なぜデフレを放置してはいけないか
岩田規久男(著)
/PHP新書
作品情報
多くの日本人は「物価が下がるのはよいことだ」と思っている。しかし、デフレで物価が下がるのはじつは悪いことずくめである。失業率が上がり、雇用が不安定な低賃金・非正規社員を増やし、企業収益率を下げ、人件費を削減させる。借金の実質負担は重くなり、実物資産投資は抑制される。自殺者が増え、社会的に有用な企業が廃業・倒産してイノベーションが滞る。「デフレなど問題ではない」と語る経済学者は、失業者や非正規社員の苦しみを理解していないのだ。欧米の経済学者と異なり、日本の経済学者はデフレの脅威に対して鈍感である。アベノミクスを実行した元日銀副総裁が、失われた二十年を「三十年」にしないためのすべてを記す。 ●デフレ脱却なくして日本経済の再生なし ●デフレはなぜ脅威なのか ●「失われた二十年」の原因とアベノミクス ●金融政策の条件と日銀財務に関する誤解 ●財政政策のリフレ・レジームへの転換が必要だ ●成長戦略の基本原則とは
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商品情報
- シリーズ
- なぜデフレを放置してはいけないか
- 著者
- 岩田規久男
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP新書
- 書籍発売日
- 2019.05.15
- Reader Store発売日
- 2019.05.17
- ファイルサイズ
- 45.8MB
- ページ数
- 336ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (4件のレビュー)
-
自分の未熟な経済学の知識では、100%の理解には至りませんでしたが、デフレ経済になってしまった歴史や、その負の影響、デフレ解消には金融政策と財政政策との協調が必要でその中身、などかなり勉強になりました…。一応、今までの勉強で理解できたつもりでいた部分(インフレ目標の定義など)も、再度、認識を深めることができました。成長戦略における規制の緩和についても同様でした。続きを読む
投稿日:2019.11.04
著名な経済学者による、デフレ脱却の重要性を説いた本。著者は最近『日本型格差社会からの脱却』という名著を出版しているが、その中でも主題となっているデフレからの脱却について、詳しく述べているのがこの本。著…者としては、欧米では当たり前の主張ではあっても、日本ではなかなか理解されないといったもどかしさを訴えている。説得力がある。
「(FRBの徹底したデフレ対策)FRBは、01年から景気減速が明確になったため、同年8月までに累計3%の利下げを実施しました。しかし、同年9月11日に同時多発テロが起き、不確実性が高まったため、さらなる利下げをせざるをえなくなりました。しかし、こうした連続の利下げにもかかわらず、03年にはコア・インフレ率が2%割れになったため、FOMCメンバーの間に「デフレ懸念」が高まり、同委員会はさらなる利下げを決定しました(FRBは、デフレに陥った日本について徹底的に研究し、デフレ回避の重要視を認識していた)」p33 「(Caballero and Hammour)不況によって、社会的にまだ有用な企業が退出する、という「無益な破壊」は増大するが、社会的に有用でなくなった企業が退出するという意味で、望ましい「「シュンペーター的破壊」はむしろ減少する。さらに、不況は新規参入を困難にし、老朽化した企業の存続を助ける。こうした結論が実証的に導かれるのは、不況期に生き残るためには、大きな純資産をもっていることが必要であるが、新規企業は十分な純資産をもっていないため、参入が難しいことによる」p69
「(竹森俊平)新たに創業する事業は通常、ハイリスク・ハイリターンであり、そのための資金調達手段としてはエクイティファイナンスが適切である点は言うまでもない。つまり、増資による資金調達が可能となる環境こそが創業が増加する条件であることは自明である。また、その意味では、株価が低迷し、増資による資金調達も困難であるデフレ下で、創業が増加することを想定するのは無理がある。「デフレによって採算性の低い企業を清算することによって、創造的破壊が実現され、新産業が台頭する余地が出てくる」という「シュンペーター仮説」は誤りである」p70
「資産価格暴落ではない不況の原因としては、モノの過剰供給があります。この場合には工場を閉鎖したり、採算の合わない事業を売却したり、人減らしをしたりして供給能力を落とすことによって、景気は回復に向かいます。しかし、資産価格暴落がもたらす信用危機、あるいは金融危機の場合には、設備も人も債務もすべて過剰になってしまう傾向があります。それは、金融危機の前には経済主体が多額の借金をして資産投機に走り、その結果、資産価格の高騰によるブームが存在するのが普通だからです」p95
「(資産デフレ)事業法人と金融機関は資産ブーム期に拡大した雇用の縮小、すなわち厳しいリストラを迫られることになります。資産ブーム期に債務、実物資産、金融資産、雇用をあまりにも増やしすぎたために、これらすべてを縮小すると、消費と住宅投資及び企業投資は総崩れとなり、総需要の減少が止まらなくなります。その結果、資産デフレ不況はデフレ不況に転化し、不良債権を処理して銀行の信用仲介機能が回復しても、デフレは続きます。したがって、資産価格が暴落したときには、リーマンショック後にFRBが採用したような大規模な金融緩和によって、資産価格の暴落を止めることが不可欠です」p98
「日銀の金融政策決定会合の議事録は十年後に公表されますが、その公表が進むにつれて、政府委員として金融政策決定会合に出席していた竹中大臣は、日銀に対して「インフレ・ターゲッティング(インフレ目標政策)」の採用を求めていたことがわかります」p102
「「強く、かつ、長く続いた追い風」に乗りながら、物価安定目標を2%に設定し、その達成にコミットしつつ、実際よりも大規模な量的緩和を実施すれば、竹中大臣が担当していた不良債権処理が進むとともに、デフレ脱却にも成功したと考えられます」p103
「日本には、13年4月以降に、日銀新執行部が始めたQQEやYCCを批判する多数の経済学者、エコノミスト、政治家、マスメディアが存在します。この日本の風景は、海外の中央銀行関係者や多くの経済学者やエコノミストから見れば「日本はまだデフレから脱却していないのに、懲りもせずQQEなどの非伝統的な金融政策を批判し続けているのか」と呆れられている」p162
「(T.Hatta & S.Ouchi)「90年代以降、日本のIT産業の生産拠点が台湾に移動した要因の1つとして、台湾が日本よりも正規社員の解雇が容易である」点を挙げている」p290
「(銀行の追い貸し説(Caballero, Hoshi, Kashyap))景気の悪化さらに長期経済停滞が「ゾンビ企業」を発生させたのであり、CHKが主張する、「ゾンビ企業」の大量発生が90年代から2000年代前半にかけての長期経済停滞の原因ではないことを示しています。つまり、CHKは因果関係を逆にとらえていると考えられます」p292
「(政府の産業政策)基礎研究のような外部経済が存在しない限り、どういう投資を実施するかは、企業が自主的に決めるべきものです。返す必要のない他人のお金で、投資するようでは、お金は無駄に使われるだけで終わる可能性が大きくなります」p303続きを読む投稿日:2021.09.08
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