近代の虚妄―現代文明論序説
佐伯啓思(著)
/東洋経済新報社
作品情報
「ポピュリズム」「ニヒリズム」に象徴される近代の危機を乗り越えられる思想はあるのか。
「グローバリズム」と対峙するアフターコロナの価値観とはなにか。
西洋近代の限界を縦横無尽に論じ、日本思想の可能性を探る。
「当代随一の思想家」による「近代論」の集大成であり、「知の巨人」が新境地を開拓する主著。
トランプに象徴されるポピュリズム現象。
しかしこれは今に始まったことではない。すでに1930年代のナチス台頭から始まっていたことだ。
その原動力となったのは「ニヒリズム」。何も信じられない事態に絶望し、疲れきったため、その時々の状況に身を任せ、流れるように生きるという態度である。
これが後にユダヤ人大虐殺の「ホロコースト」につながっていった。
現在、先進各国を覆い尽くしているのも、こうした「近代の病」であるニヒリズムである。
近代のこのような虚妄≒ニヒリズムを乗り越えることは可能なのか。
その可能性として日本思想、とりわけ西田幾多郎「無の思想」などに象徴される京都学派に再び光を当てつつ、西洋近代思想と比較分析。
その現代的価値を問い直す。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
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本書では、近代の状況を、ニーチェによるニヒリズムを背景として、価値が相対化され、そのなかで(おそらく人間の特性として)他者への優越したいという志向だけがのこり暴走し、資本主義が過剰に働いているのだとい…う。
神やプラトンのイデアなど、形而上の何かがあり、世界が何者かに制作されるモデルから出発すると、形而上の何かがないということが理解されたのちには、人間が主体として世界を制作(コントロール)するという考え方に自然に帰結するという。そうすると人間の特性として「力への意志」が真だとすれば暴走せざる得ない。
また、制作されるというモデルを採用すると制作者が居ないという事実から、無価値に至るため、ニヒリズムは当然の帰結(歴史の必然であり西洋はその歴史の必然を一番クリアに示しているという)。
なお、ハイデガーによれば、ニーチェによるニヒリズムに対する人の生き方である「権力の意志」は主体を絶対化させた「主体性の形而上学」であるという。
著者はこの状況について、西洋の思想がデカルトのわれ思う故に我ありという言葉に代表されるように「在る」を前提/起点に理性/論理から組み立てられていることに対して、日本特有?の哲学である「無」を起点とした哲学/思想がヒントになるのではないかという。
私の考えでは、身体性と意識を一体として、意識と世界自体も言った言い捉えること、また世界にその外を必要としない世界観が、納得感があると思う。
東洋思想では、梵我一如とか、一切衆生悉有仏性、無我と色即是空あたりの考え方に関係するのかもしれない。自然法爾は、それらからの(少し遠いが)帰結かな。続きを読む投稿日:2023.04.22
冷戦後のアメリカの課題は、日本との経済競争と捉え、政府はトップ大学の知能を「不正な日本経済」という論理に注ぎ込み、日本の政治家も知識人もメディアも支持した
日本は普遍的な神を持たないからこそ、他国の概…念をすぐにインストールできる一方で、日本の歴史や文化の土台を無視したアメリカ的論理の土壌の上に非難を受け入れた
大衆は政治に対して、結果しか求めない時代になっている。トランプを支持する人間にとって真実や事実かは関係ない。お互いにフェイクだと批判し合う事で真実が自らにあるように見せるのが重要。民主主義はポピュリズムを内在している
アメリカ政治は、「相互的な寛容」、「組織的な自制心」、「手続きへの信頼」というコモンセンスから生まれていた。オルテガによると、現代の「大衆」は、現在を歴史上のきわめて高度な文明段階だと考えありあまる豊かさと自由をもてあまし、欲望を膨らませ、自分が受け取る豊かさを当然のものとみなして、ほんのささいなことに不満を抱く。ホイジンガはそれなりの教育を受けた「半教養人」が教育、技術発展によって現れたと述べる。過剰な民意の尊重や自己主張の権利や平等性の要求といった民主主義的価値により、コモンセンスが自壊する。政治の真実を求める側面ではなく、価値を追い求める側面が表出する
ヘーゲルが万人が等しく主人であるとみたリベラルで民主主義社会はニーチェにとって万人が奴隷となる社会であった。すべての人が等しく他者と同等だという近代市民社会は、みんなが等しく奴隷の社会である。
ホッブスは生命を価値基盤として、それを守るための絶対的権力者を必要としたが、アダムスミスは経済的闘争を基盤とする事で、殺伐とした闘争を終わらせた
現代はデカルトに始まる、定義された方法に従い、算定可能で計算可能なものに絶対的な価値としておく。資本主義だけでなく、目では観察できないものを定量化する機械を作成して計測する近代科学もそれに含まれる。
このような人間中心主義的世界観からなる合理的な近代のプロジェクトは、便利な情報通信に繋がり、交通網も整備された。しかし、最終的には世界大戦や冷戦といった覇権争いに繋がり、大衆の登場で政治の混乱につながった。これがハイデガーの精神の喪失、ヴァレリーの精神の危機に繋がる。そこから、現在、ゲノム操作や原子を利用した核爆弾といった空想的な現実を生み出している。
経済学は、希少性があるものの最適化を行う学問としてはじまったが、現代の社会を考えると過剰性の経済である。需要が供給を上まっている状態であればインフレになるはずであるが、デフレは過剰な供給を意味している。市場競争が効率と成長を実現できるというのは思い込みである。
一方で、日本の根底に流れる仏教をもとにした文化には、「力への意志」はない。我々は、現存する花そのものを見ているのではない、その背後に目に見えないものを見ている。美そのもの、人生の儚さ、移りゆく世界、散りゆく美という、ここにはない無を見ている。キリスト教は信仰を求めるが、親鸞の浄土真宗は信じなくても救うことを定めている。この西洋の普遍的な真理を求め拡散を思考するものに対して、全く異なる知見を提供している。続きを読む投稿日:2023.02.21
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