アメリカ帝国衰亡論・序説
中西輝政(著)
/幻冬舎単行本
作品情報
移民排斥、孤立主義、日本企業批判、新たなる戦争・・・・・・
トランプの絶叫は、大国の断末魔の悲鳴である。
今こそ日本はこの災いを転じて福となせ。
名著『大英帝国衰亡史』の著者が予言する
これが覇権大国「終わりの始まり」のシナリオだ。
アメリカが自滅するとき、日本はどうすれはいいのだろうか。
名著『大英帝国衰亡史』の著者が予言する、
トランプ・アメリカの「終わりの始まり」とは?
もくじ
プロローグ――覇権国・アメリカの「終わりの始まり」
【衰亡のシナリオ1】 北朝鮮危機に隠されたトランプ・アメリカの「悪あがき」
【衰亡のシナリオ2】 トランプで加速するアメリカ自滅の「三つの大罪」
【衰亡のシナリオ3】 トランプの孤立主義は建国の理念を裏切る
【衰亡のシナリオ4】 アメリカに潜む階層・差別の矛盾を露呈するトランプ
【衰亡のシナリオ5】 失敗した「アメリカ化」とアメリカ・ファーストの行方
【衰亡のシナリオ6】 “グレイト宣言”はもはやグレイトたり得ないアメリカの窮状
【衰亡のシナリオ7】 「パクス・トランピアーナ」の虚妄
【衰亡のシナリオ8】 中ロの圧力に屈し、英とともに「離脱」に向かう罠
エピローグ――アメリカ衰亡の時代に備え、日本の生きる道を考えておくこと
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商品情報
- シリーズ
- アメリカ帝国衰亡論・序説
- 著者
- 中西輝政
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎単行本
- 書籍発売日
- 2017.08.02
- Reader Store発売日
- 2017.08.02
- ファイルサイズ
- 1.9MB
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この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
-
長いことアメリカに住んでいると、アメリカに根付いている階層意識、階層差別というのが良く見えてくるそうである。自由の国アメリカ、一文無しからでもビックになれるアメリカンドリームというのはどうやらまやか…しのようだ。先日渡米したピースの綾部、大丈夫か? 才能うんぬんより、やっぱり日本人ということで見えない差別の壁に跳ね返されるんじゃないか…
過激な発言でアメリカファーストを繰り返すためオバマ前大統領とは違う路線だと思われているが、著者によれば、実はトランプはオバマ路線の誠実な継承者らしい。
オバマは世界の警察官をやめた。トランプはアメリカファーストを掲げている。表現は違えど、二人ともアメリカはもう期待されるような超大国としての役割を果たせませんよ、と言っている。
北朝鮮の問題にしろ、アメリカが直接かの地に乗り込んで戦争をしかけるなんてありえない。もし本当に北朝鮮が核でアメリカを攻撃できるなら、いままで核保有国に戦争を仕掛けたことがないアメリカが、北朝鮮に戦争を仕掛けるわけがない。また核による脅威がないなら、極東の危機なんて、所詮はアメリカとっては喫緊の課題なんかじゃないから、本腰なんて入れるわけがない。
トランプの発言はブラフばっかり。彼の過激な発言は、結局はディールなのだ。とりあえず過激な発言をして相手の出方を伺っている。
いろいろ言っているが、北朝鮮への武力攻撃なんて、トランプの頭にはないんじゃなかろうか。
日本にとっての一番の危機は北朝鮮ではなく、やっぱり中国。日本がいま一番警戒しなければいけないのは、実は米中接近らしい。
近い将来必ず中国がアメリカを抜いて超大国になる。領土的野心を隠そうともしない中国が尖閣を奪いに来ても、アメリカは抗議くらいはするだろうが、本気で日本の味方なんてしない。そんなことより中国にすり寄ろうとしている現状からみれば、まあまあ、ここは双方矛を収めて、現実的な話でもいたしましょう、くらいな感じで仲介役になろうとするかもしれない。
著者は日米安保体制で中国の脅威に対して対抗するのは危なっかしいので、いよいよ日本独自で超大国中国に対抗する手段を考えないといけない、と言っている、防衛費もいまの2倍くらいにしないといけないとかなんとか。
2倍にしたところで中国に対抗できるわけがないし、いまの防衛体制をアメリカ抜きで維持しようとしたら5倍から6倍の予算、つまり30兆か~40兆くらいかかるはずだから、著者の言い分には納得できない。そんな国力あるわけないし。しかし、結局は中国に呑み込まれるか、一党独裁の体制が崩壊して民主化するのを期待するしか今のところない。早晩、民主化への流れは必然だから、その流れを促す戦略を立てるべきと主張には、その通りだと思う。
でもそれって、諜報活動を強化しろってことでしょ? 特定機密保護法でもあんなに揉めたんだから、いまの日本には無理でしょ? 諜報活動に関してだって中国のほうが数段上でしょ?と様々な疑問が浮かぶ。国の舵取りは当たり前だが一筋縄にはいかない。
そんな状況を知ってみると、いまのアメリカ追従の政権も、アメリカに逃げられたくないから、袖にしがみついて引き留めているだけだ。アメリカがそれで翻意するならしばらくはいいが、10年20年を見越した政策ではないことは確かなようだ。
逆にアメリカを追い出せなんて言っている勢力は中国の脅威に対してあまりに盲目だ。自国民でさえ信じていない独裁政権の善意を信じる態度は危ういと思う。続きを読む投稿日:2017.10.12
2023年の今読むには少し遅いかなと思ったが、遡って答え合わせもできるので、正しかった主張の根拠を確認できるという二度美味しい読書。時代に流されぬ不変的な教養も学べる。
本著の主題は、アメリカが相対…的に弱体化しているという事。そもそも核を持つ国に軍事行動は取れないし、長距離砲による米軍への被害なども想定すれば、北朝鮮に対する強硬策は無い。ローマ帝国の衰亡要因の有力な説は、世界各地の辺境戦争に繰り返し介入したからというもの。アメリカも同様な状況にあり、手の引き方も難しい。そうこうしていると、中国によるパクスシニカが進む。
アメリカの建国の振り返りと歴代為政者によるキリスト教の関係性が特に興味深い。本当の意味でのアメリカ建国の先駆者は、1630年アメリカへ渡ったピューリタンであるジョン・ウィンスロップ。アメリカ孤立主義の象徴はウィンスロップが大西洋を渡るときに船の中で行った有名な丘の上の街と題する説法。「我々は世界の模範としてすべての人々の目が注がれるような丘の上の街を作らなければならない。我々はここを保って、道徳的な模範を世界に示し、外交や軍事に関わることでは彼らとは付き合わないようにすべきなのだ。しかし、こんなに立派な天地を作っていることを世界に示すべきなのである」この根本精神が、アメリカの高慢な思想につながると著者は言う。本当か?ウィンスロップの説法が浸透する具体的プロセスは不明でこじ付けにも感じるが、確かにアメリカはここからスタートする。
トランプはプロテスタント。レーガンもクリントンもプロテスタント。プロテスタントにも様々な教派があり、例えばアメリカでプロテスタントの最大の教派はバプティスト。階級は、国教会、長老派、組合派の順。更に下層で人口が最も多いのがバプティスト。黒人や改宗したアジア系の人々が多いのもバプティスト。ヒスパニックが多いカトリックやユダヤ教は、事実上バプティストより下の位置付けで、ほぼ同じ扱い。トランプは結婚相手に合わせ、娘をユダヤ教に改宗させていて、親ユダヤをアピールできるが、ハイソサイアティのイギリス国教会に擦り寄る様子はない。
出発点はピューリタンによる建国なのだから、キリスト教について深い理解が必要だという考えは、確かにそうだと思った。やや本著の本筋からはずれているが、そこに最も学びがあり、面白いと感じた箇所である。続きを読む投稿日:2023.01.08
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