奴隷船の世界史
布留川正博(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.1 (12件のレビュー)
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高校の世界史の教科書で奴隷が船底っぱいに横たわった状態で運搬される絵を見て衝撃を受けた。
それがどこに所蔵されていた絵かは覚えていないが、本書第2章の扉絵でロンドンの国立海洋博物館所蔵の「奴隷船ブルッ…クス号の構造図」がそれに近いのだろうと思っている。
本書では歴史家たちの協力によって新しい資料や、散逸していた資料がまとめられたことによって、より詳細な奴隷貿易についてがわかる。
驚いたのは、奴隷貿易の拠点港上位2位までがブラジルで、リヴァプールが第3位であることだ。
これまで大英帝国が最多の奴隷船貿易を行ったと考えられていたが、実はポルトガル船、ブラジル船が最も多いのだそうだ。(35~36頁)
また、南アメリカの各文明を滅ぼしたのはコンキスタドーレス、スペイン人という知識があるせいか、スペイン人も多く奴隷貿易に関わっていたのだろうと思っていた。
しかし、実は16~18世紀にかけては直接関わることは多くなかったようだ。(40~41頁)
奴隷船の積荷は奴隷そのものであるが、それと同時に船員、その中でも下位の船員である、水夫について触れられているのも興味深い。
船長にとっては水夫も同様に邪魔なもので、用が済めば鞭打ちや食事を抜いたりして逃亡するように仕向けたり、打ち捨てられたり、過酷な扱いを受けていたという事実は衝撃的だ。(81~96頁)
奴隷制廃止となってからも、実は現代も奴隷売買は続いている。
奴隷売買というと歴史の話、現代とは関係ないと思いがちだが、実はユニセフによると西アフリカでは子供が一人15ドル程度で購入され、ココアやコーヒー農場で働かせられたり、女子は性奴隷となっているという。(228頁)
私だって安くて良いものがあれば買いたい。
ココアやコーヒーといったプランテーション作物は好んで消費する。
しかしそれが誰かの犠牲のもとで安くて美味しいのならば、それは道義的に正しいことではないだろう。
企業の責任が問われる時代になってきた。
私が飲み、食べ、着るものがどうやって作られているのか、そこを企業は明らかにした上で、適切な値段での取引を是とする社会が求められる。
そして私たちもそれを良しとできる意識の転換、選択が求められている。続きを読む投稿日:2020.01.27
著者は、大西洋奴隷貿易史、近代奴隷制史を専攻する大学教授。
本書のそでには、「その犠牲者は1千万人、400年にわたり大西洋上で繰り広げられた奴隷貿易の全貌が歴史家たちの国境を超えた協力により明らかに…なってきた」、また奴隷船は「移動する監獄」と書かれている。奴隷貿易の開始から始まり、奴隷制廃止、奴隷から近代の移民へ流れと、本書で取り上げている範囲は広い。
大西洋の黒人奴隷貿易の中心はイギリスというイメージを持って昨年リバプールの国際奴隷制博物館を訪問した(会報104号海外博物館訪問レポートご参照)。この訪問で知ったことは、奴隷貿易に関するデータベースが蓄積され、16世紀から19世紀に大西洋を渡った黒人の歴史は単純ではないということだった。本書によると同期間大西洋を渡った黒人は12.5百万人、これに興味を持ち、別の本(*)に掲載されている統計では、輸送した奴隷を船籍別に見ると、イギリスは全体の1/4に過ぎずポルトガルとスペインで全体と半分以上を占めている。これにオランダ、アメリカ、フランス、デンマークが加わる。
本書のハイライトを筆者なりに取り上げると、第二章「奴隷船を動かした者たち」で、奴隷船の構造と実態。取り上げている船は奴隷搭載図で有名なブルックス号(British Slave Ship Brookes),319トンから始まり(船体内分ご参照)、船体構造では平均的な170トンクラスの奴隷船の内部を解説している。奴隷船の特徴としてバリケードがあることは本書で初めて知った。主甲板の後方に設置された高さ3メートルの仕切り板で男性奴隷と女性奴隷を隔て、奴隷の反乱時には船員が女性奴隷側に避難した。船体内の生活ぶりや死亡率を減らすための工夫も悲惨だが興味深い。船内の過酷な状況は、スティーブン・スピルバーグ監督の映画「アミスタッド」(アメリカ、ドリームワークス1997年公開)で映像化されている。続きを読む投稿日:2023.05.04
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