絵ことば又兵衛
谷津矢車(著)
/文春e-book
作品情報
最近の学説では「浮世絵の祖」といわれ、また「奇想の絵師」のひとりとして江戸絵画で注目の絵師・岩佐又兵衛を正面から描く、力作長編。
母のお葉とともに暮らす又兵衛は、寺の下働きをしていたが、生来、吃音が激しく、ままならぬ日常を送っていた。そんなある日、寺の襖絵を描きに来た絵師・土佐光信と出会い、絵を描く喜びを知る。
その後、自分の出自を知らぬ又兵衛は何者かに追われ京に移るが、新たに狩野派で学ぶ機会を得て、兄弟子でもあり師ともいえる狩野内膳と出会い、更なる絵の研鑽を積む。しかしある日、何者かに母を殺される。
その後もなんとか絵の道で生きていた又兵衛だったが、じつは自分の父は荒木村重であること、母だと思っていたお葉はもともと乳母で、しかも彼女を殺した首謀者が村重だったことを知る。
母を想い、父を恨み、人と関わることも不得手な又兵衛にあるのは、絵だけだった――。
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商品情報
- シリーズ
- 絵ことば又兵衛
- 著者
- 谷津矢車
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春e-book
- 書籍発売日
- 2020.09.30
- Reader Store発売日
- 2020.09.30
- ファイルサイズ
- 0.9MB
- ページ数
- 328ページ
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この作品のレビュー
平均 4.4 (11件のレビュー)
-
米澤穂信さんの「黒牢城」を読んだ後なので、その息子の物語がより感慨を持って入って来た。
この作品で描かれる荒木村重は「黒牢城」の彼とは違うのだが、代わりに息子・又兵衛をずっと見守るのが母代わりとなった…乳母・お葉と遠い記憶の中にぼんやりといる実母・だし。そして彼の一生を支えた絵。
彼は吃音により言葉で伝えることが苦手。だが代わりに絵で「語る」。それがタイトルの意味だった。
実際の彼がどうだったのかは分からないが、この作品での又兵衛は自身が荒木村重の息子であることを大きくなるまで知らない。
それは『己の周囲三尺の中に引きこもり、その中で生きてきた』からなのだが、その元を辿るとやはり吃音ということにたどり着くのだろうか。
話せば笑われたり苛立たせたりするので話さなくなり、自身の思いを伝えることも聞きたいことを聞くこともしなくなる。
自分が何者なのか知りたいと伝えられたのは関ヶ原の戦いが終わってからだった。
だが彼の吃音を嗤うことも急かすことも、逆に落ち着いてなどと宥めることもせず普通にやり取りしてくれる人も多くいる。
乳母お葉はもちろんだが、パトロン笹屋、狩野工房での兄弟子・内膳、妻となるお徳、仕官する織田信雄と松平忠直、その父・結城秀康、最初の絵の師・土佐光吉、影響を与える長谷川等伯など。
又兵衛の人生も波乱万丈だが、お葉、内膳、結城秀康・忠直親子に織田信雄、長谷川等伯など彼の周囲にいる人々もまた波乱万丈。
忠直は一般に乱心者の悪いイメージでしかないが、彼は娘・鶴姫に何かを残したいと又兵衛に絵を依頼した。その父・秀康もまた息子・忠直に残したいと自分の似絵を又兵衛に依頼した。
自分から『すべてを奪った』父・村重とは真逆の人だった。
吃音と父・村重への憎しみは終始又兵衛を苦しめるが、彼もまた自分の息子や弟子たちとの関わり方を反省するところがあった。
内膳から『そうか。お前は武士にはなれなんだか』とがっかりされるが、信雄に仕え忠直に仕え、物語にはないがその後は江戸に招聘されるらしいし、御用絵師としてある意味武士に似た生き方をしたのではないだろうか。荒木家再興も父・村重が望む生き方も出来なかったが、絵師「岩佐又兵衛」の名は残したし岩佐家を継承する息子も育った。
言葉を操ることは出来なくでも絵で語り『弱くか細い糸』ながら人と繋がった。
結城秀康からは『世の静謐を乱す絵』、長谷川等伯からは『奇妙の絵師』、土佐光吉からは『人を寄せ付けぬ』『寒い絵』、内膳からは己を『曲げられぬか』と言われるが、彼の絵は何故か人を惹きつける。
織田から豊臣、さらに徳川の世へと目まぐるしく変わることへの反発も多くの人々の中にあり、それが又兵衛の絵への共感を呼んだということだろうか。続きを読む投稿日:2022.06.09
このレビューはネタバレを含みます
谷津矢車の歴史小説。主人公絵師岩佐又兵衛は実在の絵師で荒木村重の子供というのも史実らしい。てっきり架空の人物架空の設定かと思ったのだが…。
レビューの続きを読む
物語は天賦の画描才能を有しつつも、将来の吃癖と不器用な生き…ざまの主人公又兵衛が、器用な立ち回りが生き残る必須の術ともいえる織田豊臣徳川の時代変遷の中に生きていく様を描く。
絵を描く描写の丁寧さが読みどころながら、絵心が皆無な俺にとっては、人間描写の巧さが核心部であり味わいどころだった。
人と関わることに不器用で苦手な又兵衛がその煩悶の逃げ口として余計に絵にのめりこむ様や、後半のある瞬間に自分の絵を完遂させるために、人との関わりをひとつ深く入り込むあたりの下りは、のめりこみ過ぎて通勤電車で危うく目的駅を通過しそうになったほど。
「人は誰しも後悔を引きずって生きるもの」という結論に自分のくだらない人生を照らし合わせて、なんかすごく安心させてもらった。続きを読む投稿日:2023.12.10
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