この作品のレビュー
平均 3.7 (172件のレビュー)
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『ズル休み』、子どもの頃だけじゃなくて、大人になってもなんだか妙に心魅かれる言葉です。なんだかちょっとワルい子になってみたいという誘惑が朝に襲ってくることってないですか?何だか色んなことが急に面倒にな…って、ええい休んじゃえ、と決意するまでのドキドキ感。子どもの頃だと親を上手く誤魔化すために四苦八苦。そして勝ち取った自由な一日。特にそんな日の午前中の幸せ感はなんともいえないものがあります。でも、午後になるとちょっと心が陰りだし、近所の子どもが帰ってきた声が聞こえだすと憂鬱さが襲ってくる。夜になるともうなんで休んじゃったのかなあという後悔の時間。そして、翌日、学校に、職場に着くまでの地獄のような時間。時間が経つと記憶の彼方に消えてしまったそんな時間ですが、もしかしたら、今の自分にとってそれも大切な時間だったのかもしれません。
『衝動的でせっかちな性分は、わたしが未熟児で生まれたせいかもしれない、と両親は言う。小さすぎるしわくちゃの手足が涙を誘ったらしい』と両親に心配された陽子も『物心がついたときには、わたしはすでに近所の悪ガキからも一目置かれるやんちゃ娘に化けていた。我ながらあっぱれな成長ぶりだった』と生まれの弱さを感じさせない成長ぶりの一方で、体格大きく生まれつき『人生初の試練がダイエットとなった』という対象的な弟・リン。この作品ではそんな二人を中心に物語が進んでいきます。
ひょんなことから不登校になった陽子。『不登校をしていて一番こまるのは、わたしに不登校する理由がない、ということだった。全然、ない。刑事ドラマ風に言えば動機がたりないし、スポ根ドラマ風にいえば血と汗がたりない』何だか深刻さが感じられません。だから、『ところで、突然ながらわたしはまた学校に通いはじめた』と、ちょっとしたズル休みの長い版だったかのように学校生活に再び溶け込む陽子。でも不登校中、『陽子の不登校、ひょっとして、ぼくのせい?』と姉のことを親身に心配していたリンは姉との楽しい時間を作りたいと考えます。そんな二人が見つけたこと。
『新しい遊び、見つけちゃったかも』というリン。『その夜、わたしたちははじめて屋根にのぼった。すっかり屋根のぼりのとりこになっていた』と深夜の屋根のぼりという楽しみを見つけた二人。知らない家の屋根に勝手にのぼる二人。『基本その一。のぼりやすい屋根を選ぶべし。基本その二。人気のない場所を選ぶべし…』と決まり事も設け、すっかり夢中になっいく二人。そんな二人を中心に、陽子のクラスメイトのキオスクと七瀬さんが絡んで物語は展開していきます。
子どもの頃って夜に憧れるというか独特な魅力を感じることってなかったでしょうか。一方でとても怖いんだけど、何だか不思議な魅力。誰もが寝静まった真夜中。陽子とリンも『星はわたしたちのために輝いている。雲はわたしたちにむかって流れてくる。風はわたしたちのために空をめぐる。今だけはわたしたちを中心に回っている』屋根の上で感じるなんとも詩的な表現、感覚です。でも、何だかとてもわかるような気がします。
ズル休みがちょっとしたことが原因であるように、陽子が不登校になったのもある先生がいなくなったからでした。そんな先生が語ったこと。『大人も子供もだれだって、一番しんどいときは、ひとりで切りぬけるしかないんだ、って。ひとりでやってかなきゃならないからこそ、ときどき手をつなぎあえる友達を見つけなさいって、心の休憩ができる友だちが必要なんだよ、って』何だかとても厳しい現実を突きつけられているようにも思います。それが現実だから。人が生きていくためには、最後は自分が歯を食いしばるしかない、これはそうなんだと思います。でも、そんなに気を張ってばかりだと生きていくこと自体辛くなります。気持ちを楽にすること、そしてそんな心の休憩の時間を共にできる友だちってやっぱり大切なんだと思いました。こう書いていて、私の頭の中にもある友人の顔が浮かびました。もうずっと連絡も取っていないけど、あの時代、あの瞬間に、心の内を語ったことがあった彼。自分にもいたのかもしれない、そういう友人が。なんだか色々なことがとても懐かしくなりました。
「宇宙のみなしご」という書名。読み終えると妙に納得感がわいてきます。そして、それと同時に少し物寂しさも襲ってくる不思議な読後感です。ちょっとノスタルジック感のある、そして最後の数ページにものすごい魅力と説得力を感じた、そんな作品でした。続きを読む投稿日:2020.04.07
このレビューはネタバレを含みます
バターの後だったので俄然読みやすくて、一気に読めました。最近やっとティーンネイジャーの物語を、冷静に他人事として読めるようになってきた気がする。今までは自分の10代の頃と比較してしまい、自分はこんなに…色々考えて過ごせていたかな?こんなドラマチックなこと起きたかな?信頼できる人はいたかな?とか考えて落ち込んだりしてたので、作り話である、と理解して読めるようになったのは、恥ずかしながら最近なのである…。
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面白いことを求めて屋根のぼりをする中学生と、その子達の関わり合いの話。大人になっても人は、自分に必要な刺激を求めて、色んな方法で自分の中のモヤモヤを晴らしているんじゃないかと思う。安全圏内で。サクりと現実逃避するのに相応しい一冊でした。続きを読む投稿日:2024.03.31
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