ふるさとって呼んでもいいですか 6歳で「移民」になった私の物語
ナディ(著)
/ボイジャー
作品情報
あなたの身近にもきっといる「隣人」の体験
6歳で来日し、言葉や習慣、制度の壁など数々の逆境の下でも、周囲の援助と家族の絆に支えられ生きてきたイラン人少女の奮闘と成長。
移民社会化する日本で、異文化ルーツの子どもたちが直面するリアルを等身大で語った、笑いと感動の手記。
星野智幸さん(作家)絶賛!!
第67回 産経児童出版文化賞・ニッポン放送賞受賞作
【目次】
1章 外国に行くってどういうこと?
2章 想定外!な日本の暮らし
3章 うれしい、楽しい、でも困った学校生活
4章 日本で胸をはって暮らしたい!
5章 私はイラン人? 日本人?
6章 私はここにいます
解説 山口元一
【著者】
ナディ
1984 年イラン生まれ。91年に出稼ぎ労働目的の両親とともに家族で来日。現在は2児の母。
もっとみる
商品情報
- 著者
- ナディ
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- ボイジャー
- 書籍発売日
- 2019.06.14
- Reader Store発売日
- 2021.07.30
- ファイルサイズ
- 3.3MB
- ページ数
- 240ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.5 (28件のレビュー)
-
移民・難民のことを題材にした小説を読んだので、実際にイランから移民として来日したイラン人の女性が書いたこの本を手に取ってみました。
著者のナディさんは6歳の時に出稼ぎにきた両親に連れられて来日し、言…葉も分からず、イスラム教とは全く違う文化や習慣、そして日本の移民制度の高すぎる壁を乗り越え、周囲の援助と家族の絆に支えられ生きてきたイラン人の女性です。
当時、出稼ぎに来たナディさんの両親はもちろん就労ビザなどなく、3か月の短期滞在の資格のみで日本に滞在し、不法に働いていました。この頃の日本はバブル景気に支えられ、不法滞在の外国人達は安価な労働力として、日本の各企業の下請け会社などで滞在資格のあるなしにかかわらず簡単に働くことができていたのです。
ナディさんは、まったく分からない日本語を日本のテレビなどで学び、その後、小学校の4年生から小学校に通うことができるようになりました。そして、勉学に励み、ついには日本の大学までいけるようになったのです。
このように書くと、簡単な様に思えますが、彼女が血のにじむような努力をして日本語を学んでいった状況には頭が下がります。
最初に、近所の日本人のおばさんからひらがなを習い、学校に入ると漢字を習うのですが、まず、4年生から小学校に入ったナディさんは漢字をほとんど知りませんでした。漢字の書いてあるテストの問題が分からず、テストで0点をとり続けたのは彼女にとってかなり精神的にストレスだったということです。
僕たちが考えると、外国人なのだからしょうがないじゃないかと思いますが、そう簡単には割り切れないのですね。
そして、もう一つのプレッシャーが、いつ両親が不法滞在で逮捕されてイランに強制送還されてしまうのではないかという不安です。
実際に彼女は、正規のビザを受け取るのは高校生になった時なのですが、それまでは、不法滞在のままで日本に滞在しているという立場を彼女は非常に恐れていました。
もし、当局に捕まり、イランに強制送還されてしまったら、日本でここまで努力したことが水の泡となり、そして一からまたイランでやり直さなくてはならないのかという恐怖に苛まれていました。実際に、彼女の知り合いのイラン人達は日本での滞在を希望しながら何人もイランへ強制送還されていったのです。
また、日々の生活も不自由を極めました。
不法滞在の彼女には当然、健康保険は適用されません。病院にかかると保険は適用されませんので全額負担です。
そのため、彼女は酷い捻挫をしても家計に負担をかけてしまうと思い、痛みを我慢して病院にも行けなかったのです。小学校で、彼女の同級生たちが風邪や怪我で簡単に病院に通うことができたのを見ていて本当にうらやましかったということです。
来日してから11年後、彼女達一家は晴れて日本での滞在許可を得て、日本に滞在できるようになりました。そして、それを機にイランに一時帰国することになります。
11年ぶりにイランに帰ったナディさんが感じた感情は非常に複雑でした。
イラン人であるはずの彼女をイランの現地の人達は『外国人』だと認識していたのです。
もちろん、ナディさんの顔や姿はイラン人なのですが、6歳から11年も日本で暮らしていれば、やはり仕草や雰囲気が日本人の様になってしまいます。
彼女がイランのお店に買い物に行っても「どこから来たの?」とまるで外国人旅行者のように扱われるのです。
ナディさんは「自分はいったい何人なんだろう。イラン人でもなければ、もちろん日本人でもない。いったい私は誰なの?」と思い悩みます。
そして、日本に戻り、様々な人達との交流を通じて、自分は「イラン系日本人なのだ」と自分のアイデンティティーを見つけるのです。
この自分自身を見つけたナディさんの心情を感じ、こちらも胸に熱い想いがこみ上げました。
僕は、今まで多少は難民や移民のことを分かっているかのように感じていましたが、この本を読んで、その考えがいかに浅はかだったか思い知らされました。
ナディさんは、現在、仕事持ち、結婚し、お子さんも二人いらっしゃいます。そして、ナディさんにとっては、もう日本が「ふるさと」なのです。
これから僕たちはますます外国人の方と接することが増えていくでしょうし、外国をルーツとする外国人系の日本人も増えていくでしょう。
しかし、そこには想像もつかないような問題が持ち上がってくるかもしれません。
「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」
この言葉は、50年以上前にスイスを代表する作家マックス・フリッシュが述べた言葉です。
当時のスイスは、自国の労働力不足から外国人労働者を大量に受け入れましたが、その為にバランスが崩れたスイス国内は混乱し、外国人労働者の排斥運動なども起こりました。
このマックス・フリッシュの言葉の二の舞を避けるためにも、僕たち日本人全員がこの移民・難民問題を真剣に考えなければなりません。
移民や難民の人達は、安価な労働力として働くロボットではありません。日本で日々生活する同じ人間なのです。
今、アメリカやヨーロッパでは移民排斥を訴える極右政党やトランプ大統領のような過激な発言をする政治家が人気を集めています。
「自分と違う」からという理由で相手を排斥しようとすれば、排斥されようとする人達は当然反発します。
そこには「敵意」しか生まれません。
まず相手を受け入れる。そして、時間をかけて同化する、あるいは全く新しい社会を生み出していく。
日本は1853年のペリーの黒船来航以来、現在まで上手く他国の文化を取り入れてきた歴史があります。
さらに歴史をさかのぼれば、日本は古来より中国や朝鮮から多くの文化を受け入れて発展してきました。
つまり、日本人は古くから他文化を上手く受けいれ、それを自分たち流に発展させることができるというもともと柔軟な思考を持った国民なのです。
今までやってきたことを今になってできないということはありません。
そう考えると、この日本を誰にとっても「ふるさと」だと思えるような素晴らしい国にしていくということは、僕たちにとってそう困難なことではないのではないでしょうか。続きを読む投稿日:2019.06.28
6歳でイランから日本にやってきたナディさん。
言葉の壁、文化の違い、そして法の壁にぶちあたりながらも、大学まで進学、現在は都内の企業で働く、それまでの半生を自らの言葉で綴った書。
ナディさん、文章がう…まい、読みやすい。
日本で暮らす外国人の思いや、この国の問題点がよくわかる。一人でも多くの人に読んで欲しいと思う。
あらためて、この国の入管行政はなんと人を不幸にするものなのか、と思う。変えていきましょう。続きを読む投稿日:2023.08.16
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。