闘鬼 斎藤一
吉川永青(著)
/集英社文庫
作品情報
なぜ彼はそこまで“闘い”に心酔し、鬼と化したのか。十代の終わり、些細な喧嘩から人を殺めた斎藤一は、斬る悦びに目覚め、誰もが恐れる新選組最強の剣士となった──。命懸けで仕掛けた芹沢鴨暗殺や池田屋襲撃など、血なまぐさい事件を重ねてきながら激動の幕末を駆け続けた男の生き様。息を呑む展開、手に汗握る剣戟場面、胸を震わせる結末。注目の正統派時代作家による、渾身の長編。
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商品情報
- シリーズ
- 闘鬼 斎藤一
- 著者
- 吉川永青
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2021.04.25
- Reader Store発売日
- 2021.06.03
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 472ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (5件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
余り描かれる事のない斎藤一の新選組物語。
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私は歴史を含めて新選組が好きなので、近藤勇が芹沢鴨亡きあと、増長した話等も知っていますが、改めて活字にされると(−_−;)
人を斬ることに長けた男が組織の中で葛藤し、たどり着いた境地。それへ導いた友沖田総司も師である近藤勇もないのは、やはり切ない。
生き残った隊士達はそれぞれの余生を過ごす中で、彼が残された事がよかったのか、悪かったのかはわかりませんが……。
解説にもありましたが、るろうに剣心の斎藤さんに近いイメージがありました。投稿日:2021.05.01
少し夢中になって、頁を繰る手が停まり悪くなり、ドンドン読み進んで素早く読了に至った。そして少し深い余韻に浸るような感でもある。
幕末期の新選組には、多くの人達が関わっている。或いは関わった人達の数だけ…の物語が在り得る。更に綴る人達の数だけの物語が在り得る。題材の宝庫で、多くの作品が存在するのが、新選組に関係する時代モノの小説だと思う。
本作はそうした新選組に関係する時代モノの一つということになるのだが、本作の主要視点人物は「斎藤一」(さいとうはじめ)である。
将軍の徳川家茂が上洛するということになった時、その警護のためとして浪士組隊士が募られ、応募した者達が京都に着いた。そこから然程経たない頃に「引揚げる」という話しになり、それに異論を唱えたグループが京都守護職の会津松平家の“御預”という形式で残留し、京都で、更に大坂でも活動し始めたというのが新選組の起りである。江戸の道場で、多摩でも活動していた試衛館の面々は、その残留した人達の中核を成していた。斎藤一もその中の一人ということになる。本作はその新選組の起りの頃から、京都での活動と、戊辰戦争の中でのことに至る迄が、斎藤一の目線で描かれる。
「斎藤一」という名が最も知られているが、彼は何度か改名をしている。本作ではその辺りに関することも描かれる。が、それはそれとして「時代の狭間」で「自らの価値観」も揺らぐような中での“生き様”というような物語になっていると思う。
武芸者が技や力を駆使して斬り合う、組み合うという「闘い」に対し、火砲を擁する部隊が衝突して殺し合う「争い」というモノが在る。「闘い」に生命を賭すようなことを旨とする者達の時代が「争い」の時代に移ろって行くというのが、斎藤一の目線で観た幕末から明治という、時代の移ろいということになるのかもしれない。
作中、斎藤一と様々な人達との関係が色々と描かれる。
最初期の新選組で、試衛館の面々に対し、もう一つの一派を成した水戸天狗党の流れを汲む人達が在ったが、その領袖であった芹沢鴨は独特な存在感を放った。この芹沢鴨との関係、試衛館の面々が彼を斬るに至った経過が前半部の核を成したように思う。
斎藤一と年代が近い沖田総司は、殆ど全編を通じて「少し似た性向の親友」という存在感を放つ。その沖田総司については、年長の友、兄のような存在感の山南敬助が在る。この山南敬助を巡る経緯も、本作の半ば辺りでは大きな部分であると思う。
後半部は伊東甲子太郎と土方歳三との抗争が大きな位置を占める。斎藤一は両者の間で動くことになる。
こうした幕末期の様々な動きから戊辰戦争に突入し、その日々が描かれることになる。
こうして振り返ると、序盤から終盤まで、盛り上がる要素が満載である。実に好い!!色々と伝えられていて、小説作品も多い時期の出来事で、大筋は判っているのだが、それでも作中世界に強く引き込まれる。本作では「闘い」を旨とする斎藤一の様子が精緻に描き込まれ、それに凄く惹かれる。
結局、「闘い」と「争い」との狭間を駆け抜けて生きた斎藤一の物語は、深い余韻をもたらしてくれた。広く御薦めしたい。続きを読む投稿日:2023.02.04
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