計を立てる子供たちの生活。子どもたちを追い込む社会や大人の闇。天候や自然の描写。
それらが複合して高いレベルを保っているので、慣れない設定でも自然と入ってくるし、子どもたちが追い込まれていく様子もより切実に胸に迫ってきます。
そういった描写のなかにときおり挟まれる、少しセンチメンタルな抒情を誘う文章がいいアクセントになります。
社会から顧みられない子供たちが死んでも、本来なら誰も気にしない。しかし死体には過剰な装飾が施されたり不明な点も多くあります。そもそもなぜ子供たちは殺されなければならなかったのか。そのあまりにも異様な動機は、いまそれなりに保障された生活を送っている自分には理解しがたいものでした。
しかしその理解しがたさ、狂気を放出しなければならなかった理由に思いをはせると、この殺人劇以上に世界は残酷で、そして理不尽にあふれていることに気づかされます。どうしようもない現実に目をそむけたくなる。
そうした展開の果てに待つ祈りに満ちた物語の結末。特殊な設定にも臆せず挑む著者だからこそ描けた救いのない事件。そして透明感に満ちた祈りの文章を書けることができる著者だから描けた終着点。
梓崎さんだから描けた世界や子供たちに向けた、祈りに満ちたミステリーだったと思います。続きを読む投稿日:2022.07.21
人間になりたかった少年の話。
カンボジアを旅する、ということで、買ったわけですが、舞台カンボジア、だけで選ぶのはなかなかリスキーですね。
とはいえ、純粋に読んだ感想としては、「この作家は何を目指し…てるんだろうか、と、他の作品も読んでみたくなるね」でした。
とはいえ、急な旅人の参入、推理の唐突さ、など、推理パートは要らなかったんじゃないかな的な急な軽さを見せる残念さを持ちながらも、根底にあるストリートチルドレンへの眼差し的なものは、読み応えがありました。
———
ゴミ捨て場を山と呼び、ゴミ拾いを狩りと称する。天敵である警官には黒と名付ける。暗号めいた呼び名は、現実をうまく隠すためのオブラートなのだ。直接口にするには重たくて生々しい現実を、別の言葉に置き換えて和らげる。それは、この世界で生きるための、他愛のない、けれど切実な術のひとつだった。続きを読む投稿日:2023.01.07
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