いのちの使いかた【新版】
日野原重明(著)
/小学館
作品情報
生涯現役、積極的に生きるための道しるべ。
2017年7月18日に105歳と9か月で亡くなられた著者の日野原重明先生。100歳を越えてなお、「積極的に生きる喜び」にあふれる生涯現役の奥義をつづった『いのちの使いかた』が新版として文庫化されました。
だれかの役に立つということは、自分という存在そのものが生かされるということ。いのちという時間の最上の使いかたを、日野原先生が数多の経験と出会いを通して学んできたことを余すことなく教えてくれます。
年齢にかかわらず前向きに生きるための姿勢を提唱し、次世代に平和といのちの大切さを伝えていくことを使命とされた日野原先生。その活動と心境には、チャレンジングに生きる人生への向き合い方と幸せ感を持って生きるための知恵にあふれています。
「人生は失敗ばかり、後悔ばかり、という人ほどいのちの使いかたがあるのです」「やろうと思うだけでは、やらないことと同じです。行動こそが勝負です」「予期せぬ災難に見舞われることが不幸なのではなく、そのときに、希望を見失ってしまうことが不幸なのです」――人生を変える希望のメッセージが心にしみわたり、生きる意味に気づかされる珠玉の一冊です。
※この作品は過去に単行本として配信されていた『いのちの使いかた』 の文庫版となります。
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この作品のレビュー
平均 4.5 (5件のレビュー)
-
日本の未来に希望を抱けなさそうな、不安がよぎる本を買ったのでその不安を中和したくてこちらの本を手に取りました。
日野原先生のことは、地下鉄サリン事件の際の話で多分知ったと思います。
地下鉄サリン事件…の時、自分たちで処理をし、乗客の犠牲を出さなかった駅の駅員、リン系の農薬を生産し続ける限り責任として赤字になっても解毒剤を生産し続けた住友化学、新幹線の各駅の停車のたびに在庫をかき集めたスズケン、の話と並んで胸が熱くなるエピソードです。
その人たちのような心意気を持って生きたいと密かに思っています。
利益だけを追求するのではなく道義的責任を大事にする。
この本を読んで、鬼滅の刃が頭に浮かびあがりました。
私がファン、という欲目があるからかもしれませんが、鬼滅の刃に描かれていることと、日野原さんが伝えてくださったことには共通するものがある気がします。
責務、使命という単語が出てくると、ただ単語繋がりというだけでなく煉獄さんや瑠火ママが思い出されましたし、P52からの章では鬼滅の最終巻、最後の方のコマに描かれていた「幸せの深さ」が呼び起こされました。
誰かの死を周囲が哀れ悲しんで惜しいだろうと思うのは違っているのではないか。
例え世間一般からして若く命が尽きたとしても、当の本人は命の花を咲かせ切って、本人の使命を尽くした、その受け止め方は心が一部分ですんなり理解できます。
ただ世の中では理不尽に命を奪われる被害もあるわけで。そこでそうやすやすと、その通りに納得できるわけもなく…とてもセンシティブなので私がどうこう言ったら、「じゃあお前は身内が殺されても文句言わないのか」となじられそう。
なぜそんな小さな言い争いのフィールドを生み出そうというのか。
前述した寿命の章の話と、理不尽な命の奪われは交差するところはあるかもしれないけれど後者は社会の責任もあると思って別物の考え方も必要ではないかと思う。
無差別殺人の事件が起きて、動機で仕事でうまくいかなかった/死刑になりたかったというのを見てニュースサイトの「勝手に死ねばいい」というようなどうしようもないコメントを見てつらい。
その段階を超えたい。そう思うのは『ケーキの切れない非行少年たち』を読んだからより強くそう思うのかもしれない。
そういった社会に絶望して他者に攻撃性が向いて実際に尊い命が奪われる事件が繰り返されるのをもう止めたい。
そういうとまた「じゃあお前は身内が殺されても(略」と言われそう不毛。
日野原先生の柔軟な思考に感服しました。
物忘れと思い込み、与えられた第二の人生、聖路加病院の運営、拡大などの展開。
持つことではなくあること。
偉人の格言や書物から得た知恵を今に繋げて思考し役立てているところ。
感銘を受けます。
自分の年齢がまだまだ若いと思えてきました。
それにこれから長く生きれば生きるほど新たに発見や気付きがあると思うと、知的好奇心が旺盛な私はワクワクしてきます。
ただ不安なのは、日野原先生のような表立って今の日本で思い浮かぶ道徳的な方がいないような気がしてしまっています。
私がネガティブなものに目がいきがちなせいもあるのか、いま日本で話題になるのは私利私欲に走る人、マナーも倫理観もへったくれもなく目立ったもん勝ちな人、そういった人たちが思い浮かびます。
でも、ハートフルなあとがきを書いてくださった方のように、日野原先生のエッセンスは受け継がれていて、この本を読んだ自分も日野原先生の恥じないよう少しでも行動していくことで何か変わっていくかな、世の中。
長く長くかかるかもしれない、長い目で見なくてはいけないかもしれない
諦めてはいけない。弧の一部分になり得るかもしれないですよね。うん。続きを読む投稿日:2021.11.02
聖路加国際病院名誉院長を勤め、105歳まで様々な方面で生涯現役を貫いた著者が、自身の生涯を振り返りながら、生きることについてどう考えているかを話している本。
若いときには年老いた心境が分からない…もので、百歳という超高齢の人の言葉はとても貴重だ。けれど本書を読むと、むしろ精神的な若々しさに驚く。新しいものを受け入れる柔軟さがあり、未来に対する強い希望を持ち続けている。したがって、「百歳はゴールではなく関所だよ」というのは著者の本心なのだ。そのバイタリティに、私は叱咤激励された気分がした。
意外にも、氏はたびたび病を体験している。十歳で急性腎炎、二十歳で患った結核は、当時特効薬がなく非常に危険な病だった。百歳まで生きるとは思ってもみなかったという。
著者の思想の核心には、他人のために生きるというテーマが常にある。百十歳までの予定を記した十年手帳にしても、そこに記されているのは単なる「予定」ではなくて、自分が果たすべき「使命」なのだと書いている。「いのち」とは、自分が使うことのできる与えられた時間のことだけれども、それは自分だけのものではない。人と繋がり、支え合い、ともに作り上げてゆくことに喜びがある。
このように書くと、単にポジティブな生き方ばかりを肯定するように見えてしまいがちだが、愛し愛されることと同じくらいに強調されるのが、苦しみに耐えることだ。つらい経験があればこそ、他者の苦しみにも敏感になる。つらいことを、大切な経験として受け入れるという言葉は、私自身に一つの転回をもたらした。
この本から読み取るものは、人によって違うだろう。私は強いエールを感じ取った。子どもは、若者は、お年寄りは、著者の言葉に何を感じるだろうか? いのちについて、生き方について、一度考えてみて頂きたい。多くの人に読まれてほしい本である。続きを読む投稿日:2021.05.24
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