ナイルパーチの女子会
柚木麻子(著)
/文春文庫
作品情報
「心がえぐられすぎてつらい」
第二十八回山本周五郎賞&第三回高校生直木賞を受賞!
友情とは何かを描いた問題作。
商社で働く志村栄利子は愛読していた主婦ブロガーの丸尾翔子と出会い意気投合。
だが他人との距離感をうまくつかめない彼女をやがて翔子は拒否。
執着する栄利子は悩みを相談した同僚の男と寝たことが婚約者の派遣女子・高杉真織にばれ、とんでもない約束をさせられてしまう。
一方、翔子も実家に問題を抱え――。
「本作『ナイルパーチの女子会』は、柚木麻子さんがデビュー以来追い求めてきた主題の一つの到達点であり、その後の柚木さんが展開する文学への結節点でもある。」(重松清「解説」より)
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商品情報
- シリーズ
- ナイルパーチの女子会
- 著者
- 柚木麻子
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2018.02.09
- Reader Store発売日
- 2018.02.09
- ファイルサイズ
- 2.5MB
- ページ数
- 416ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (222件のレビュー)
-
○ 途中で読むのを何度もやめたいと思った。
○ 吐き気のするような気持ち悪さに襲われ、気が狂いそうになった。
○ こんな辛い思いをするくらいなら読書をやめたいと思った。
読書を始めて数ヶ月、主に女性…作家の小説ばかり200数十冊を読んできた私ですが、読書がこんなに辛いものだと感じる作品に出会うことになろうとは思いませんでした。嫌な気持ちになるということでは、私の場合、湊かなえさんの作品を20冊くらい読んできましたし、辻村深月さんの黒辻村と呼ばれる作品も読みました。しかし、ここまで気持ちの悪い思いをした読書は初めてでした。この作品はホラーでもなければ、人が死ぬわけでもありません。そこで描かれるのは、女性のドロドロとした心の闇です。『何故、こんなにも自分は他者を求めているのに、他者に拒絶されてしまうのか』という問いに狂おしく自問し続ける、この作品はそんな女性が狂気に取り憑かれていく壮絶な物語です。
『国内最大手の商社、中丸商事大手町本社ビルの十九階フロア半分を占領する、食品事業営業部は朝六時から七時の間は完全に無人だ』という早朝のオフィスで仕事を始めたのは入社8年目、今年で30歳になる志村栄利子。『年収一千万をとうに超した』栄利子は『この世の中で一番価値があるのは「時間」だ』と言い切り早朝の誰にも邪魔されない時間を大切にします。『コンビニ食を片手にメールをチェック』しているそんな時『女子高生みたいなもん、食ってるな、しむら。太るぞ』と声をかけるのは水産チームの同僚・杉下康行。『おはよう。あ、このパンね。ブログで紹介されていたの。やっと手に入れたんだ』と答える栄利子は『おひょうさんのダメ奥さん日記』というブログを見せます。『へー、奥さんブログ?独身の志村が読んで、なにが面白いんだ?』という康行に『等身大なところがいいじゃない。なんだか、可愛いなって思う。時間がたっぷりゆっくり流れているところも好き』と答える栄利子。ブログの中に回転寿司を食べる『おひょう』という名を見つけ、ひらめの代用として『えんがわ』として出される『おひょう』のことを話題にする康行は『今月からナイルパーチ担当だろ。こんなに回転寿司だのファミレスだのが好きな女なら、お前の取引した魚がいつか彼女の口に入るんじゃないか?』と代用魚、偽装魚として有名なナイルパーチのことを出してからかいます。『おひょうさんとはいい友達になれる気がする』と言う栄利子は『うちが近所っぽいんだよね』とブログの写真や内容から『おひょうさん』の住まいが自宅の近所であると説明します。『そういうことに詳しくなるのってちょっと嫌だな。お前、ストーカーみたいだろ』と警告する康行。『ほどほどにしなよ』と席に戻ります。
一方、『一応、今日会う相手はマスコミ人種なので、知っている中で一番洒落たカフェを指定した』と先に着いて席でブログを更新するのは丸尾翔子。現れた秀茗社の花井里子はブログの書籍化を勧めます。『編集者から声が掛かるなんてすごいよ』と夫に言われてきたもののその場でも決めきれなかった翔子。そんな花井が去った後のことでした。『あの、ひょっとして、あなた…、「おひょうさん」ですか? 私、あなたのブログの大ファンなんです!』と声をかけられた翔子。差し出された名刺には『志村栄利子』という名前がありました。そんな偶然が導いた運命的な出会いが二人の未来を大きく揺さぶっていきます。
『おひょうさんのダメ奥さん日記』というブログの書き手と読み手という立場から交流が始まった二人のそれからを描いていくこの作品。栄利子と翔子という二人の主人公視点が35章に渡ってどんどん切り替わっていきます。その冒頭は極めて平和そのもの。『「先手を打つ」のは商社マンにとって大切な資質のうちの一つ』と『少女の頃から、なにごとも先取りするのが好きだった』という栄利子、30歳で『年収一千万をとうに超した今』という商社での順風満帆な生活が描かれるその冒頭は、この先に展開するおぞましい物語を微塵も感じさせない明るさです。そんな明るさに影が差すのが、栄利子が翔子のブログに対する異常な執着心を見せる時からです。程なく交流を始めた栄利子と翔子ですが、約束もしていないある日、偶然にファミレスで遭遇します。あまりの偶然に驚きのあまり立ちすくむ翔子は『どうして、私がここに来るって分かったの』と聞きます。それに対して『だって、ほら。四時に更新したブログに、今夜はご主人が飲み会ってあったじゃない』とブログの内容を持ち出す栄利子。『ご主人が遅い夜は、だいたいファミレスでドリアとワインでしょ?8月20日も9月14日も26日もそう』と過去のブログの内容を持ち出し、『だから、今日も待ってればきっとここに来ると思ったの』と結論する栄利子!そんな怖すぎる展開に『ちょっと異常だって思わない?』と言う翔子は『それ…、ストーカーみたいだよ』と言い切ります。それに対して『違うって。私はただ、あなたとちゃんと話したいだけだってば』と返す栄利子。論点がずれていることに気付かない栄利子。しかし、その第一人称視点から読む限りは栄利子の考え自体が異常をきたしているような印象も受けません。でも一方で、翔子視点、そして一読者として読む感覚からは非常に怖い、これは怖い!怖すぎます!としか言えない恐ろしさです。まさしく、”そして、ストーカーが始まった”という起点を見せられているような印象しか受けません。そんな”怖い人”の第一人称視点が回ってくる、それを読まなければいけない読書。これがこの作品の怖さ、そして苦痛の根源にあるように感じました。そんな読者は後半になって、第一人称視点が切り替わっても恐怖からは逃れられない、誰にも感情移入などできない恐ろしい闇をひたすらに彷徨わせられる苦行の読書を強いられていきます。
日常生活において『人との距離を測りかねて空回りする』ということは多かれ少なかれ誰しも経験することだと思います。そんな中では『いつの間にか、自分がどう思うかより、他人にどう思われるかの方が重要になっていた』という言葉にドキッとさせられる自分を感じます。特に会社組織の中でいるとこの感覚が麻痺していくようにも思います。そして、この作品ではそんな他者との関係について主として女性同士の人間関係を徹底的に描いていきます。『男女と違って、明確な終わりを設定しにくいのが同性との関係なのだ』と書く柚木さん。そんな女性同士の関係を築くのが苦手な栄利子は『疎まれている。自分はずっと、思春期の頃からずっと、同性に疎まれてきた』と同性の友達ができないことを悩み続けてきました。『口惜しいけれど、どんなに賢かろうが美しかろうが、同性の友達が出来る人には出来る』とまで言いきる栄利子。そんな栄利子が翔子と知り合えたことを『普段の景色がほんの少しだけ違って見える。自分の新たな一面を発見できる。ささやかだけど、胸が躍る変化』と喜ぶのは必然。『たった一人でも女友達がいるだけで、己の色や形がくっきりとなぞられ、存在に自信が湧いてくる』という感覚。だからこそ『二度と翔子を離すまい、と思った』という強い思いが紙一重に付き纏います。そんな中で『自分がしていることが相手にどう映るか、振り返ってみるということがなくなる』という結果論、そして『何故、こんなにも自分は他者を求めているのに、他者に拒絶されてしまうのか』という強烈な心の悶えに苦しむ感覚。そして、その先に見えてくるストーカーへの道。このあたりは言いたいことは理解できるけれども理解したくないという相反する感情を強烈に刺激される、なかなかに狂おしいものを感じさせられました。
二人の女性が仲良く並ぶ柔らかい絵が表紙に描かれたこの作品。そして『お腹が減るとすぐに共食いをする』という凶暴さを隠し持った『ナイルパーチ』という肉食魚の名前を冠するこの作品。『似たもの同士で親しくしていても、飽和状態が続けば、やっぱり殺し合いになる』というそんな肉食魚にも例えられる恐ろしさを秘めた人の心の内側。
全くの他人事、作り話などと決して笑い飛ばせないその生々しい内容に、人が生きていくことの怖さと恐ろしさ、そして辛さを感じさせられた究極の一冊。こんな人の狂気に触れる作品は二度と読むものか!と決めた一冊。そして柚木さんの作品を完読するぞ!と決めた一冊でした。続きを読む投稿日:2020.08.17
真ん中位までは話が展開して面白かったんだけど
途中から全然話が動かなくなり堂々巡りの心理描写を読んでいるような印象でした
飛ばしつつ最後まで読みましたがなんて言うか
面白くなかったです
同じ女の人間関…係を扱った「森に眠る魚」の方が圧倒的に良かった
比べても仕方無いんだけど…続きを読む投稿日:2024.04.07
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