大正デモグラフィ 歴史人口学で見た狭間の時代
速水融(著)
,小嶋美代子(著)
/文春新書
作品情報
スペイン・インフルエンザ、結核拡大、そして関東大震災。
未曾有の疫病や近代化に伴う社会の拡大・密化は、庶民の生活にどのような影響を及ぼしたのか。
人口の推移をベースに紐解く大正時代の姿!
「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉である。
つまり本書は、新たに発掘された史料、進展してきた歴史人口学の成果を踏まえ、
大正期を人口という窓を通してながめてみよう、という意図のもと書かれた。
その視点で検討してみると、従来「デモクラシィ」の時代と呼び習わされてきた大正期も、
必ずしも明るく進んだ面ばかりではなかったことが分かる。
大正時代を捉え直す意欲的な1作。
速水 融(はやみ あきら)
1929年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。経済学博士。同大学教授、国際日本文化研究センター名誉教授などを歴任。
江戸時代の宗門改帳などの収集・分析を通じて近代以前の人口の変遷、人々の生活を明らかにする歴史人口学を切り拓いた。
2009年文化勲章受章。『歴史人口学の世界』『歴史人口学で見た日本』
『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ 人類とウイルスの第一次世界戦争』など著書多数。2019年12月逝去。
小嶋美代子(こじま みよこ)
1948年生まれ。青山学院大学卒業、麗澤大学大学院国際経済研究科博士課程修了。経済学博士。著書に『明治・大正期の神奈川県』。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
-
本作(2004年刊行)を読んだのは、2005年。
当時の私の年齢は、44歳でしたか。
若いですね~
当時某所で書いた感想を、ほぼそのまま転載します。
この本は2004年1月に発行されました。
著者…の速水融(はやみあきら)氏は1929年生まれ、小嶋美代子さんは生年不詳です。
本のタイトルにある「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉とのこと。
「デモクラシィ」とは異なります。
以下に【この本からの引用】と【私の感想】を書いてみます。
【この本からの引用】
人間とウイルスの戦いは、宇宙人との戦いにも似た、いわば「未知との遭遇」で、負ければ人類は滅亡するかもしれない。それに比べれば、人間どうしの戦いは何とも愚行としかいいようがなく、イラク戦争の戦費ほどのお金をウイルス対策に向けることができたら、人類の不安は多少なりとも軽減されるに違いない。
【私の感想】
この本の脱稿は2003年11月頃のようですが、この年の春にイラク戦争がありました。
また当時はSARS(サーズ/重症急性呼吸器症候群)が流行していたようです。
人間どうしの戦いを「愚行」とバッサリと切り捨て、爽快にさせてくれます。
【この本からの引用】
インフルエンザ・ウイルスによる流行性感冒が、なぜスペイン・インフルエンザと呼ばれたのかというと、戦時にあって、参戦国はどこも多大な戦病死者の存在、あるいは国内における流行を公表せず、ひとり中立国であったスペインにおける流行が広く喧伝されたからである。
【私の感想】
この本ではスペイン・インフルエンザと書かれていますが、「スペイン風邪」のことです。
スペイン風邪の発生源は定かではないが、スペインが発生源ではないことは確からしいです。
1918~1919年にかけて大流行し、世界人口の50%が感染したというのだから驚く。
死者数は4000~5000万人と言われています。
日本では当時の人口5500万人に対し39万人が死亡。
有名な人物では、島村抱月や野口シカ(英世の母)が亡くなっています。
【この本からの引用】
電灯の一般家庭への普及は、庶民生活に非常に大きな影響を与えた。
【私の感想】
電灯が都市部の家庭で用いられるようになったのは、大正時代のことです。
この影響の一つに出生率の低下が挙げられます。
何やら、電灯のもとで雑誌や書籍を読むことができたし、夜なべ仕事も容易になったとのこと。
そして断定はできないが、夜の生活パターンの変化のため、電灯の普及と出生率の低下は関連があるようだとのこと。
日本だけではなく他国の出生率低下例も挙げているが、確かに関連があるようにも思えます。
意外なところに影響がでるものです。続きを読む投稿日:2023.03.28
2004年発行。「デモクラシー」ならぬ「デモグラフィ」とは出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉。先に読んだ『歴史人口学で見た日本』のうち、大正時代に特化したともいえる内容。…インフルエンザの予防って昔から手洗い・うがい・マスクと変わってないんだね。続きを読む
投稿日:2013.06.10
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