空をゆく巨人
川内有緒(著)
/集英社学芸単行本
作品情報
第16回開高健ノンフィクション賞受賞作! 現代美術のスーパースター蔡國強と、いわきの“すごいおっちゃん”志賀忠重がアートで起こした奇跡! ふたりの30年に及ぶ類い稀なる友情と作品づくりを辿り、芸術が生み出した希望を描く感動作。 【目次】プロローグ/はじめに/第一章 生まれながらの商売人 いわき・一九五〇年/第二章 風水を信じる町に生まれて 泉州・一九五七年/第三章 空を飛んで、山小屋で暮らす サンフランシスコ・一九七六年/第四章 爆発する夢 泉州・一九七八年/第五章 ふたつの星が出会うとき 東京・一九八六年/第六章 時代の物語が始まった いわき・一九九三年/第七章 キノコ雲のある風景 ニューヨーク・一九九五年/第八章 最果ての地 レゾリュート・一九九七年/第九章 氷上の再会 レゾリュート・一九九七年/第十章 旅人たち いわき・二〇〇四年/第十一章 私は信じたい ニューヨーク・二〇〇八年/第十二章 怒りの桜 いわき・二〇一一年/第十三章 龍が駆ける美術館 いわき・二〇一二年/第十四章 夜桜 いわき・二〇一五年/第十五章 空をゆく巨人 いわき・二〇一六年/エピローグ いわきの庭 ニュージャージー・二〇一七年/主な参考文献/謝辞
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商品情報
- シリーズ
- 空をゆく巨人
- 著者
- 川内有緒
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社学芸単行本
- 書籍発売日
- 2018.11.26
- Reader Store発売日
- 2018.11.26
- ファイルサイズ
- 16.9MB
- ページ数
- 372ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (32件のレビュー)
-
【メモ】
葵は「インスタレーション」と呼ばれる現代美術のジャンルで活動を行っていた。室内や屋外に作品を設置(インストール)し、鑑賞者はその空間全体を五感で体感する。葵が打ち込んでいたのは、《外星人のた…めのプロジェクト》、または《プロジェクト・フォー・ET》と訳される作品シリーズだ。
その構想の一例が、万里の長城の終点となる嘉峪関から、長さ一〇キロの導火線を砂漠に敷設し、爆発の光で長城を延長させるというものだった。
葵のシリーズの一つである「原初火球」。原初火球とは、中国語で宇宙の始まりの「ビッグバン」を意味する。展覧会の副題に「The Project for Projects(プロジェクトのためのブロジェクト)」とあるのは、ここで展示したドローイングが、葵が将来実現したいと考えるプロジェクトの計画図だからだ。それは葵のイマジネーションの爆発そのものだった。そんな構想の一例が、蛇腹のスケッチブックにもあった、「ビッグフット(巨人の足跡)」正式名は《大脚印ービッグフット:外星人のためのプロジェクトNo.6》である。宇宙の足元である大空で火薬を爆発させ、その光で空を駆け抜けていく巨人の足(ビッグフット)を表現するものだ。巨人は、人間が戦争や諍いの結果としてつくった国境という壁を自由に越えていくシンボリックな存在として登場する。これは後の北京オリンピック開会式で実現することとなる。
葵が「外星人シリーズ」を開始した1989年というのは、世界の秩序や社会構造がハンマーで叩き壊されたような年だった。11月にはベルリンの壁が崩壊、12月にはソ連とアメリカが冷戦の終結を宣言し、東欧諸国が民主化を遂げた。葵一家は天安門事件の勃発により、帰るべき故郷を失った。しかも、中国のパスポートでは他国に渡航したり、移住したりすることも容易ではなかった。
何でこの世に国境なんてあるんだろう?葵はその理不尽さを思い知った。
「それで 『自分が異星人だったら、国境なんて無視して越えていくだろう』というアイデアが浮かんだのです」
きっと祭にとって芸術とは、人為的につくられた国境という壁をやすやすと越えていく巨人そのものなのだ。自由な世界に旅をしたい、空を飛びたい、宇宙を見たい、そう切望し続けてさた青年にとって、作品をつくるとは、広い世界へ飛びだしていける唯一の手段だった。その狂おしいまでの希求を作品に昇華させ、《ビッグフット》を生み出した。
「葵さんの作品は、その背景を詳しく説明されなくても、共感できるところが大きい。アメリカは、色々な国や文化の人がいて、もともとバラバラです。例えばアメリカ映画で派手なアクションを多用するのは、文化の違いを超えた理解を得やすいからです。色々な背景や文化を持つ人がいて、みんなバラバラで違っていても、葵さんの爆発作品は人間の根源的なところに響いてくるのです」
葵の作品を受け入れたのはアメリカだけではなかった。同じころ、南アフリカ、イタリア、オーストラリア、日本など、異なる地域や大陸で展示を実現。アイデアが尽きることはなかったし、体力も気力も十分だった。葵はかつて夢見た通り、ビッグフット(大きな足)で国境を跨ぐように世界を旅するようになった。
日本でも、海の上に火薬を並べて火を点け、地球の輪郭を描くというビッグプロジェクトに着手するのだが、資金面で行きづまる。そのために何をしたかというと、とにかく足を使って色んなものを貰いまくる作戦だ。「あれくれませんか?」「ボランティアでお願いします」という言葉のもと、いわきの人にアプローチをかける。葵と一緒にプロジェクトを進めていた志賀の人望もあって、多くの人たちの協力のもと、作品は見事に完成した。作品作りを通じていわきの人々の輪ができたのだ。
「作業員ではありません。彼らは作品の一部なのです」続きを読む投稿日:2022.02.15
蔡國強が、失敗も反対者も全て大切に思う前向きさに感銘を受けた。国際的に活躍している現代アートのアーティストってこういう強さをもっているものなのでしょうね。
いわきの志賀さんすごい!こんな人がいたことが…わかっただけでもこの本を読んだかいがありました。
川内有緒さんの文章は読みやすくていい!続きを読む投稿日:2023.08.10
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