火定
澤田瞳子(著)
/PHP研究所
作品情報
パンデミックによって浮かび上がる、人間の光と闇。これほどの絶望に、人は立ち向かえるのか。時は天平、若き官人である蜂田名代は、光明皇后の兄・藤原四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)によって設立された施薬院の仕事に嫌気が差していた。ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、“疫神”豌豆瘡(天然痘)の前兆だったのだ。病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち――。疫病の流行、政治・医療不信、偽神による詐欺・・・・・・絶望的な状況で露わになる人間の「業」を圧倒的筆力で描き切った歴史長編。
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この作品のレビュー
平均 4.1 (74件のレビュー)
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天平年間、平城京における裳瘡(天然痘)の流行を扱った医療時代小説である。天然痘はウイルスが原因だ。古代何度もパンデミックが起きている。現代は根絶しているが、我々世代は何れかの肩に昔のワクチンの痕(あと…)が必ず微かに残っている。しかし、古代は天然痘で生き残った者には一生痘痕面(あばたずら)がついて回った。
天平9年(737年)、京内の病人の収容・治療を行う公的施設、施薬院では、天然痘の発生から忽ち大パニックに陥る。いわゆる医療崩壊である。何しろまともな医師が1人しかいない。庶民は怪しげなまじない札を高価格で買い、フェクニュースに踊らされて外国人襲撃を始める。現代でも起こりそうな事を上手いこと時代小説に取り入れている。
澤田瞳子の小説は2冊目。2つとも、古代文献や最新考古学資料を読み込み、奈良の都の位置関係を我が庭のように描いているのには好感を持った。
その中で、施薬院での重労働に逃げ出そうとする若い看護人、立身出世の夢を陰謀で断たれた元医師、天然痘で生き残り病人を救うことに自分の存在意義を求める医師、世の中を悪弊を憎みながら、それを拡大させて都をパニックに陥れる元囚人、その他様々な人が入り乱れて、病の収束に向かってゆく。
ただ、最後までのめり込めなかった。上橋菜穂子「鹿の王 水底の橋」の厳密な医療描写を読んだばかりだったからか、同じウィルスパンデミックに晒されている今の私たちには違和感のある描写がある。確かに綱手医師は昔30年前の流行時に抗体免疫ができていると思う。諸男も一回できているだろう。しかし、その他の施薬院の若いスタッフは完全に「濃厚接触」をしている筈なのに、十数人全然感染していない。
未知の病に命を賭して治療に向かう医療スタッフを描くことで、人の生き方を問うストーリーには共感する。が、少し歌舞伎節のように、若いスタッフのはっとそれと気がつく過程がわざとすぎる気がする。これだと、直木賞は私はダメだな(←えらそー^_^;)。
なお、本書とは直接関係ないが、最近観た岡山県の『災害の記録』展で、天然痘ワクチン接種に貢献した緒方洪庵の弟子、難波医師の事を初めて知った。このような全国的には有名ではない医師の、命をかけた献身があって現在の医療体制があるし、今現在コロナ禍の下で同じ献身をしている医療従事者がいる事を想い、展示品説明を以下にそのまま転記する。
難波抱節著『散花新書』三冊
嘉永(1850年)3年
岡山藩の家老、日置氏の侍医で、御津郡金川で開業した難波りゅうげん(立と原+心)(号は抱節)は、緒方洪庵から牛痘苗を譲り受け、金川で3000名に種痘を行いました。しかし安政5年のコレラの大流行で治療にあたる中、みずからも感染して翌年に死去しました。『散花新書』は種痘について記した主著で、展示品は版行された原本からつくられた手写本です。続きを読む投稿日:2020.08.30
描写がグロテスクで、読み進めるのがきついと感じるほど。ただ、コロナ後の今なら、これは少しも大袈裟ではないのだと、残念ながら思えてしまう。
病気も悲惨だが、人の世界そのものが醜悪で、それでもそこで生きて…いく、生きていかなければならない、その姿が、きれいごとではなく描かれていた。この作品の舞台は奈良時代だが、いつの時代も人類はこうやって生きてきて、そして今もこれからも、どうにかこうにか生きのびていくのか、いけるのか、時代を超えた重い内容で、読み終わってもきつさが残った。最後に描かれた登場人物の強さは、救いにつながるのだろうか。続きを読む投稿日:2023.12.06
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