大惨事と情報隠蔽 原発事故、大規模リコールから金融崩壊まで
ドミトリ・チェルノフ(著)
,ディディエ・ソネット(著)
,橘明美(著)
,坂田雪子(著)
/草思社
作品情報
福島第一、トヨタ・リコール問題、メキシコ湾原油流出、サブプライム危機、エンロン事件・・・・・・
業種も時代も超える、大惨事の共通項が明らかに!
人はなぜ《危険》を隠したがるのか?
リスクの無視、非共有、あからさまな隠蔽を、人々にさせる組織の特徴とは?
それらはどのように、「想定外の大惨事」へと結びついていくのか?
原発事故や原油流出などの工業分野の大事故だけでなく、軍事的失敗や感染症大流行などの社会的事件、自動車の大規模リコールや医療製品不正製造などの消費者問題、さらには銀行破綻や金融崩壊などの経済危機まで、幅広い分野の事例を検証。それら大惨事に共通する人的要因=情報隠蔽の実態を明らかにし、その原因と対策を示す。
〔本書で扱う事例〕
ヴィオントダム災害(1963年、イタリア)
スリーマイル島原子力発電所事故(1979年、アメリカ)
ボーパール化学工場ガス漏れ事故(1984年、インド)
スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故(1986年、アメリカ)
チェルノブイリ原子力発電所事故(1986年、ソ連)
エクソン・ヴァルディーズ号原油流出事故(1989年、アメリカ)
ウファ鉄道事故(1989年、ソ連)
ラスパドスカヤ炭鉱爆発事故(2010年、ロシア)
福島第一原子力発電所事故(2011年、日本)
水俣病(1932-1968年、日本)
サバールのビル崩壊事故(2013年、バングラデシュ)
ディープウォーター・ホライズン油流出事故(2010年、アメリカ)
ベアリングス銀行の破綻(1995年、シンガポール・イギリス)
エンロン事件(2001年、アメリカ)
サブプライム住宅ローン危機(2007-2008年、アメリカ)
ドイツ軍侵攻に備えられなかったソ連赤軍(1941年、ソ連)
SARSの世界的流行(2003年、中国)
クルイムスク地区の洪水(2012年、ロシア)
豊胸用シリコンの不正製造(1993-2010年、フランス)
トヨタ大規模リコール問題(2000年代、アメリカ・日本)
フォルクスワーゲン・ディーゼル排出ガス不正(2000年代-2010年代、アメリカなど)
ソニーのバッテリー・リコール問題(2006年、世界規模)ほか
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商品情報
- 著者
- ドミトリ・チェルノフ, ディディエ・ソネット, 橘明美, 坂田雪子
- 出版社
- 草思社
- 書籍発売日
- 2017.08.01
- Reader Store発売日
- 2017.10.12
- ファイルサイズ
- 4.7MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
-
情報の隠蔽や歪曲によって大惨事が起きてしまった事例と、その原因の分析、将来大惨事に繋がりうる事例について述べている550ページの超大作。うち360ページをリスク情報の隠蔽が大惨事に繋がってしまった事例…(福島の原発事故を含む)の記載に費やしています。
冒頭のまえがきを読み始めるタイミングでは、読みづらそうな本だなぁ…と身構えましたが、いざ本編を読んでみると意外とスイスイ読み進めました。
面白いと感じたのはまず事例の豊富さ。22+その他の事例が工業(原発事故等)、金融(エンロン・サブプライム等)、軍事(独ソ戦等)、小売(VW偽装等)の分野別に並んでいて、ボリュームを含め濃淡があるものの、共通しているのは自分や組織を守ろうとして結果的に惨事を引き起こしてしまうもどかしさです。
良く大惨事のニュースを見ると、「なんでこんなバカなコトに…」と思ったりするのですが、こうも多くの事例に触れて、その背景を理解すると、たとえ自分がその場にいたとしても同じような事態に陥ってしまうのでは…と恐ろしい気分になります。
もうひとつ、本著の特徴たり得ているのが第一著者がロシア人で東側(古い表現か…)の事例や情報が豊富なことと、資本主義に対するシニカルな見方があることです。(とは言え、別に旧ソ連の体制も現ロシアの体制も誉めてるわけではなく)
自分からすると、当たり前すぎてあまり意識もしなかった資本主義について、悪い面をここまで炙り出されると意外な感もありました。
微妙な点としては、翻訳に関して1点。エンロンのくだりで「監査役」という翻訳があったのですが、アメリカに監査役制度なんてあったっけ?という感じです。Auditorであれば、Externalなものが通常なので監査法人のことかなと。
将来大惨事に繋がりうる事例について、シェールガスとサイバーテロは非常に関心深く読めました。特に前者はここまで酷い経緯があったとは…と暗澹たる気持ちになりました。
諸々の事例において、結構トップの意思的な方向性が悪く作用してしまっているケースも多く、サラリーマンたる自分にどこまでできるかは難しい部分もありますが、せめてできるところからは意識していきたい次第です。続きを読む投稿日:2017.10.15
大事故が起こると事故調査委員会が発足し、なぜ事故が起こったのかを系統立てて整理する。
事故調査委員会の報告書の中で、社内風土、情報伝達システムや情報の隠蔽などの有無を言及するわけであるが、大事故の裏…には必ずと言ってよいほど情報隠蔽や情報伝達システムの硬直化が挙げられる。
会社の上層部は現場のこのようなこと(マニュアル違反)をしているなんて知らなった。
なんてニュースでよく聞く逃げ口上です。
本書は、過去の大惨事(大事故)を調査し、何が原因で引き起こされたのかを特定することを目的とする。
多数の事故調査から大事故というのはどうやら情報が正しく伝わらない or 隠す(隠ぺい)ことが原因であることが多いようだ。
気を付けないといけないのは、このような事故調査では必ず後知恵バイアスがかかり、事前にもっとリスクを特定するべきだった、とか、設計に不備があったとか言われる(設計に不備があることがわかって設計しているのは問題であるが、当時の知見に基づき設計されているのにもかかわらず、その後に実は設計が良くなかったと言うのは簡単だが、それを言うとエンジニアリングはできなくなってしまいます)。
翻して、リスクの特定を行うのはどうやればよいのだろうか?完璧なリスク分析なんて存在しないのは明らかであろう。仮に完璧なリスク分析をして、それに対してすべてのリスクを許容可能なレベルまで低減させるには無限の時間と資金が必要となってしまうだろう。
ちなみにリスクを「許容可能なレベル」と認識するのも極めて困難である。
例えば、過去100年間の記録を調査し、それにさらに安全率を考慮して物を設計したとする。
リスク分析で仮に10000年に一度発生する事象が起こった場合に影響度が甚大で発生確率は極小であると結論された場合に、これは「許容可能なレベル」であろうか?
(値を変えて1000000年に一度でも同様の議論ができる)
これは、社会とのリスクコミュニュケーションという部門に発展していくのであるが、まだ解決を見ていない。
話は変わるが、リスク管理部の人間はこのような話ばっかり現場の人間にするので、リスク管理の人間は現場から嫌われるのだ笑
本書はいろいろな事故事例が記載されているので、企業のリスク関係に関わっている人はぜひ読んでほしい。続きを読む投稿日:2020.07.09
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