憲法なんて知らないよ
池澤夏樹(著)
/集英社文庫
作品情報
憲法は国の性格を決める。やさしい国、強い国。卑屈な国やケンカ好きな国。この憲法のもとで70年以上も、日本はケンカをしない穏やかな国だった。そのせいでぼくたちは損をしたか得をしたか。今、憲法を論じよう。その土台として、自分たちのふだんの言葉に書き直したのが、この新訳憲法。自分の目で見て、自分の頭で考えよう。それが自分たちの未来につながるのだから。付録として日本国憲法全文とその英訳も収録。
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商品情報
- シリーズ
- 憲法なんて知らないよ
- 著者
- 池澤夏樹
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2005.04.25
- Reader Store発売日
- 2019.11.22
- ファイルサイズ
- 13.8MB
- ページ数
- 216ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
日本国憲法の英語版を和訳した本。この本は2003年に書かれた。3月にアメリカがイラクに侵攻したのちに出版された。小泉首相が条件反射のようにありもしない核兵器をあると言ったアメリカを「支持する」とした、…あの時である。その4年後に憲法改正法は強行採決されてしまうわけだが、知識人の間には既にこの時点で鋭い危機感があったというわけだ。つまり4年前から本を出すわけだから、少なくともその一年前には、5年後を想像出来るアンテナがなくてはいけない。9条の会が作られるのが、2004年だった。そして、今の私たちにもそれに似た危機感がある。しかし私たちには、「漠然とした不安」があるだけだ。
感動的なのは、「まえがき」の法律が生まれた瞬間を小説家らしく再現してみせた処。それは「つまり、こういうことなんだ」
多分最初から人は仲間と一緒に暮らしていた。人の祖先は孤独なゴリラ型ではなく、集団生活のチンパンジー型だった。そうすると、強い奴と弱い奴が出てくる。強いのがいばるし、おいしい物は先に食べるし、雌を独占したりして。
強い奴はいい気持ちかもしれない。だけど、人間の場合は弱い奴のことも考えて社会をつくろうと決めたんだ。弱い奴の方を土台にして、と言ってもいい。
それができたのは、多分人間に言葉があったからだろう。弱い者同士で話しているうちに、世の中には弱い者の方がずっと多いということがわかった。それならば、社会というもの、弱い方が主役じゃないか。
そこで社会の大多数を占める弱い奴はみんなでまとまって、腕力ではなく言葉で、強い奴の横暴を抑えることにした。社会についていろいろきまりを作った。考えてみれば、強い奴だっていつまでも強いわけではない。歳もとるし、病気もする。もっと強くて乱暴な奴が現れるかもしれない。
自分が弱い側に立った時のことを考えてみたら、社会に決まりがあることはよいことだよ。
その一方で、社会はどんどん大きくなって、国というものが生まれた。最初は村くらいのサイズだった。それでも隣村との境界線を引いて、その中は自分たちのやり方でやると決めて、何か問題が起こった時はみんなで集まって相談した。
親が二人とも病気で死んでしまった子供たちをどう育てるか。その一家は流れ者で、村には縁者もいない(この子供たちって、弱い奴の典型だよね)。年寄りが呼びだされて、昔同じようなことが起きた時にはこうしたと話す。たとえば豊かな家に預けて育ててもらう。その代わり、子供たちは大きくなったらその家でしばらく働いて恩返しをする。村としては働き手が増えるわけだから、子供たちをそのまま死なせてしまうよりは、得をすることになる。
そんな風にして村ごとの決まりが長い歳月の間に固まってきて、その分だけ世の中は安定した。つまりルールをつくって、弱い者の立場を守って、みんなの力を引き出した方がその社会は全体として豊かになるし、暮らしやすくなるんだ。(12p)
このまま憲法前文にしてもいいような内容。
憲法をいろんな角度からもう一度読み直す。だって多くの人は「憲法なんて、全文は知らない」のだから。
2014年9月20日読了続きを読む投稿日:2014.09.22
初心者向けかな。
でも憲法とは何か、どういうものであるべきかを国民全体がわかってない以上、こういう本は大事だ。
日本国憲法全文と英語文、そして池澤訳があって読み比べてみるのは面白い。
日本国憲法に人だ…けでなく環境や地球を大事にする規程を盛り込んだ方がいいと言っている。池澤以外にもそういう提案をする人は多いな。
peopleをどう訳すか。翻訳の大切さも考えさせられる。
日本国憲法を作成するにあたって参考にされたと思われるものを勉強してみたい。フランス人権宣言やリンカーンのゲティスバーグ演説とか。
読んでも売っちゃいけない本だ。続きを読む投稿日:2017.05.23
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