この作品のレビュー
平均 4.1 (56件のレビュー)
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【メモ】
・イギリスの保育施設は、例えば労働党が政権を持ってた時は、トニー・ブレアの一大改革で、保育の2本柱が「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と社会的包摂)」。多様性推進をすごく柱に掲げてい…たので、そういう方面の教育は一生懸命してましたね。その前は単なるケア。単に子どもの面倒を見ることが保育士の仕事だと思われてたんです。トニー・ブレアの政権は、保育を単なる「子どものケア」から「教育」に変えました。だから0歳時からカリキュラムがバッチリ作られました。そのカリキュラムの中に、多様性推進がはっきり組み込まれているんですよ。
まず、託児所を辞めて保育園に勤めてたんですけど、そこが潰れて、託児所に戻ったらそっちも潰れてフードバンクになったんですよ。緊縮財政で補助金なとがカットされたせいなんですね。要するに政府が地方自治体に渡していた拠出金が減れば、それまで補助金をもらっていたところに補助金が回らなくなりますよね。私が勤めていたような託児所は、一番初めに補助金を切られるような、公営ではなくてチャリティ団体運営の施設でしたし。補助金をバサッと切られてしまったら立ち行かなくなっちゃうし、緊縮で経済が悪化すると、民間企業からの寄付も減る。結局、最終的には潰れてフードバンクに変わっちゃったんですね。それは本当に時代の縮図というか……食事を与えるところにはまだお金が出るけど、それ以外の、子どもの保育だとか文化的なところには、もうお金が回らなくなったという時代の現実を反映していました。
・本当にブレイディさんが書いた、この貧困と多様性の社会で、一歩間違うと簡単に差別や憎悪が生まれる時代を、どう教育として向き合い、どううまく生き延びて対処するかという問いと知恵が本当に大切だと思うんです。日本では今、真逆な方向に進もうとしていますから。
・昔は勉強ができなくてもスポーツができるということがあったけど、親の持っている資本によって子どもの資質の伸び方に、露骨に差が出てくる世の中になる。家庭の経済力で、学力だけじゃなくて、身体能力にも差が出る。
・視えてる世界がものすごく小さくなっているような印象があって、私たちの時代にはまだ経済が成長していたから、今こんなにフラフラしていても何とかなるっしょ、みたいな楽天性があったけど、今の子にはないのかな、と思います。だから日本に帰ってくるたびに、私は何か暗いものをすごく感じるんですよ。なんか陰気になっているというか……。
「許されたこと」しかしちゃいけない、という思考が染みついてて、何が許されることなのか、というところからしか考えが始まらなくて、枠そのものというか、構造そのものを疑うということができないんだと思います。これ、僕は、小学校、中学校、高校の「校則」の刷り込みが大きいと思ってるんです。
・イギリスとは違ってミドルクラスの子どもと、貧困層の子どもが分かれないことになる。ベンツに乗ってくるようなお母さんとママチャリに乗ってくるお母さんが普通に同じ保育園に交ざってる、ということなんですよ。それは日本の素晴らしいところで、そういう環境こその学びがある。普段では絶対に交わらない、会話しない人達と話すことになる。
・格差がはっきりしているイギリスの階級社会というのは、ミドルから上の人達にとってはいいんだろうけど、その社会制度の影響をモロに被ることになる労働者階級や移民の人達にとっては、生活は結構ハードだろうという気がしますよね。
だからイギリスでは、どうしてもワーキングクラスから政治家になる人はいない。ミドルクラスから上の階層の人々が首相になったり、国を動かす立場になそういう人たちが労働者階級とか、いわゆる地べたの世界を知らないというのは、結構致命的で、そこにすごく乖離が生まれてしまいますよね。
・自分と利害関係がある人達のことを世間と呼び、自分と全く利害関係のない人達が社会と呼ばれる。
・日本人は、みんな同じでないと安心できないっていう気分が昔からすごく強いと思うんですよ。それはもう、本当に日本人がずっと「世間」という均質な空間で生きてきたからだと思います。集団労働の稲作文化の島国で、異文化・異言語の侵略を一度も受けなかったことが歴史的に均質な空間を作り上げたんです。
・日本の場合は何が問題かというと、世間認定されてる人達のなかでは相互扶助が行われ、信頼感が生まれるんだけど、相手を社会認定した瞬間に、コミュニケーションどころか、何の関心もなくなってしまうところです。
・私達日本人は「世間」にしか生きてこなかった。一生、同じ「世間」に生きられれば、問題はなかったんです。でも「世間」は明治以降、中途半端に壊れていって、セーフティネットにはならなくなった。価値が急速に多様化し、仕事で外国の人達と接することも増えてきた。
・日本も演劇教育をやるべき。人とコミュニケートするときに自分の考えていることをいかに的確に伝えるかを学ぶため。演劇の授業は、別に役者を育てようとしているわけじゃなくて……みんなが自分のことを言えるということは、他者が言っていることも理解できるようになるということなんですよ。その営みは相互のことだから、コミュニケーション能力を鍛えるのに演劇ほど役に立つものはないですよね。ロールプレイはすなわちそのままエンパシー教育になるから。
・平等の概念というのは、そもそも違う人たち、例えば人種が違うとか、今まで育ってきた環境が違うとか、宗教が違うとか、男女とかジェンダーが違うとか、いろんな違いを持つ人たちが共生していく時に、違うからと言って不公平な扱いをするのはよくないよねという、みんな同じ扱いをされるようにしましょうねという考え方がequalityでしょ。でも、samenessというのは、力点が単に「違う」か「同じ」になってしまうから、「同じであることが正しい」みたいになっててそこに違うもの同士の共生という、そもそもの前提がないですよね。だから、それが例えば学校で、みんな同じ髪型をしてないと不平等ということになってしまう。それは「平等」じゃなくて、単に「同じ」なんですよね。今の日本では、samenessがequalityと勘違いされている感じがしてしょうがない。
・台風が来たときに避難所にホームレスが入るのを役所が断ったことに対して、ブレイディ氏の息子は言った。「日本人は、社会に対する信頼が足りないんじゃないか」「周囲の人達がきっと嫌だって言うに違いない」っていう考えは、あまりにも社会への信頼が足りない。
・菅義偉首相。「まず自助があって、共助があって、公助だ」と言っていたのが、ネットで盛り上がってましたよね。あれのまさに公助の部分が私に言わせる社会なんですよ。というか、イギリス人のイメージはそうだと思うんですよ。自助というコンセプトは、新自由主義的で、いかにもマーガレット・サッチャー的というか、彼女は「社会なんてものは存在しません」と言い切った人ですから。自助が最重要なのだと本気で思っていたからこそ、新自由主義を信じた。
共助は、まさに日本では、鴻上さんが言われる世間のこと。身内で助け合えよっていうことですよね。
だから公助よりも先に共助がくる。自助、共助、公助っていう順番はものすごく分かりやすく日本の構造を表している。
そう。まずは自分でやれっていうこと。次に世間がきて、最後に社会システムという順序。それがやっぱり日本的だなと思いましたね。続きを読む投稿日:2022.07.21
イギリスと日本の空気感、暮らし、教育の違いが分かりやすく興味深かった。
プレイディーさんの著書を読んでいたので、解像度上がった気がする。
幸福論という点では明文化されているわけではないけれど、政府や世…間の目を気にしてただ流されて生きていくことは幸福ではないと改めて感じた。
当たり前に行われてきたことに疑問を持ち、自分なりの考えを持ち、できれば発信もしていく、そうありたいと感じた。
結末にも記載があったけれど、コロナは大変なパンデミックであるけれど、情報に疑問を持ち自分たちで考え行動するキッカケになったのは感じる。
劇的に良くならなくとも少しずつ社会が良くなるよう小さな一歩を踏み出していくことが、幸福論なのかも?続きを読む投稿日:2024.03.06
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