超電導リニアの不都合な真実
川辺謙一(著)
/草思社
作品情報
JR東海は、もうリニアを諦めている?
「中央新幹線」は在来型新幹線で
開業できるよう、準備されている――。
リニアの実用化は、とうてい不可能では? 複雑な走行原理に超電導磁石の課題、トイレ問題まで、
立ちはだかる技術的課題の数々を解説し、「国家的事業」の見直しを提言する。
<内容より>
◎超電導磁石は-269℃以下の冷却が必要
◎冷却に必要なヘリウムは資源枯渇の危機
◎低速では浮かず車輪で走らざるをえない理由
◎浮上・着地のたび136個のゴムタイヤ車輪が出入り
◎故障する可能性のある部品が多すぎるという指摘
◎磁力が急低下する「クエンチ」は克服済みか
◎山梨実験線ではクエンチ発生なしと主張。本当?
◎シート間隔はエコノミークラス並みに狭い
◎トイレはナシ? 設置を困難にする要因が複数
◎高速走行時の大きな振動と「耳ツン」
◎山梨実験線がいまだに単線のままの理由は?
◎実験線にはリニアに不要の架線用電柱(?)がある
◎中央新幹線は「在来型新幹線」で開業できる
◎在来方式での開業は現実的か
超電導リニアには、まだ数多くの技術的課題があり、実用化は時期尚早である――。
本書では取材の結果、このような結論に達しました。
この結論が正しければ、リニア中央新幹線は、「超電導リニアの技術は完成している」という前提が崩れたまま進められている、危ういプロジェクトだと言えます。
JR東海は、それに気づいていたのでしょう。同社は、その危うさを回避するため、中央新幹線を、超電導リニア方式と在来方式(従来の新幹線方式)の両方に対応した構造にして、建設を進めています。つまり、超電導リニアが失敗したときの備えとして、在来方式でも開業できる構造になっているのです。
ただし、在来方式で開業することになれば、3兆円もの財政投融資は正当化できなくなり、計画が頓挫しかねません。
中央新幹線は、超電導リニア方式と在来方式のどちらで開業するとしても危ういプロジェクトなのです。
もっとみる
商品情報
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.2 (5件のレビュー)
-
ここのところ、リニア中央新幹線に関する本をいろいろと読んでいるのですが、理系の方が書いた本を読んだのは、これが初めて。
とくに、技術に関する記述については、これまでのところ、この本が最も丁寧な印象。
…ただ、引き続いて、鉄道総合技術研究所による本も読む予定なので、技術に関する記述については、もっと詳しいものにあたる可能性はあります。
もし、「リニア中央新幹線に関する本を1冊だけ紹介して」と言われたら、この本を紹介します。
リニア中央新幹線に関しては、経済性や安全性、環境への影響など、様々な課題がありますが、この本は、リニアモーターカーそのものが抱えている課題についての記述が豊富です。
それらの記述から、リニア中央新幹線の計画を推進するかどうかよりも、まずは、その前に、リニアモーターカーそのものを技術的に確立させる必要があることについての理解が深まると思います。
そのことからは、当然のことながら、リニア中央新幹線に関する議論は時期尚早である、という結論が導かれますし、その結論についても納得できると思います。
ちなみに、この本は、リニア中央新幹線に関する本でもありますが、タイトルに、「リニア中央新幹線」という言葉が入っていません。
そのことからも、「リニア中央新幹線の前に、まずはリニアモーターカーについて知るべきじゃね?」という著者の想いを感じました。続きを読む投稿日:2023.01.16
リニア新幹線は技術的に完成していない、ということを端的に指摘している。
(1)超電導磁石とは、「超電導状態にしてから、いったん直流の電流を流し、コイルの両端をつなぐと、コイルに大電流が流れ、強い磁…界を発生」するので、電気抵抗によって電流が消えてしまう常電導磁石よりも強い磁界が得られ、これを利用するのがリニア新幹線である。
(2)超電導磁石を実現するためには「コイルを極低温に冷却して」電気抵抗をゼロにする必要があり、液体ヘリウムを冷媒とする。
そして、(1)については超電導磁石が常電導磁石になってしまうという「クエンチ現象」が不可避だという(クエンチで電気抵抗が発生するとコイルが発熱して液体ヘリウムが気体になって体積が700倍になるという)。
また、(2)についてはヘリウムが世界的に供給不足という問題があるという。
超電導磁石についての根本的な技術課題が解決されてない(実験室でならともかく、屋外の数百kmの営業路線での安定運用には疑問が伴う)というのが著者の指摘だ。
リニア新幹線は心臓部が未完成であるだけでなく、枝葉の部分にも課題は山ほどある。
たとえば、気密荷重の問題がありトイレの汚物タンクが破損する恐れも指摘される。また、駅に到着するたびに高速でゴムタイヤを出して着陸する、そのゴムタイヤは航空機以上の高頻度で衝撃を受けるので、そのメンテナンスをどうするかという問題もある。などなど。
中央アルプスを貫く長大トンネルの環境問題だとか、電力消費の大きさ=経済性の問題、といった話をする以前に「そもそも可能なのか」という問題提起である。
著者の観測では、JR東海も実現の困難さはわかっていて、従来型新幹線への転換も視野に入れている可能性が高いという。
それはそれで、無理やりリニア新幹線の話を進めて財投融資を受ける以上、「半公共事業」としては問題もあるわけで。
漠然とした「磁石で浮くから時速500キロ」という夢のイメージではなく、現実世界の出来事として考えるために有益な一冊。続きを読む投稿日:2021.09.02
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。