炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
スーザン オーリアン(著)
,羽田 詩津子(訳)
/早川書房
作品情報
1986年にロサンゼルス中央図書館で火災が発生。200万冊の蔵書のうち40万冊が焼け、70万冊が損傷した。この火災の経緯を軸に、放火犯として逮捕された男の半生、図書館の歴史、公共空間としての図書館の存在意義を語る、本と図書館好き必読のドキュメント。《ニューヨーク・タイムズ》年間ベスト・ブック選出の全米ベストセラー。
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商品情報
- シリーズ
- 炎の中の図書館 110万冊を焼いた大火
- 著者
- スーザン オーリアン, 羽田 詩津子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 早川書房
- 書籍発売日
- 2019.11.20
- Reader Store発売日
- 2019.11.20
- ファイルサイズ
- 18MB
- ページ数
- 384ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (11件のレビュー)
-
エピソードとしては面白いと思ったところはいくつかあったのですが、文章や章立てとの相性が悪かったかなあ。
プロローグ的な第1章が終わり、続く第2章は本当に素晴らしいと思いました。自分も図書館はちょくち…ょく行くのですが、開館前から並ぶということは、今のところしたことはありません。第2章で図書館開館前の様子が描かれるのですが、それがとても生き生きと瑞々しく描かれています。
警備員にまだ開かないのか、と尋ねる人がいる一方で、図書館内では職員たちが忙しく働いている。ここを読んだだけで、開館前の図書館に行ってみようかな、と一瞬思ってしまった自分がいます(笑)
そして図書館の火災の描写もまたすごい。あっという間に燃え広がり、あまりの高温に消防士たちからも多数の負傷者が出るという大惨事。火災はおよそ7時間半後ようやく収まったそうです。
続く第3章では火の手からは免れたものの、消火活動による放水でビシャビシャになった本の乾燥作戦が語られます。その数約70万冊。そして火災の翌日に集まったボランティアの数は2000人。さすがアメリカというか、このスケールの大きさには、不謹慎ながらもワクワクしてしまいました。
他に面白かったエピソードは、ロサンゼルス図書館の歴史が語られる中で出てきた図書館館長の”チャールズ・ラミス”
彼は元新聞記者でオハイオ州からカリフォルニアへ異動することになるのですが、その際旅行日記を出版するため、その距離を徒歩で移動したという変わり種。
その後、図書館館長になってからは、利用者のために図書館や職員の意識変革を行う一方で、私生活のだらしなさや、その変革意識から上層部から煙たがられて……
図書館をやめた後ラミスは、仕事に飽きていた、時間を無駄にした、と語ったり、日記には解雇された後に「とても気分がいい」と書いていたりしたそうです。
でも、自分はとてもそうは思えませんでした。例えば図書館の蔵書の整理や、職員に利用者に声をかけるよう積極的に促したりと、利用者の視点に立ったエピソード、
エセ科学本の間に「この本は図書館で保有できる本の中で最低レベルのものです。あなたにもっと分別があれば、これを読まなかっただろうに残念です」と、警告のしおりを挟もうとした、というエピソード、
あるいは鉄道会社に「本は人間になくてはならないもの」と手紙を出し、従業員に図書館を利用するよう勧めてほしい、と依頼したエピソードなんかを読んでいると「そんなわけあるかい!」と思わずツッコみを入れそうになってしまいます。
そんな彼が「とても気分がいい」とうそぶきつつも、晩年は破産状態で人生を過ごしたという話を読むと、もっとこのラミスという男のことを知りたいと思うのです。
他にも電子化が進む中での図書館の役割の話であるとか、なぜか著者が本を燃やす話もあるのですが、それも面白かった。本を燃やすといえば思い出すのはレイ・ブラッドベリの『華氏451度』ですが、この本でもそのことについて言及されています。
『華氏451度』の本が燃やされる描写は、行為自体は許せないもののその描写は幻想的で、美しかった記憶もあります。この著者は本を燃やしたとき昏い興奮を覚えた、といったことを書かれているのですが、それもなんとなく理解できるかもしれません。
本は書き手の想いや物語と、これまでの読者、そしてこれからの読者の歴史が、詰まっているものだと思います。それが炎によって、一瞬で消し去ることが出来るという事実。それは、書き手の想いも読者の過去も未来も征服できるということのように思うのです。
だからブラッドベリの美しい描写や、この本の著者が感じた高揚感というのは、そうした本の偉大さと人間の支配欲や破壊衝動の裏返しなのかな、と個人的に思いました。
とまあ、こんな風に面白いエピソードは多かったのですが、話が全体的に散漫に感じたのも事実。火災の話かと思ったら、現代の図書館の職員の話に移り、次に図書館の歴史になり、また火災の話に戻り、という風に章ごとにまったく内容が変わってしまうことが多く、話に感情移入しきれませんでした。
もっと上手くまとまっていたら、図書館の歴史やエピソードに対し、感情移入して読めたと思うのですが「それもっと知りたい」となったら話が変わってしまうので、エピソードや歴史が、上手くつなげられず、単なる事実の羅列のように感じるところが多かったです。
原題が『The Library Book』なので、火災の話だけでないのは仕方ないのですが、それにしてももうちょっと、話と章立てはまとめてほしかったかなあ。続きを読む投稿日:2020.02.29
このレビューはネタバレを含みます
炎の中の図書館
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110万冊を焼いた大火
著者:スーザン・オーリアン
訳者:羽田(はた)詩津子
発行:2019年11月25日
精興社
アメリカ人はあまり本を読まないと思っていた。学生時代、グレイハウ…ンドバスでアメリカを旅した時、バスディーポ待合室の椅子ひとつひとつに小型テレビがついているほど、彼らはテレビばかり見ていた。本を読んでバスを待っている人はほとんど見かけなかった。
アメリカでは、公立図書館がマクドナルドより多く、書店数の2倍あるという。スケールの違う図書館大国だ。そして、アメリカのことだからホーレスの利用も多いが、排除ではなく歓迎する。それどころか、もっとホームレスに利用してもらうためにと色々と工夫もしているようだ。
日本とは図書館の概念が違うかもしれない。映像や音楽のDVD類はもちろんだが、レストランのメニュー、あるいは、劇場で使われていた衣装、小道具、大きな操り人形だってある。もちろん、映画のポスターコレクション、反戦ポスターやパンフレットも。オーケストラの過去の貴重な楽譜だって借りることができるので、貧乏オーケストラにとってもありがたい。
1986年、ロサンゼルスダウンタウンにある中央図書館が7時間以上続く大火に見舞われ、100万冊以上が燃えるか、損傷するかした。建物は、1926年に人気建築家バートラム・グッドヒューの設計により建てられ、老朽化に対応して改修や増築が行われた名建築物。この火災で再び修復と増築が必要となり、1993年10月に再開館して現在に至っている。
このノンフクションでは、ある団体の読書室からスタートした当図書館の歴史、古代から行われた焚書の歴史、現在の図書館の仕事内容、放火容疑で逮捕されたが釈放された若者の民事訴訟について(容疑者とLA双方が訴訟しあった)、1960年代に盛り上がった老朽化対策の改修と増築、そして、1993年の再開館について書かれているが、いかにもアメリカのノンフィクション作家らしい、冗長で話があっちいったりこっちいったりという筆致だった。ユーモアでオチをつけるための無駄文こそなかったが、、、
ロサンゼルス図書館(に限らないとは思うがアメリカの図書館)にはレファレンスコーナーがあって、この内容が面白い。なんでも質問を受け付けるようだ。窓口ではもちろん、電話でも。例えば、米軍兵士が家族にあてた手紙は、正確な配備場所に触れるのが禁止なので手がかりをちりばめてある。それを読んだ家族が図書館に「男性が髪の毛をまっすぐになでつけている国はどこですか?」「鼻にリングをつけている人々がいるのはどこですか?」「どこの国の女性がふんわりしたスカートと白いエプロンをつけていますか?」といった調子で質問してくるそうだ。
また、警備担当者とホームレスとの心温まるエピソードにもジンとくる。ポケットマネーでお金を出してあげたホームレスが、数年後にすっかり安定した生活を送っていることを伝えに来てくれたり。
大火は本を愛する司書たちにとって魂を抜かれたような辛さだったに違いないし、1993年の復活たるや、えも言われぬ喜びだったに違いない。大阪でもつい先日、制限付きで図書館が復活した。2か月以上も前に予約した本がまとめて5冊来たが、この本はその内の1冊。このタイミングで読むにふさわしい1冊となった。続きを読む投稿日:2021.03.30
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