ゴルギアス
プラトン(著)
,加来彰俊(訳)
/岩波文庫
この作品のレビュー
平均 4.3 (43件のレビュー)
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最強の敵、カルリクレス登場!(笑)というコピーがぴったりの対話篇。というか『ゴルギアス』という書名で本当にいいのか!(笑)
著名な弁論術家ゴルギアスのもとに「弁論術」とは何かという議論をふっかけにいっ…たソクラテス。法廷や政治の場において人々を説得する技術だというゴルギアスに対し、説得する以上、全ての事柄が「正」だと知っているのか、それを教えることが可能で実践している者がいるのかと矛盾を追及し、早々に戦意喪失に追い込む。
第2ラウンドは代わりに登場したゴルギアスの弟子ポロス。ソクラテスは「弁論術」は技術ではなく、料理と同様に経験であり、その本質は「善」ではなく「快」で民衆への迎合だと喝破する。対するポロスは「弁論術」を使えば人は欲しいままに権力を行使することも可能だと反論し、さらに不正を行っても栄達できた者は幸せだとするのに対し、ソクラテスは人に不正を行うよりも不正を受ける方が幸せだといってポロスを驚かせる。そして、不正を行えば「醜」=「悪」だという論理を、例によってソクラテス自身が設定した条件文による択一という詭弁調!で導いたソクラテスは、そのような方法論である「弁論術」も政治や法廷では「正」という真の目的のためには役に立たず、不正を行った償いの刑を受けるために用いろと迫り、ポロスをさらに驚かせる。
そしてメインイベントの第3ラウンドで最も白熱した議論が展開される。このカルリクレスの態度は、これまでソクラテスの詭弁気味な言い負かし勝利に抑圧され続けてきた「プラトン」読者にとって、喝采ものといってよい。(笑)いわく、ソクラテスよ、もっと大人になれ!ゴルギアスが遠慮していることに気がつかないのか!法律によって抑制されているが、自然状態となれば不正だろうが弱肉強食は当然だろ!哲学なんていうものは大人が行うものではない、これ以上、馬鹿話を続けていると、法廷に引きずりだされ死刑になることだってあり得るぞ!、と。
だが、ここからのソクラテスの言説は光っている。先の弁論術は知識ではなく迎合であり、国民を正義や徳を導かないとの観点から、かつてアテナイの偉大な政治家とされた人々も、最後は自分が指導した国民により排斥されたことから、「政治家」としては無能であり、自分ソクラテスこそが真の政治を行っているとする。そして、仮の宿である身体から離れた魂がよき審判を得て救われるには、正しい行いや不正も裁かれ済みの状態になっている必要があるとし、仮に自分が死刑になっても魂は救われるとした格調高い道徳観・死生観を展開するのである。迂闊にも感動しました。(笑)
後のソクラテスの末路を暗示するとともに、ソクラテスに仮託したプラトン自身の政治へのかかわり方への決意表明としてとても面白かった。
もう一度、『ソクラテスの弁明』を読み返したくなりました。
それにしても「犬に誓って」って一体何に誓っているんだ?(笑)続きを読む投稿日:2012.07.21
2023/10/23朝日カルチャーセンター横浜の講義終了
通して「弁論術」そして「ソフィスト」とは何か(『ソフィストとは誰か?』納富.2015.ちくま学芸文庫を併読)の考察が深められたように思う。
…
対話相手の3者(ゴルギアスとそれに師事する二人)で、三様の結末と前者を受けての対話が連続する様、様々なテーマが折り重なりながらも「弁論術」の真偽を見極めんとし、政治、哲学、生き方を問いかける様が印象に残った。
結論的部分では、政治に密接にかかわる弁論術が、哲学的に意義のあるもの(良い弁論術!?)として立ち現れてくる可能性(『ポリテイア』等へ引き継がれるテーマ)が語られいた。
その場合、弁論術が想定する聞き手=大衆・民衆(デモス)との関係は、弁論術そのものの性質を左右する本質的なものではないだろうか?
また一方で、ソクラテス的対話(「不知」の地点に立つソクラテスの問いかけ)の対象である市民一人一人も、同時に大衆・民衆(デモス)でもありうるのではないか、その対話を「ありそうな(エイコス)」言説を用いずに遂行は可能なのだろうか、という考えも浮かんできた。続きを読む投稿日:2023.10.24
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