いま私たちが考えるべきこと(新潮文庫)
橋本治(著)
/新潮文庫
作品情報
“私”は、私を取り巻く社会、学校、家族といった“私たち”の成員なのに、なぜそこに一体感を持ってないのか――。自主性って何だろう。民主主義は達成されているか。国家という概念にピンとこない。個性は伸ばすべきものなのか。そんな疑問の根底には、常に“私”と“私たち”を巡るややこしい問題があった。緻密で複雑な思考の迷路に導かれ、やがてあなたが辿る着くその「答」とは。
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商品情報
- シリーズ
- いま私たちが考えるべきこと(新潮文庫)
- 著者
- 橋本治
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮文庫
- 書籍発売日
- 2007.03.01
- Reader Store発売日
- 2020.01.31
- ファイルサイズ
- 1.1MB
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この作品のレビュー
平均 2.9 (9件のレビュー)
-
いつも以上にまわりくどい書き方で、早々にお手上げ状態になり、読まなくても良いよなと思って積読していたが、少しずつ気持ちを入れ替えて読み進めたが、やはりまわりくどくてわかりにくい書き方だ。それだけ単純で…はない事柄だという事だ。
読書評などを見ると、「私」と「社会」との関係性云々と話が広がっていくものが多いのだが、個人的にはもっと根本的な「どうしてそう考えるのか」という方向へ興味が移ってしまう。
今日は2022参院選の投開票日なんだけど、事前予測通り与党の勝利となる投票心理なんかがこの本で扱われている内容とマッチするものとなっている(個人見解)。
世の中の本では「ポストモダン(近代以降)」を考えるのが当然となっているのだが、本書で扱うのはそれ以前の近代以前と近代での考え方の違いから始まっている。
ぼんやりしたとらえ方としては、明治開国まで(つまり西洋の考え方が入ってくる前まで)が近代以前で、西欧化とともに広まった考え方の時代が近代と区別できるんじゃないのか。
その違いというのが、近代以前には一般の民衆は物事を考える必要がなく、上の者に従っていれば良い、上へ上へと行った結果は昔ながらの慣習に従うというのが正しい事だというものに対して、近代とは何が正しいかは自分で考えなければいけない時代の事なのだという。さらに今ではその先の近代以降の考え方を論じている時代が来ているらしいが。
で、そんな考え方の移り変わりの説明を読んでいて、実際の今を見渡すと「え〜?変わってへんやんか〜」と思ってしまうのであった。
いろいろ綺麗事を並べている”保守”の考え方だって、よくよく聞けば上に従えとか慣習を大事にしろとか自分の意見を言うなとか近代以前の考え方そのものだし、そもそもなぜ近代の考え方が登場したのかわからないような言説が当然のようにSNSなど現代のメディアにも登場し、いや〜日本は近代ではなくて、まだ近代以前との端境期ぐらいにしか意識が変わっていないんじゃないの?と思う。
今回の選挙でも、多くの人が薄々はなんかよろしくない世の中だなと思ってはいるのだが、投票結果としては、そのよろしくない世の中を切り盛りしている現政権にこぞって投票している。
保守層と言われる人たちがどうしてこうも何も考えないのだろうかとこれまでも不思議に思っていたが、実は保守ではなく前近代の人達だったからだと橋本治の本を読んでわかった。
前近代の人達は何も考えないで上に預ける事で前近代であったわけだから。
一方で、近代の統治者が前近代の考えを持ってくる理由は、前近代の人達は何も考えずに、難しいことは”上”の人に任せるという考えであり(だってだからそれを前近代って呼ぶんだから)統治しやすいからそう思わせるように仕向けているんだと思うよ。自分らは近代社会がめんどくさい人たちばかりで統治しにくいことを実感しているから。
でも結局のところ、なぜ近代に移行したのかというところを考えれば、自分でああだこうだと考えていく以外に世の中が袋小路に突き当たってしまうからなのは、先に”近代化”した西欧が示しているし、現状の独裁国家が力で押さえつけていないと崩壊してしまうことからもわかりきったことなんだけどね。
でも端境期だから続きを読む投稿日:2022.07.10
「自分の頭でじぶんなりに考えるということ」をめぐって、著者特有の堂々めぐりをつづける議論を展開している本です。
著者は、「“自分のことを考える”がそのまま“自分のことを考える”になる人」と、「“自分…のことを考える”が不思議にも“他人のことを考える”になってしまう人」という二つの類型を立てたうえで、前者が「近代」、後者が「前近代」に相当すると主張します。そのうえで、現代において「不幸な女の子を救ってあげたい」と考える男の恋愛の問題性や、西洋にならって近代化をめざすも組織の論理が根強く存在する日本社会の性格についての考察など、さまざまなテーマに著者の筆はおよんでいきます。
さらに著者は、上の二つの類型の人間が、相互に理解しあうことができないでいることを指摘し、またこの相互の無理解が一人の人間のなかでも起こりうると主張します。これは「ジキルとハイド的困難」と呼ばれており、一方の類型にとって他方の類型が「ゆるし」の機能を果たしうるということが論じられています。そこに著者は、「自分の頭でじぶんなりに考えるということ」が必要となる現代のわれわれが進むべき方向性を見ようとしています。
なお本書の「解説」を担当しているのは、仏教学者の末木文美士です。末木の『日本仏教史―思想史としてのアプローチ』(新潮文庫)は橋本が「解説」を執筆しており、相互に解説を執筆するという関係になっているのですが、日本の土着の思想と現代の日本のありかたをひとしく眺めわたしながら思索を展開しているという点で、両者の関心に通じあうものがあるのかもしれません。続きを読む投稿日:2021.11.02
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