詩人になりたいわたしX
エリザベス・アセヴェド(作)
,田中亜希子(訳)
/小学館
作品情報
詩で描く家族と恋と友情の心揺さぶる物語。
主人公のシオマラは、神さまのことなんか、ぜんぜん信じてない。
「女の子は、いけません。いけません。いけません」
信仰心厚い母親に、こう言われるたびに、
「自分はなんてちっぽけなんだろう」って感じるんだ。
ハーレムに暮らす少女シオマラは、厳格な母親に猛反発しながらも、「言葉」の持つ世界に惹かれていく。
高校のポエトリースラム部で詩のパフォーマンスというものを知り、自己表現の世界にどんどんのめり込んでいく。
「言葉は、ありのままの自分を解き放つ手段」、そのことに気がついたシオマラは、いろいろなことから自由になれた。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 詩人になりたいわたしX
- 著者
- エリザベス・アセヴェド, 田中亜希子
- 出版社
- 小学館
- 書籍発売日
- 2021.01.01
- Reader Store発売日
- 2021.01.20
- ファイルサイズ
- 1MB
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.3 (9件のレビュー)
-
ニューヨークのハーレムにドミニカから移住した両親と双子の兄ツイン(本名はエグゼイヴア)と暮らす高校2年生の少女シオマラ。
家では、厳格なキリスト教徒の母が、女の子の自分だけに厳しいこと、信仰を共用する…ことに不満を持っていたが、強い母には逆らえなかった。
外に出れば、豊満な体つきからからかわれたり、言い寄られたり、悪く言われたり、触られたりと傷つくことも多かった。異性に関心もあったが、ツインからも、親友のカリダーからも共感は得られなかった。
高校は、ツインの通う天才学校と違い、底辺校。
だがそこで、シオマラは生物の実験パートナーとなったアマーンと、英語の教師ガリアーノ先生と出会う。
アマーンはシオマラの詩と音楽の世界を共有し、異性への関心を掻き立てたので、シオマラは母からきつく禁じられている男の子との交際を始めてしまう。
ガリアーノ先生は、シオマラの書く文章が詩的なことに気づき、始めたばかりの「スポークンワードポエトリー部」に勧誘する。シオマラは、彼女に見せられた詩のパフォーマンスビデオに心を奪われ興味を持ったが、その活動日は、母に強要されている教会の堅信クラスのある日だった。
厳格な母への怖れと反抗心を持つ少女が、傷つきながらも自身の関心を追求し、自分の心に気付き、周りを動かしていく過程を、シオマラの散文日記形式で描いた物語。
******* ここからはネタバレ *******
修道女になりたかったのに、ドミニカからアメリカ在住権を得るためにパピ(シオマラの父親)と結婚したという母は、自分の叶えられなかった夢のために、娘に厳格なキリスト教徒であることを強要します。そしてそれは、勉強と聖書が大好きな双子の兄ツインには自ずと優しいものになるのです。
母が欲しかったのは、ツインのような、おとなしくて神様が大好きな女の子だったから。グラマラスで、外に出れば男の人から色目で見られたりからかわれたりする少女、こぶしを使って戦う少女ではなかったのです。
そんなマミも、ドミニカでは、こぶしに消えない傷あとをつけられて「信仰心」を教わったのです。
兄のツインは天才少年で、飛び級をしているのでシオマラは小さいころから同じ学年になったことがない。双子なのにあまりに違いすぎるので、痛みの共有ができないし、天才にありがちな過集中のために、同じ空間にいてもシオマラは疎外感を持つことがあるのです。
それでもシオマラはツインが大好きなのでした。
そして、シオマラは、ツインには白人のボーイフレンドがいることを知ります。シオマラは、マミ(母親)自慢の息子のツインが、罪の子になってしまった、でも、マミから守ることは不可能と悩みます。そんなときは、アマーンからのメッセージを見ても気が晴れなかったのです。シオマラの心に占めるツインの大きさがわかるエピソードですね。
でも、アメリカのキリスト教も、ゲイは禁止なんですか?
アマーンは、トリニダードトバゴ出身の男の子。学校で絡まれているシオマラを守ってあげなかったエピソードは、状況がよくわからなかったのだけど、シオマラをがっかりさせたことは間違いないのでしょう。傷ついていたシオマラはアマーンさえも排除してしまいました。
でも、家出したときに連絡をとったのもアマーンで、シオマラが2ヶ月も無視していたのにちゃんと会いに来てくれたんですね。それに、彼女が行為を途中でやめようとしたときにも、思いやりのある行動をとっています。
高校生の男の子としては、考えられないぐらい紳士ですよね。いやぉ、女の子読者の皆さま、現実はこんなことばっかりじゃないことをお知りおきくださいね。
アマーンと別れたあと、詩のクラブに入って、自分の言葉に耳を傾けてもらったシオマラは、もうアマーンは必要ないと思いますが、それだけ自分の気持ちに耳を傾けてもらいたいと思っていたということですよね。母親は、問い詰めはしても、その答えを聞いてはくれていなかったから。
ガリアーノ先生が大きな救いです。シオマラの詩の才能に気付いて伸ばそうとしてるし、彼女の状態が悪そうだと感じると手を差し伸べています。そして、母親との諍いから家出したことを知ると、「でも、必ずお母さんとは話さないとね。ちゃんと話すの。それから、どうにかして見つけなさい。お母さんの生き方とうまく手を結ぶ方法をね。」
教会のショーン神父が謎の人です。けっこう物分り良さそうに見えるのですが、シオマラが天地創造についてした質問には答えていない。でも最後には、おかあさんとの仲立ちになってくれるんですよね。きっともっと早くシオマラ親子の問題に気づいていたのでしょうから、母親に、厳格すぎる子育てについて話してくれたら良かったのに、とも思ってしまいます。だって、母親が耳を傾ける唯一の存在だったでしょうから。
教会に疑問を持つシオマラの言葉に共感します。
「神に対して負い目を感じていなければ、私はもっと楽に生きられるのに」
宗教は、きっとよりよく生きるために生まれたものだと思うのですが、いつの間にか人を縛る道具にとして利用されるようになってしまったように思います。
母親もきっと昔は信仰を強制されていて、それを受け入れたので(受け入れた自分を否定したくないので)、シオマラたち子どもにもそれを受け継がせようとしたのでしょう。
信仰が次代に受け継がれる「負」の負債になってしまっていいのか?と思いますが、きっと世界的に見るとこういう考え方は少数派なのでしょう。
シオマラが宿題の下書きにした詩が、彼女をとっても表していると感じました。
「そう、これがシオマラ。
むきだしのこぶしをにぎりしめ、
自分の名前を正しく読まれるように、
聖人になることを期待されないように、
大人の女性として(いいことなさそうだけど)尊重されるように、
世間と戦う。」
物語全体の重さ、大きさに比べて、ラストの収まり具合が軽すぎてアンバランスな感じを受けました。ここまで重厚な作品だったのでさっさと全てがうまく行き過ぎたことに違和感を感じます。
これなら、オープンエンディングでも良かったのではないでしょうか?
でも、この残念なラストがあっても、心理描写が深くて読み応えも十分。読後感の良い作品でした。
ただ、娘を持つ母としては赤裸々な性的関心や描写が気にかかります。
共感を持つにはいいと思うのですが、引くときにちゃんと引いてくれるアマーンのような男の子ばかりではありません。
どんなに読解力があっても、小学生には薦められません。やっぱり”しっかりした”高校生以上、むしろ思春期を理解したい、思い出したいオトナのためののための作品だと思います。続きを読む投稿日:2022.02.07
このレビューはネタバレを含みます
二次性徴を迎えたシオノラにかけられる言葉やプレッシャー、清くありなさいなんて枠にはまらない。
レビューの続きを読む
体の中でグラグラ感情が煮立っていく。
その熱を苛立ちを悲しみを怒りを詩が形にしていく。
表現するということ…がシオノラを救う。
ノートを燃やされた時は読んでいて絶望しそうになったけど、母親に精一杯詩をぶつけるシオノラは悲しくて強かった。
「私の中にある」
私だったらマミを許せそうになかっただろう。
いや、シオノラは許してないかもしれない。
それでも絡み合ったネックレスを解くように家族と向き合った。
これは怒りと悲しみについて書かれた本かもしれない。
でも希望でもある。
是非中高生に読んでもらいたい。続きを読む投稿日:2023.07.28
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。