この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
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ちょっと衝撃的にわけのわからない2篇を収録した1冊。タイトルの「象牛」はインド、もう1篇の「星曝し」は大阪を舞台にしている。そもそも“象牛”とはなんぞや? というところから始まり、男女の生殖器にそっく…りな“リンガ茸”なる生物も登場する。普通に読めばまあ真っ当な小説ではあるのだが、なにしろ生も死も性も渾然としたインドで、謎の存在と共に時空も入り乱れているので先の感想となった次第。「星曝し」も相当に奇っ怪な話であった。この作家さん、好きかも。続きを読む
投稿日:2021.03.13
読書開始日:2022年1月15日
読書終了日:2022年1月22日
所感
【象牛】
やっぱりどこか著者作品は爽快感がある。
本作もとても好みだった。
最終シーンは百年泥と同じくらい爽やか。
ぶらつくか…、目的地を決めるか。
全ての過去を「バス!」
目的地へ進み始めた。
片桐、岩本、どちらも格好いい。
みなぎる自信と研ぎ澄まされた哲学によるものだ。
とにかく表現がエロティック。
セックスは闇鍋。有は有だが意味は問わない。
大好きな作品
【星曝し】
時系列も世界観もなにもかもバラバラだが、伝えたいことは一貫していたと思う。
諸行無常。
やはり著者インドに精通してるからこそだと思う。
全ては移りゆく。
瞬間瞬間。白熱が時刻を超越するその瞬間。生きていることを感じる。
それを放棄した母親、その放棄を促す毅の父親を元凶とし、放火を決めた。
全ては今は亡き父のため。その父すら瞬間でしか捉えられていない儚さも感じる。
星曝しという架空の風習で描いているが、取っ替え引っ替えは現実でも常だ。
ただ盗んだものは罰のように自分の手から離れない。全ては移ろいゆく諸行無常でなぜか、それらは染み付いて離れない。
谺
往生際ダンス
殴打
なにごともなかったかのようにふるまうしか、象牛に対して打つ手はない
寝物語
突然決断がとび出す
私たちの時間を時計から引き剥がし、もう一度血を流させる
携帯電話に詰まっていた1ヶ月分
それらの羽搏きを風に受けるため私はここへ来たようなもの
魔羅=仏語=人の善事を妨げる悪神。魔王。欲界第六天の王。転じて、悟りの妨げとなる煩悩 (ぼんのう) をいう。魔。
リンガの原意は、しるし。陰陽原理を合体させることが、完全性の表現。
シヴァすなわちリンガは宇宙のオーム
ひしとリンガを喰い締めた胎の水路を水がうるおす
相好をくずし
螺髪
部外者アウトサイダー
時計はお払い箱になった
私は彼の膝の下で再度羽搏く
新しい男を見つけ
だがこのような急拵えの家庭もどき夫婦もどき、抵抗力の低下した肉体同様、軽微な傷であっけなく化膿するのは世の常
せめて爛れ尽くすことでこの圧倒的不浄を焼くのか
不如意
犬の鍋
蒙る
論文=巡回=猿
頭のてっぺんから、すこーんと、ちからをぬけばぽかりと浮く
愛のよだれ
次の逢瀬をねだるがごとく受話器を耳に当て、あてどない夜に向かい
錆色
もしもし、夜のさいはての地方から、四ヶ月前のからの声が遅れて届く
セックス=ラタ=闇鍋。くるっと反対のものも全部が混ざる。溢れ出す。有は有だが意味を持たせなくてもいい。
色事にはもれなく俗臭がついてくる
荼毘
穴兄弟が怖くて女が口説けると思うか
月の光だけを着て男の前に立つ
【星曝し】
息む
図書室=すでに世界は居心地の良い場所ではないと感じている子供たち
いくたび繰り返された不毛な話し合いの、不毛な要約
私は祖母の法螺話に敬意を示した
瞬間しかいらない
私たちの一生にはいくつかの顕著な時刻が点畷されていて、それらは魂の白熱が私たちを覆い尽くす、あの類稀な瞬間瞬間で成る。これが真実の時間なのではないか
盗んだものは罰のようにその手を離れない
うめく時計の音続きを読む投稿日:2022.01.22
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