立花宗茂
八尋舜右(著)
/PHP文庫
作品情報
筑後柳河十三万石の領主立花宗茂を描く長編小説。秀吉をして「鎮西一の忠勇、天下無双の勇士なり」といわしめた宗茂の生涯は、戦っては義戦多く、常に寡兵をもって大軍を破り、その生きざまは信義一筋、まことに誠実・清廉なものであった。これは実父高橋紹運、養父立花道雪という両父の高潔な生き方を範としており、ゆえに本編は、この三人の父子像が中心のテーマとなっている。ともに大友家の加判衆であった両父は、当主宗麟を守り立てる立場にある。たとえ非道な仕打ちにあったとしても、決して当主を見放さず、己の運命として受けとめ、恥じることのない生涯を終えるのである。この愚直なまでの廉潔な生き方を、著者は現今の知的ノウハウ重視の風潮に対するアンチテーゼとして提示、また自立する女性として描かれる妻ぎん千代と宗茂との葛藤も、今日的なテーマとして見事に描出している。現代人の心を癒し、人間の温もりをほのぼのとつたえる力作である。
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商品情報
- シリーズ
- 立花宗茂
- 著者
- 八尋舜右
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHP文庫
- 書籍発売日
- 2000.06.01
- Reader Store発売日
- 2019.04.19
- ファイルサイズ
- 4.1MB
- ページ数
- 484ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
戦国時代末期、信長が無念の最期をとげ、秀吉が天下を取る頃の九州での話。
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九州では、大内氏が毛利に敗れ、薩摩の島津と豊後の大友が覇権を争っていた。その大友側の当主 宗麟の幕下を勤めるのが、戸次氏、立花氏、吉弘氏、高橋氏だ。高橋紹運の子、高橋統虎が立花道雪の娘婿に行き、立花統虎となる。この物語の主人公、後の立花宗茂だ。
宗茂の義父道雪は、武士無骨を絵に描いたような人であり、絵に描くだけでなく、しっかりと実践した人であった。主従の紐帯は信義である、というのが道雪の信条だった。信義は武士が己の生き方をまっとうするためのものだ。ただ、おのれ一人が生き延び、肥え太るために右顧左眄し、利のある方へなびく行為は、武士として最も恥ずべき所為だ、と道雪は信じている。戦国武将のほとんどは、信義とはかかわりなく、ひたすら利害で動いた。その結果が下克上だ。しかし、全てがそうではなかった。紹運、道雪、宗茂などの生き方がそれだ。たった一度限りの短い人生である。算盤勘定で動いたのでは、潔い死に方は出来ない。信義や名誉を武門の本分としながら、それを守り通した武将が少なかったため、宗茂らがことのほか称賛をあびるのであった。
建前と本音の使い分けは、戦国人にとっても乱世を生き抜くための、極めて常識的な技術の一つだった。その技術を拒否して死んだところに道雪や紹運の特異性がある。権謀術数家からすれば、両者のような生き方は、まさに愚の骨頂というべきであった。それでいて、道雪や紹運を一笑にふすことができないのは、両者が戦術、戦略の王道を歩きながら、あまたの詐術家を相手に一歩もひかず、堂々たる戦を展開出来たからであろう。
そんな愚直な宗茂らが支える大友氏も、島津の攻撃にさらされ、衰退の一途を辿っていたが、近畿では、信長の後に秀吉が台頭し、九州までその手を広げてきた。あえなく、大友は秀吉に乞い、幕下に入り、島津撃退を頼んだ。宗茂は、秀吉に、その愚直さを愛され、島津攻めの先陣で華々しい軍功を立てた宗茂に、筑後の十三万石を与え、大名として取り立てた。そして官位も旧主家大友家を追い越し、従四位下を賜ったのである。秀吉はもともと純粋なる心性をもった男である。秀吉はもう少し早く宗茂に会っていたら、自分の養子にしたいとまで思ったほどである。
しかし、秀吉は朝鮮の役で家臣たちに亀裂を与え、秀吉没後に、三成派 対 家康派が出来、それがそのまま関が原の戦いにまで進んでしまう。宗茂はどちらについたか。やはり信義の人である。どちらに付けば有利かといったことは関係ない。自分が今あるのは、秀吉の格別な引き立てがあったからである。理由はどうであれ、いまその大恩ある豊臣家が危機に瀕している。それを座視することは、武士として、人間として、到底出来ることではない。今の身代は、おのれの働きに対して応分の報酬を受けたまでだ、といった考え方は宗茂には無縁だった。そのような自己正当化は、宗茂の好むところではなかった。三成がどうかは関係ない。自分が豊臣に恩義を感じ、豊臣方に付くまでだ、ということである。関が原の戦いには直接参戦せず、別の戦場で、京極高次を攻めていた。立花勢はこれを破ったが、同じ頃、関が原では西軍が破れていた。宗茂は柳河城に帰るが、朝鮮の役で気心知れた、加藤清正の説得により、城を明け渡し、清正預かりの身となった。清正や前田家から仕官の声がかかるが、これを拒否し、家臣が乞食をして宗茂を養わなければならぬほど困窮した。江戸まで出てきた宗茂は、これも、気心知れた家康の家臣、本多平八郎から声をかけられ、将軍秀忠に引見した。秀忠は宗茂を5千石で抱え、翌年は、奥州棚倉1万石の大名に復帰した。宗茂は猟官運動などいっさいしなかった。ただ、家来の稼ぎに頼り、雑炊を食らっていただけだ。清正や平八郎が親身になって赦免を願い、仕官の世話をしたのである。いや、せずにはおれなかったと言うことだろう。一度会えば、誰もが好感を持たずにはおられなかった廉潔の人、誠実無比な生き方、戦国時代に誰もが憧れたが、自分では出来なかったことを宗茂が貫き通したのだ。それが、一時は敵対したものの、人たらし、狸おやじと言われた、秀吉、家康のような怪物の心をも魅了したのだ。
夏の陣の後、関が原の戦いで柳河藩を失った1600年から20年後、1620年に柳河藩に復帰。その22年後に、76歳で没した。投稿日:2013.11.01
soutenkoroです。
☆4!!!!
道雪、紹雪を父に持ちます。
岩屋城の行は、楠木氏のそれを思い起こさせます。
人柄は義に厚く、純粋武将です。
良本だと思います。投稿日:2010.03.22
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