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ナレーター:浅科准平
再生時間:02:08:37
国民文学作家・吉川英治の代表作『宮本武蔵』の音声版。
新聞小説として連載され、かつてないほどの人気を得た吉川英治の「宮本武蔵」を、情緒ある朗読に演出を加えたオーディオブックとしてお届けします。
第170回 日出づる頃
逃げたろう、逃げたに違いない。見えぬ武蔵の姿に対して、そのような噂が蔓延る中、十三日の夜が明けた。この事態を前に、武蔵の事を推挙した張本人である長岡佐渡は、眠らずに頭を悩ませていた。このままでは自決の道も辞せない。諦めかけたその時、廻船問屋の小林太郎左衛門の所にいるのではないかとひらめく少年があった。
第171回 彼の人・この人(1)
武蔵からの返書と次第を六軒の屋敷へ告げ回った後、主人である長岡佐渡のもとへ急いでいた縫殿介。その途中、海辺のあたりで今朝から試合の準備を進める大勢の藩士たちの様子を目にし、思わず物陰に佇む。そこには、愛刀物干竿を長やかに横たえる佐々木小次郎の姿もあった。一方、対岸の赤間ヶ関にある武蔵にも、同じ準備の時がさし迫っていた訳だが・・・・・・。
第172回 彼の人・この人(2)
佐々木小次郎との決闘の時が刻一刻と差し迫る中、武蔵はひとり部屋にこもり、ひたすら画を描いていた。試合直前にも関わらず、そんな様子の彼を心配する太郎左衛門であったが、どこか申し訳なく思い、なかなか止める気にはなれない。ふと、庭先の干潟の方から縫殿介の声が聞こえてきた。その声は、少しでも早く武蔵に出向いてもらうようにとの催促の知らせであった。
第173回 魚歌水心(1)
武蔵を乗せた小舟は赤間ヶ関を離れ、船島へと向かっていた。舟を漕ぐ佐助は、約束の刻を大分過ぎている事を指摘するが、武蔵はそのくらいがちょうどいいと答える。やがて舟底にあった櫂の割れを武蔵が手に取ると、それを膝の上で気に入るまで削り出した。生死を分かつ試合の直前だというのに、そのあまりにも淡々とした姿を、佐助は解せない様子で見つめるのであった。
第174回 魚歌水心(2)
陽が中天に近づく頃、武蔵を乗せた小舟は島の入り江へと差し迫っていた。島の木陰にある巌流の姿を確認した武蔵は、身支度を整えると、櫓を取る佐助に「もうよい」と伝え、舟から飛び降りる。水をかき分けながら早い足取りで地上へ向かう武蔵と、その足が磯に上がらぬ間に水際まで駆け寄ってくる巌流。二人の戦いは、互いに一歩も譲らぬ面で、敵の名前を呼び合うところから始まった。 -
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再生時間:02:10:30
国民文学作家・吉川英治の代表作『宮本武蔵』の音声版。
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第166回 待宵舟
昨年の秋の末、お杉婆から酷い打擲(ちょうちゃく)を受けて以来、すっかり体を弱らせていたお通。そんな彼女の看病に当たっていたのは、お通をこのような目に合わせた張本人であるお杉婆であった。「決して、ばば様のせいではない」と、お通から慰めを受けるも、婆は涙が止まらず、これまでの罪を懺悔するのであった。
第167回 鷹と女と
佐々木小次郎の剣法・巌流は、彼が豊前へ来てから幾年とも経たない間に、九州一円を風靡していた。小次郎の肩に衆望が集まり、主君である忠利も「よい者を召抱えた」と満足する。だが一方で、近畿や東国においては宮本武蔵の世評の良さが際立っていた。この話題があがると、顔色に出すまいとしながらも、たちまち冷ややかな語気で武蔵を評し始めるのが小次郎の常であった。
第168回 十三日前
武蔵と小次郎の試合が決まり、小倉城下の町は旅人で溢れ返っていた。各所に高札が建てられ、巷の声は既に試合の噂ばかりである。運命の日まで、残り数日に迫ったある日の午頃、門司ヶ関から小倉へ入る城下口の前で、乳飲み児をあやしている女があった。つい先頃、大阪の河端で、ふと見かけた又八が後を追って行き会った、朱美であった。
第169回 馬の沓
佐々木小次郎との闘いの数日前、挨拶にと長岡佐渡のやしきを訪れた武蔵。取次に出てきた家士によると、佐渡は不在中との事であった。いずれにしてもすぐに帰るつもりではあったが、せっかくのお越しだからと引き留められる。すると、廊下をばたばたと駆けて来る足音がした。式台から飛び降り、武蔵の胸に抱きついてきたのは、伊織であった。 -
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再生時間:01:47:58
国民文学作家・吉川英治の代表作『宮本武蔵』の音声版。
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第162回 風便り(1)
播州のとある漁村で紺染の仕事にあたっていたお通。ある日、麻屋の旦那・万兵衛が彼女のもとを訪ねてくる。万兵衛は、麻の買い出しに行った際に、武蔵の姉であるお吟に偶然出会ったことを伝えに来たのであった。さらには、そのお吟がお通に会いたがっているという。これを聞き、故郷の日の思い出が急に胸にこみ上げてきたお通は・・・・・・。
第163回 風便り(2)
秋の夕べの身に迫る頃、佐用(さよ)の三日月へ着いた万兵衛とお通。讃甘(さぬも)の宮本村まで、あと山一つという地点まで来たが、そこにいるべき人がいないという現実に、お通は寂しさを覚えていた。やがて万兵衛が山の方へ向かって石段を上り始めると、お通は自分が何か危険な線を冒している心地がしてくる。だがこの先で、武蔵の姉であるお吟が自分の事を待ち詫びている。万兵衛のこの言葉を信じたお通は、ただ彼の後をついていくのみであった。
第164回 観音
お通を攫った郷士たちに、お杉婆の手蹟をつきつけた城太郎。取引として、人質にとったお杉婆の居場所を教える代わりに、お通の身を引き渡してもらうためであった。だが郷士の三人は、まだ幼い城太郎を青二才だと見縊り、襲い掛かってくる。お通の目前で、城太郎が今にも撫で斬りにされそうになるが、彼女はただ、闇に向かって助けを呼ぶ事しかできなかった。
第165回 世の潮路
城太郎から懲罰を受けているお杉婆を、お通は仇とも憎いとも思わず、逆に身を案ずるようにさえなっていた。年老いた体がこの雨風の中に一晩もあっては死んでしまうかもしれない。あの婆も根からの悪人ではない。そう考えたお通は、城太郎には無断で宿場を抜け出し、一人でお杉婆を捜しに行く。やがて、崖道をきり削いだ洞穴から、呻きとも喚きともつかない老婆の声が聞こえてきた。 -
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再生時間:01:57:13
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第157回無為の殻
およそ二月ぶりに山から里へ下りてきた武蔵。その顔には、山籠もりを始める前より苦しげな迷いが刻み込まれていた。解けないものが次々と彼の心を苛んだためであった。剣も心も虚ろになった状態で鎌倉へまわってきた折、はからずも武蔵以上に苦しみもがいていた一人の男と出会う。旧友の又八であった。
第158回 苧環(1)
武蔵の命を狙い、鉄砲を撃った二、三人の男が丘の方から駆けて来た。だが、死骸となったはずの狙撃の的はどこにも見当たらない。武蔵は咄嗟の判断で、逸早く橋桁の陰へ身をかがめていたのである。それに気づいた三人もまた物陰に潜んで体制を立て直すが・・・・・・。
第159回 苧環(2)
一昨夜、武蔵を闇討ちしようとしたのは、亘志摩(わたりしま)の家中の者であった。藩に届いた死亡届からこの事実を知った亘志摩は、武蔵を呼び出し、謝罪を入れる。さらに三宅軍兵衛なる者までもが、自身の門人も混ざっていたとの事で、詫びを入れにやって来た。その後、襲撃犯の死骸の位置と刀痕(とうこん)にあった不審な点について、武蔵に尋ねる軍兵衛であったが・・・・・・。
第160回 円
乞食のようになりながら、愚堂和尚と又八の気まかせな旅路を追い続ける武蔵。目当ては、和尚の口から授けられる一言の教えであった。たった一つ、何かしら、分からないものがある。それさえ分かれば、すべてが豁然と解けそうな気がするのだが、和尚が武蔵の求めに応じることはなかった。
第161回 飾麿染
播州のとある漁村で紺染の仕事にあたっていたお通。ある日、麻屋の旦那・万兵衛が彼女のもとを訪ねてくる。万兵衛は、麻の買い出しに行った際に、武蔵の姉であるお吟に偶然出会ったことを伝えに来たのであった。さらには、そのお吟がお通に会いたがっているという。これを聞き、故郷の日の思い出が急に胸にこみ上げてきたお通は・・・・・・。 -
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再生時間:02:10:12
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第153回 春・雨を帯ぶ
旅立つ長岡佐渡と縫殿介を呼び止めた一人の若侍。大助と名乗ったその男は、真田幸村の子息であった。聞けば、父が佐渡に茶を一ぷくもてなしたがっており、そのための迎えにやって来たのだという。佐渡はやや考え込んだ後、厄介になることを決め、幸村の待つ屋敷へと向かうのであった。
第154回 港
見知らぬ男たちに謀られ、断層の底へ落とされてから、それ以前の記憶を思い出せずにいた伊織。どこをどう歩いているのかも分からず、ただ権之助を呼び続けていた。途方に暮れていると、軽い旅装いをした娘と母に声を掛けられる。娘は伊織を自分の店に連れて行ってやろうと母に提案するのであった。
第155回 熱湯
広い大土間から軒先の床几にまで溢れ返る武士たちの中に、佐々木小次郎の姿を見つけた伊織。しばらく物陰に佇んでいると、客人たちへ麦湯や冷たい水でも汲んで差し上げるようにと店の者に叱りつけられる。返事をし、湯沸かし場に来てからも、その眼は小次郎を睨(ね)めつけていた。盆に茶碗を乗せ、客人たちに配っていく。だが小次郎だけは、茶碗を受け取ろうとしたところで、さっと手を引くのであった。
第156回 無可先生く
岡崎の寺子屋に「無可」と名乗る独り身の男がいた。彼は、読み書きを教える道場を開いていたが、自筆らしい看板の文字は決して上手くはなかった。ある日、隣の家に住む女将から、この辺りでお前さんの命を狙う牢人衆がうろついているから気を付けるようにと忠告を受ける。だが無可は、それを気に留めることもなく、一人夜街へ出掛けて行った。その先で会合していた相手とは・・・・・・。 -
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再生時間:02:20:13
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第149回 麻の胚子
丑之助と出掛けた後、なかなか帰ってこないお通の身を、柳生兵庫は心配していた。彼はお通に対して、密かな恋心を抱いていたのである。だが、お通の胸には武蔵という者が住んでいる・・・・・・。彼女の気持ちを知っていた兵庫は、いつかお通を、武蔵の手に渡してやることが自らの使命であると考えていた。そんな折に、お通が見たら喜ぶに違いない一通の飛脚状が届く。
第150回 草埃
のどかな野原で昼の弁当を解くことにした柳生兵庫と木村助九郎、そして丑之助の主従三人。助九郎が手頃な場所を探していると、丑之助が気を利かし、何処からか一枚のむしろを持って来る。だが、そのむしろは権之助と伊織の所有物であった。潔く諦め、草の上に座る権之助とは反対に、一枚のむしろといえど、人に迷惑を掛ける人間を憎んでやまない伊織は、自分達のむしろを使っている三人組を見つけると、すぐさまそこへ駆け入っていく。
第151回 童心地描図
連れの大人たちが野試合に気を取られている隙に、人ごみから抜け出し、五重の塔の下で睨み合う丑之助と伊織。彼らは口喧嘩の果てに、ここで勝負をつける約束をしていたのである。昂った伊織は、武蔵の教えなどは忘れてしまい、盲目的に相手へぶつかっていく。だが、丑之助は身を避け、あっさりと伊織を棒で撲り伏せてしまうのであった。
第152回 古今逍遥く
思いがけない所で、武蔵から話を聞いたことのある人物・本阿弥光悦と出会った権之助。どのような旅路なのかという光悦の問いに対し、現在は伊織と共に武者修行中の身であり、武蔵が師である旨を話した。その後、本阿弥光悦ともあろうお方が、なぜこのような人里離れた伽藍などで掃除に励んでいるのかと問うと、思いもよらない回答に権之助は驚愕する。 -
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再生時間:02:19:32
国民文学作家・吉川英治の代表作『宮本武蔵』の音声版。
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第144回 逃げ水の記
武蔵の帰りを待ちきれず、新蔵の馬を借り、外へ出て行った伊織。秩父まで行けば武蔵に会えると思い、ひたすら鞭を打つが、その途中、3、4人の仲間(ちゅうげん)に引き止められる。お杉婆達の一行であった。武蔵が自分たちをつけさせているのだと勘違いした婆は、伊織を捕え、部落の入口の方へと連れていく。そこで彼を待っていたのは、不気味な笑みを浮かべる、佐々木小次郎であった。
第145回 栄達の門
朝の稽古を終えた北条新蔵のもとへ、五、六人の青年が訪ねてきた。彼らは皆、旗本の子弟であったり、儒官の子息であったりと、それぞれ然るべき家の子らであった。話を聞くと、亡師勘兵衛の子息・余五郎を討った佐々木小次郎を討ち返すため、新蔵にも手を貸してほしいという。だがその相談に対し、新蔵は意外な答えを返す。
第146回 天音
身を解放された武蔵は、何か思うところがあったのか、牛込の北条家には戻らず、武蔵野の草案へ帰っていった。留守番をしていた権之助に、これから誰からも離れて山へ分け入るつもりだと伝え、後のことを彼に託す。その後、沢庵、安房、そして伊織に宛てた手紙を権之助に委ねるのであった。
第147回 春告鳥く
鶯の名所である柳生谷に身を置いていたお通。長い間、陽の光を浴びていないせいか、彼女の顔は梨の花のように白く染まっていた。ある日、城内の者の口伝いに、兵庫から呼び出しを受けている事を知る。内容を聞きに行くと、自分の代わりとなって、挨拶に出てもらいたい客人が来ているとの事であった。
第148回 奔牛く
月ヶ瀬の渓流沿いへ、梅を見にやって来たお通と丑之助。この通りの先には、奈良から追われた牢人がたくさんいるという話を丑之助から聞くと、お通は不気味な気持ちに襲われ「もう帰ろう」と彼を促す。と、その時、何処からか「オオーイ」と呼ぶ声が聞こえてきた。声の主は、牢人ていの男三人組で、何やら卑しげな眼をしながら、お通の周りを取り囲むのであった。 -
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再生時間:02:20:33
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第140回 兄弟弟子
秋の強い日差しの下、城太郎は大手を振りながら一人歩いていた。その後ろから、何やら妙な少年がつけて来る。不審に思った城太郎は一度叢へ隠れた後、すくっと少年の前に現れ、「小僧」と呼びかけた。その少年とは、武蔵の弟子・三沢伊織の事であった。
第141回 大事
病か、老化によるものか、何をするにも手探りであった青木丹左衛門は、誰に頼まれるわけでもなく、沢庵の前でおもむろに尺八を吹き始めた。それを聞いた沢庵は、丹佐の心の内を汲み取っていく。その音色には、宮本武蔵と、息子・城太郎に対する懺悔の気持ちが込められていた。
第142回 夢土
紅葉山のあたりで、数人の大工から脱兎のように逃げ回る一人の井戸掘り人足。しかし、結局すぐに追い詰められ、ふくろ叩きにあってしまう。その井戸掘りの正体は又八であった。やがて職方目付が駆けつけ、又八を連れていくと、彼をそのまま薪小屋の中へと放り込む。その小屋で、何の調べもないまま幾日も過ごしていくうちに、又八は刻一刻と死が近づいてくるような恐怖を覚えるのであった。
第143回 花ちり・花開く
江戸城から出てくる前に、沢庵は一人の男を弟子として連れてきていた。その弟子とは、本位田又八であった。頭をきれいに丸め、小屋の闇の中で佇んでいた又八は、沢庵に手招きされると、よろめきながら立ち上がる。いよいよ刑罰に処される・・・・・・。観念した又八は、青く削げた頬にほろほろと涙を流すのであった。 -
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再生時間:02:02:10
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第136回 撥
伊織と共に神楽殿の祭りを見に来ていた武蔵。神楽司の人長(ひとおさ)の歌詞(うたことば)を聞きながら、彼は太鼓をたたいている舎人(とねり)の手をじっと見ていた。すると突然、辺りを忘れて大きな呻きをあげる。年来、胸にわだかまっていたものが解けた瞬間であった。
第137回 魔の眷属
祭りで武蔵を見かけたという報告をお甲から受け、酒の酔いから目を覚ました祇園藤次。お甲と同じく、武蔵の事を怨んではいたものの、自分の手なみからしてまず勝ち目はないと、半ば復讐を諦めかけていた。だが、この山には武蔵に深い遺恨を抱く人物がもう一人いるとお甲に言われ、ふとひらめく。その人物とは、現在、山の総務所で宝庫番を務めている宍戸梅件の事であった。
第138回 八重垣紅葉
日が上り始めた頃、太陽について語らいながら山道を歩いていた武蔵と伊織。すると、ふいに歩いていた大地が揺れるような感覚と共に、ずどんッ!と烈しい音が鳴り響く。武蔵の命を狙う者たちによる襲撃であった。咄嗟に耳を抑えた伊織は、熊笹の中へ顔を突っ込む。その途端、うすい弾煙が漂う樹陰の方から、ぎゃッと、生き物が断末を告げる刹那の叫び声が響いた。
第139回 下り荷駄
平等坊(びょうどうぼう)の宝蔵破りをした罪人として、武蔵は役人の群れに捕まっていってしまった。権之助は、泣くじゃくる伊織をなだめ、その体を背におぶって歩き出す。夕べ、床几を借りて寝た犬茶屋の前を通りかかると、背中の伊織が、さっき山で見た女の人がいる、とつぶやく。その女とは、憎悪に満ちた視線をこちらへ向けて来るお甲の事であった。 -
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再生時間:02:25:03
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第131回 四賢一橙
会わせたい人物がいると聞き、北条新蔵の邸に招かれた武蔵。邸内に到着すると、新蔵の父・安房守氏勝(うじかつ)に出迎えられた。氏勝の話によると、武蔵に会いたがっている人物を二人招いているという。一人が宗彭沢庵であることはうすうす勘づくことが出来たが、もう一人が何者であるかは思い当たりもしないのであった。
第132回 槐の門
ある朝、又八が目を覚ますと、朱美の姿がなくなっていた。外へ出て、うちの朱美を知らないかと訊き歩いていたところ、彼女を見かけたらしい炭屋のおかみが又八を呼び止めた。聞けば、朱美は綺麗にめかし込んで、品川の親類のところへ向かったという。又八はなんとなく忌々しく思い、追いかける程の強い執着はなかったため、浜の方へ歩いて行った。そこで、顔見知りの質屋の旦那に声をかけられる。彼からとある大仕事の相談をされた又八は・・・・・・。
第133回 さかいち坂
夕刻、お杉婆の引っ越し先を尋ねに来た二十七、八の若い男があった。半瓦の使いからこの話を聞いたお杉婆は、もしや又八では・・・・・・と、しばらくの間、その事で頭が一杯になっていた。その晩、裏口で何やら物音がしたので、婆は灯りを持って様子を見に行く。そこには手紙のようなものが置いてあり、開いてみると中には二枚の黄金が入っていた。
第134回 忠明発狂始末
お杉婆を人質に取り、小次郎がやってくるのを道場で待っていた小野派の門下たち。やがて、小次郎が門内へ入って来るのを、小野派の一人である浜田荷十郎が目撃した。それを聞いた門人たちは、今に道場の玄関へ声がかかるかと待ち構えていたが、小次郎が訪れる気配はない。何か様子がおかしいと思い始めたその時、住居の方から血相を変えて駆けて来る娘の姿があった。
第135回 もののあわれ
激しい暴風雨の影響で、武蔵と伊織の住んでいた家は跡形もなく潰(ひし)がれてしまった。それをよそに、武蔵は村人たちの被害の救援にあたっていた。一通り片付くと、村の老百姓が礼を言いにやって来て、武蔵の家を建て直す間、自分の家の部屋を貸してくれると言う。老百姓の家からは、三峰神社の月祭りの音が聞こえてきた。翌朝になると、伊織が三峰神社へ行きたいというので、武蔵は伊織と共に出掛けることにする。 -
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再生時間:02:00:29
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第127回 虫しぐれ
小次郎が滞在している邸を尋ねて来た岩間角兵衛は、召使に、酒の支度をしたうえで小次郎を呼んでくるようにと伝えた。角兵衛が改まって小次郎を呼び出すのには訳があった。それはかねてより、殿に小次郎の身を推挙しておいたところ、近日連れて来いという話に進展したためであった。小次郎も喜んでくれるに違いない、そう期待しながら事を話した角兵衛であったが・・・・・・。
第128回 鷲
仕官の斡旋を頼んでおきながら、主君とする者の言葉が気に食わないなどという理由で話を蹴った小次郎に、岩間角兵衛はすっかり弱っていた。一度はもう関(かま)うまいと思った角兵衛であったが、数日経つと、あれが彼の偉いところかもしれないと考え直す。それから四日ほど後、改めて小次郎のもとを訪れ、藩邸へ来てくれないかと頼み出ると、今度は意外にもあっさりと承諾されるのであった。
第129回 青い柿
空腹を思い出し、「どんじき」と看板に書かれているめし屋に入った小次郎。肴と飯を取って湯漬にして食べていると、西瓜売りの男が店に入って来た。同時に、前に腰かけていた二人の侍が立ち上がる。一人が西瓜売りの首を抓み上げると、もう一人が刀を鼻先へ突きつけ、何やら脅迫を始めるのであった。
第130回 露しとど
武蔵野の原に出て、伊織と共に住み心地の良さそうな土地を探し歩いていた武蔵。町の中も嫌いではなかったが、自分の事を悪く言う高札が辻々に立てられるので、さすがの武蔵も居心地の悪さを感じていた。やがて松の丘までやってくると、「ここに住もう」と伊織に伝え、今度は法典ケ原の時のように百姓をするのではなく、毎日坐禅を組み、伊織に太刀の稽古をつける約束をする。 -
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第123回 心形無業
刀研ぎ屋・耕介の家で、観音像の彫刻作りに精を出していた武蔵。店先に佐々木小次郎が訪ねてきた事を耕介から知らされるも、それに返事をしたかしないか自分自身では弁えがない程、武蔵は集中状態にあった。すると、何か物音を聞きつけたらしい耕介が部屋の前から去って行く。やがて外から騒ぎ声が聞こえ、誰かが不慮な災難にあったのではと武蔵は察した。いよいよ捨て置けなくなり、箱段を下りていくとそこには・・・・・・。
第124回 雀羅の門
北条新蔵が小次郎から返り討ちを浴び、耕介の家で療養中である事を小幡兵学所まで伝えに来た武蔵。彼を玄関で出迎えたのは勘兵衛景憲の一子、小幡余五郎という青年であった。武蔵は余五郎に、佐々木小次郎は並の実力の者では太刀打ちできる人物ではないので、今後は相手をしない方がよいと忠告する。それを聞いた余五郎の若い眸には、ありありと不快な色が燃えるのであった。
第125回 街の雑草
耕介の妻は、負傷している北条新蔵の世話で忙しそうにしていた。その様子を見た伊織は、庭で成っている梅の実を自分が代わりに漬け込んでくると言い、外へ出ていく。早速、実を落とそうと木の枝を揺すっていると、露地の陰でしゃがみ込んでいる妙な男の姿を目にした。伊織が梅の実をぶつけてやると、男は驚いて逃走していくのであった。
第126回 衆口
若侍たちに囲まれながら打ち寛いでいた忠利。毎夜、彼らと世間話を交わす事は、世情を知るうえで役立っていた。やがて、槍と太刀の利についての談義が始まると、太刀の利を説く若侍の一人が、佐々木小次郎の名を挙げる。忠利は、ふと、岩間角兵衛から推挙されている佐々木小次郎という人物を召抱えるか否かを決断する宿題を思い出し、同時に、宮本武蔵という人物が自然に思い出され、胸の中で思い比べるのであった。 -
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