教養
猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」
シリーズ内の平均評価:
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占領期日本にアメリカが刻印した暗号の謎を追う昭和史ミステリー。
電子著作集のラインナップとして加わった一作。収録作『ジミーの誕生日』(2009年11月文藝春秋刊、2011年12月『東条英機処刑の日』に改題して文春文庫)は、占領期の日本にアメリカが刻印した暗号の謎を追う昭和史のミステリー。
昭和23年12月23日零時1分30秒、A級戦犯7人の死刑執行が開始された。その日は皇太子明仁の15回目の誕生日。なぜ、この日に処刑が行われたのか? 著者は、ある子爵夫人の日記に書かれた「ジミーの誕生日の件、心配です」という謎めく一文を手がかりに、処刑日選定の謎に迫っていく。アメリカが刻印した暗号の意味、浮かび上がる対日占領政策の大きな構図。著者自身が『昭和16年夏の敗戦』(第8巻収録)の完結編と位置づける作品。 -
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少子高齢化問題解決のヒントは江戸末期のゼロ成長期にあった。
電子著作集で新たに加わった一作。収録作『二宮金次郎なぜ薪を背負っているのか?』(原題『ゼロ成長の富国論』2005年4月文藝春秋刊)、改題して2007年8月文春文庫)は、二宮尊徳の改革手法に範をとる少子高齢化社会への提言の書。
国家の財政破綻、個人の年金崩壊など、多くの問題が懸念される少子高齢化社会。この混乱の時代に、経済と社会システムを立て直すためのモデルとして、著者は江戸末期のゼロ成長期に活躍した二宮尊徳に着目する。勤勉・倹約の人ではなく、低成長時代の新たな金融モデルを構築した卓越したコンサルタントとして。「薪」はいかに換金され、どう「富」に変わるのか。200年前の改革者の手法を分析し、今に読み解き、日本変革のビジョンを提示する。 -
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『道路の権力』に続き公団民営化への5年にわたる戦いを描いた完結編。
電子著作集で加わったラインナップの一作。収録作『道路の決着』(2006年4月小学館刊、2008年7月文春文庫)は、第13巻収録の『道路の権力』に続き、道路公団民営化への5年にわたる戦いを描いた完結編。
小泉改革の象徴ともされた道路公団民営化は、2005年10月、高速道路会社発足の結実を見るが、そこに至るまでには壮絶な闘いがあった。族議員や官僚の猛烈な抵抗、民営化推進委員会の分裂、委員長の辞任など、紆余曲折を経ての法案成立。そして、民営化直前に官製談合で逮捕された公団副総裁。借金40億を残した公団の高コスト体質はなぜ蔓延したのか。戦後最大の改革は国民に何をもたらしたのか。改革の旗手として最後まで戦い続けた作家・猪瀬直樹がその全内幕を書き記す。 -
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特殊法人問題の象徴というべき道路公団の解体に自ら挑んだ全記録。
電子著作集で新たに加わるラインナップとして、『道路の権力 道路公団民営化の攻防一〇〇〇日』(2003年11月文藝春秋刊、2006年3月文春文庫)を収録。
第1巻収録の『日本国の研究』で、この国の病巣たる特殊法人の問題を世に知らしめた作家が、その象徴ともいうべき道路公団の解体に自ら挑んだ全記録。
小泉内閣誕生直後、行革断行評議会のメンバーとなった猪瀬は、2002年6月、小泉首相から道路関係四公団民営化推進委員会の委員に指名され、改革の先鋒に立たされる。さまざまな妨害や隠蔽工作と戦いながら、改革の道を開いた1000日にわたる激闘のドキュメント。誰が何を言い、どう動いたか、そのすべてをつまびらかに記す。 -
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数々の架空戦記はやがて現実の開戦と重なっていく――。異色の日本精神史。
収録作『黒船の世紀』(1993年6月小学館刊、1998年9月文春文庫、2011年6月中公文庫上下巻、2017年11月角川ソフィア文庫)は、近代日本を突き動かしてきた「ガイアツ」の本質に迫る、異色の日本精神史。黒船に始まる「ガイアツ」の歴史の中で日本人は何を考えてきたのか。
日露戦争後、太平洋を挟んだ日米両国間に対抗意識が芽生え、数々の「日米未来戦記」が誕生。戦力分析に基づく現実的なシミュレーションから、奮起を促す精神論、SF的発想の物語まで、その数500点以上。架空の戦記は、願望や世論を反映し、やがて現実の開戦と重なっていく。「日米未来戦記」の詳細な分析から、日本人の精神史、日米関係の裏面史を描き出した野心的巨編。
本書には巻末に文庫にはない、アレックス・カー氏との対話「この国を蝕む安心という病」(『プレジデント』2002年7月29日号初出)、青木彰氏との対話「司馬遼太郎を継ぐということ」(『本の窓』2002年11月号初出)、阿川弘之氏との対話「百五十年の視座」(『文芸ポスト』2002年秋号初出)を収録。また、猪瀬による関連記事「『外圧』の裏面史 日米未来戦記」(『読売新聞』1993年8月10日初出)、「なぜ『民営化』を主張するのか」(『東京新聞』8月6日初出)のほか、伊藤隆氏による解説「二十世紀を越えて続く『物語』」(文春文庫版)、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、野口武彦、高橋英夫、草野厚各氏による書評を収める。 -
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語っているのは、「あなたによく似た」ふつうの人々。
収録作『日本凡人伝』(1983年11月弓立社刊、1985年2月新潮文庫、2013年3月ちくま文庫)は、「日本の近代」を現場で作ってきた人たちの声を集めたインタビュー集。語っているのは、「あなたによく似た」ふつうの人々。
葬式中継アナウンサー、鉄道のダイヤを組む「スジ屋」、人の死期が臭いでわかってしまう化粧品会社の調香師・・・・・・有名でも何でもない人たちの、怒り、悲しみ、仕事への誇り。市井の人々の胸中にさりげなく入り込み、ときに本気で怒らせながら、巧みに本音を引き出した痛快無比のインタビュー。日本人の過去、現在を映し出す、名もなき人の声を聞く。
本書には巻末に文庫にはない、自伝的エッセイで構成された「猪瀬直樹略年譜」を収録。「猪瀬直樹」がいかにして出来上がったかをうかがわせる内容になっている。ほかに、「日本凡人伝」シリーズの解説として、関川夏央氏「『普通』であることの偉大さ」(新潮文庫版『日本凡人伝 二度目の仕事』1988年4月刊)、大岡玲氏「夢の新しい叙述法」(新潮文庫版『日本凡人伝 今をつかむ仕事』1993年12月刊)を収録。また、シリーズの雑誌連載開始時を振り返る佐山一郎氏のエッセイ「『日本凡人伝』の頃」、小島信夫氏との対話「ノンフィクションと文学のあいだ」(1996年3月河出書房新社刊 文庫版『ミカドの記号論』所収)も併録する。 -
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天皇の死を通して日本近代の成り立ちを追った歴史ミステリー。
独自の視点による天皇制考察の端緒となった猪瀬直樹の処女作『天皇の影法師』(1983年3月朝日新聞出版刊、1987年8月新潮文庫、2000年1月朝日文庫、2012年4月中公文庫)を収録。
大正15年12月15日未明、天皇崩御のその朝、新元号を「光文」とスクープした世紀の誤報事件の顛末は? 歴代天皇の柩を担いできた「八瀬童子」とは何者か? 最晩年の森鴎外が「元号考」に燃やした執念、そこから見えてくる「昭和」の意味と決定と経緯とは? 丹念なフィールドワークで貴重な文献と証言を掘り起こし、天皇の死を通して日本近代の成り立ちに迫った歴史ミステリー。イデオロギーとしての天皇制ではなく、現代史・民俗史の観点から天皇の本質に切り込んだ猪瀬直樹の原点。
本書には巻末に文庫にはない、久世光彦「鵺伝説」(新潮文庫版解説)、網野善彦「学恩に応えるための、二、三の感想」(朝日文庫版解説)、竹内整一「可視化の《ロゴパトス》」(『猪瀬直樹著作集』解説)を収録、それぞれの視点から作品を読み解く。また、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、高尾亮一(元皇居造営部長)、平井啓之、夏堀正元、黒田清各氏による書評も収録する。 -
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文部省唱歌という「新しき伝統」はいかにして生まれたのか。明治の「夢」を追う。
収録作『唱歌誕生』(1990年6月日本放送出版協会刊、1994年5月文春文庫、2013年5月中公文庫)は、明治期に志を抱いて上京した、あるいは大陸に渡った人々の絢爛たる群像の中に、唱歌「故郷」誕生のドラマを描き出した抒情的手法が光る作品。
長野県の小学校教師だった国文学者・高野辰之と、鳥取県の没落士族の家に生まれた作曲家・岡野貞一。この二人の偶然の出会いから、「故郷」をはじめ、「春がきた」「春の小川」「朧月夜」など多くの名曲が生み出されていった。文部省唱歌という「新しき伝統」はいかにして生まれたのか。人々を衝き動かした明治の「夢」とは何だったのか。二人の生涯をたどる旅を通して、明治という時代を浮き彫りにし、日本人の心に迫る一作。
本書には巻末に文庫にはない、猪瀬が郷里・長野の母校で行なった講演で、同郷の高野辰之にも触れた「国際化時代と日本人の生き方」(1996年10月12日「信州大学教育学部附属長野中学校五十周年記念講演」)のほか、本書の登場人物、大谷光瑞について語った「アジアという夢に取り憑かれた男」(『太陽』1991年6月号初出)を収録。作品解説としては、船曳建夫氏「ものを語る猪瀬直樹」(2002年刊『猪瀬直樹著作集第9巻』解説)と、高橋秀夫氏「作家的幸運と天分との融合」(文春文庫版解説)を収め、また、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、井上章一、河村湊、池田満寿夫、音楽評論家・細川周平、作曲家・柴田南雄の各氏による書評も収録する。 -
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「模擬内閣」の結論は「敗戦必至」。しかし、戦端は開かれた――。
収録作の原題は『昭和16年夏の敗戦』(1983年8月世界文化社刊、1986年8月文春文庫、2010年6月中公文庫)。日米開戦の知られざる事実を掘り起こし、「記録する意思」を貫徹した、猪瀬直樹36歳、初期の力作。
開戦直前の昭和16年夏、「内閣総力戦研究所」に軍部・官庁・民間から集められた、将来の指導者たる選りすぐりのエリート36人。平均年齢33歳の若き俊英は「模擬内閣」を組織し、シミュレーションを重ねて戦局の展開を予測する。結論は「敗戦必至」。しかし、戦端は開かれた――。埋もれていた記録と証言から明らかにされる開戦秘話。最高意思決定機関の空虚とは何か。官僚的意思決定とは。そこに成立する日本国とは。近代日本への問題意識が凝縮する一作。
本書には巻末に文庫にはない、初期著作における問題意識の萌芽と発展に関連して「特定財源の起源と田中角栄」(原題「田中角栄はなぜ不死鳥か?」『BIG MAN』1981年11月号初出)を収録。『昭和16年夏の敗戦』の成立事情にも触れる。また、園田英弘氏「『記録する意思』と『現実を直視する勇気』」、若田部昌澄氏「敗戦を繰り返さないために」、橋爪大三郎氏「現実から目をそむける意思決定の恐ろしさ」(いずれも2002年刊『猪瀬直樹著作集第8巻』のための書き下ろし)を収録、社会学、経済学の立場から本書を解説する。 -
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テレビの正体を探り、ネット社会の到来を予見した画期的メディア論。
「ミカド三部作」の完結編『欲望のメディア』(1990年11月小学館刊行、1994年7月新潮文庫、2013年3月小学館文庫)を収録。単行本が刊行された1990年以降のメディアの変遷を追った増補「インタラクティヴな展開へ」(『週刊文春』の連載「ニュースの考古学」より9編のコラムで構成)を加えた完全版。
テーマとなるのは、戦後における新たな「御真影」の役割を果たしてきたテレビというメディア。高柳健次郎による発明、正力松太郎による開局、力道山と「ご成婚」による茶の間への浸透、田中角栄による系列化の推進。ミカドの国を跋扈する映像メディアの正体を探り、ネット社会の到来を予見した画期的メディア論。
本書には巻末に文庫にはない、中村雄二郎氏との対話「『欲望のメディア』が示す日本人への警告」(『週刊ポスト』1990年10月26日号初出)を収録。また、大岡玲氏による作品解説「“庶民的”な『御真影』の未来」(2002年6月小学館刊『猪瀬直樹著作集第7巻』所収)、植田康夫氏による文庫版解説「“ミカド三部作”は新たな思想の書」(新潮文庫版)のほか、「誰が『知る権利』を矮小化させたか」(1996年7月13日「東京弁護士会夏季合同研究全体討議」での講演)、「『ラストニュース』、この番組が現実にあれば・・・・・・」(2001年8月小学館刊 文庫版『ラストニュース1』所収)など、猪瀬自身による関連原稿を収める。 -
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東京の都市開発を東急グループ五島慶太を軸に検証した近代日本論。
『ミカドの肖像』の続編として書かれ、「ミカド三部作」の一環をなす『土地の神話』(1988年11月小学館刊行、1993年5月新潮文庫、2013年2月小学館文庫)を収録。
「電車通勤」というごく当たり前のライフスタイルの背景には、東京の都市開発をめぐる理想と挫折の物語があった。ロンドン近郊の田園都市をモデルにした街づくり構想に取って代わったのは、鉄道敷設の野望に満ちた一大不動産事業。関東大震災後、東京という特異な街がいかにして出来上がっていったかを、東急グループ創始者・五島慶太を軸に検証する。現代に暮らす日本人の自画像を描く、『ミカドの肖像』に続く出色の近代日本論。
本書には巻末に文庫にはない、会田雄次氏との対話「『土地の神話』をめぐって」(『週刊ポスト』1988年1月5日/10日合併号初出)や、船曳建夫氏との対話「天皇のディスコース」(『週刊読書人』2001年9月28日号初出)を収録。また、泉麻人氏による文庫版解説「五島慶太のシム・シティー」(新潮文庫版)のほか、吉岡忍氏の書評「田園調布はなぜ“田園都市”になれなかったか」(『週刊文春』1989年2月2日号初出)などを収める。 -
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近代天皇制に織り込まれたさまざまな記号を丹念な取材と世界的視座で読み解く。
全く新しい視点から天皇制を捉え直し、第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した『ミカドの肖像』(1986年12月小学館刊行、1992年2月新潮文庫上下巻、2005年4月小学館文庫)を収録。
なぜ、皇族の土地にプリンスホテルが建っているのか? なぜ、オペレッタ「ミカド」は欧米で人気があるのか? なぜ、明治天皇の「御真影」は西洋人の風貌になったのか? いくつもの「?」の裏に隠された「近代日本」と「天皇」の不可視のシステム。近代天皇制に織り込まれたさまざまな記号を、丹念な取材と世界的視座に立つ壮大な考察で読み解いた、前代未聞の日本論。
本書には巻末に文庫にはない、山口昌男氏との対話「“視えない天皇制”を視る」(『週刊読書人』1987年1月5日初出)や、本田靖春氏との対話「『ミカドの肖像』余聞」(『潮』1987年4月号初出)を収録。また、高階秀爾氏による文庫版解説(新潮文庫版)のほか、天皇制をめぐるノンフィクション全般を俯瞰した柳田邦男氏の「天皇の空白部分」(1993年6月文藝春秋刊『同時代ノンフィクション選集第8巻所収)を収録する。 -
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