この作品のレビュー
平均 4.6 (28件のレビュー)
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女性が小説を書くためには、「年収500ポンドと自分ひとりの部屋」を持たねばならない、という主張をどう受け止めたらよいか、終始迷いながら読み終えました。
訳者の解説によれば、年収500ポンドはおよそ年収…500万円と読みかえて差し支えないらしい。
年収500万円相当の労働とは、どんな仕事であれかなりの時間を必要とするだろうし、時間を必要としないなら、何かしらの運の良さか才能に恵まれていなくてはならないのでは、と2023年の日本にいる私は、1929年のイギリスにいるウルフに言いたくなってしまう。(ちなみに、この作品の架空の語り手であるメアリーは、年収500ポンドを親戚の遺産から得ている設定になっている。)
が、頭のどこかで、ウルフは1つのわかりやすい提案として、これらの条件を挙げたのではないかな、とも思う。
それは、ウルフは何度も本書の中で
作品はそれのみで、孤独のなかで誕生するわけではなく、年月をかけて人々が一体となって考えた結果として登場する、とも述べているから。
そしてウルフは、様々な制約のなかで自由に生きられない女性たちが、不幸な境遇や怒りにとらわれず、精神を白熱させることを重視し、たとえ1つの時代の1人の作家がそれを完璧に成し遂げられなかったとしても、詩人の魂は不滅で、一人ひとりの女性のなかで蘇るときを待っているのだ、とも、繰り返し述べています。
つまり、これらの条件がそろわなければ女性は小説を書けない、ということではなく、社会の様々な制約を炙り出しながら、いかに作品のために精神を白熱させられるか、過去から渡されてきたバトンを受け取り未来へたくしていくかが大切なのである、というメッセージなのではないかな。
そして、広い意味では、小説の書き手だけではなく、一人ひとりの女性がそのバトンの受け手となるのだと思います。
古典を読んでいるとき、だいたいは望遠鏡を一生懸命のぞいて遠くのほうで燃えさかる星を美しいなあ、と眺めているような気分なのですが、本書はその惑星からヒュッとバトンを渡されたような衝撃を受けた一冊でした。続きを読む投稿日:2023.06.13
「女性が小説を書くには、お金と自分ひとりの部屋が必要である」というのが本書の命題であり、創作において前提となる物質的条件ならびに社会的条件の必要性を強調した点で重要な論考である。創作を単なる才能に還元…することはできず、物理的条件という前提が極めて重要であり、その不平等な分配を是正すべきというのは、もっともだとおもう。シェイクスピアに同じ才能の妹がいたら…というくだりはなんとも悲痛なイメージであり、歴史的なジェンダー格差を嘆かずにはいられない。
自分ひとりの部屋という象徴的な要素については、家族の接触による中断から創作活動が解放されるという消極的側面についていくらか論じられるにとどまる。欲を言うと、もう少しこの概念を深掘りし、「自分ひとりの部屋」が生み出す積極的な精神的作用についても語ってほしかった。
女性は男性の姿を拡大する鏡の役割を果たしてきたというような、フェミニズム論としても本書は重要だが、著者はあくまでも、本質的な男性性と女性性の調和が「自然」で望ましいものだと考える。つまり、本質主義的であり、ジェンダー規範が社会的に構築され外在的に賦課されるという意識は希薄である。この点については批判の余地がある。しかし、両性がその内面に男性性と女性性を有しており、その無礙な発露=両性具有性が創作に重要であるという指摘は、アニマ-アニムス論とも通づるところがある興味深い指摘である。続きを読む投稿日:2024.02.08
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