静寂 ある殺人者の記録
トーマス・ラープ(著)
,酒寄進一(訳)
/東京創元社
作品情報
蝶の羽ばたき、彼方の梢のそよぎ、草むらを這うトカゲの気配。カールは、そのすべてが聞こえるほど鋭敏な聴覚を持って生まれた。あらゆる音は耳に突き刺さる騒音になり、赤ん坊のカールを苦しめる。息子の特異さに気づいた両親は、彼を地下室で育てることにした。やがて9歳になった彼に、決定的な変化が訪れる。母親の入水をきっかけに、彼は死という「静寂」こそが安らぎであると確信する。そして、自分の手で、誰かに死を贈ることもできるのだと。――この世界にとってあまりにも異質な存在になってしまった、純粋で奇妙な殺人者の生涯を描く研ぎ澄まされた傑作!
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商品情報
- シリーズ
- 静寂 ある殺人者の記録
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2017.06.16
- Reader Store発売日
- 2017.06.13
- ファイルサイズ
- 1.5MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (7件のレビュー)
-
連続殺人者の物語。
惹句から、いわゆる犯罪譚めいたものを予想していたら、これがまったく違っていた。
濃密な人間ドラマだった。
カールの行いは決して赦されるものではない(大量かつ残酷)。それなのに彼の行…いにはどこまでも静けさと厳かさが付きまとう。
前半の彷徨えるカールの行為も、後半の聖職者となった彼が手を下した行為の数々も、すべて一貫して同じ意味を持って行われていたのがなんとも複雑。
救いとは。生きるとは。幸福とは。
カールなりの愛の表現だったかと。
少女の存在が秀逸で、どこまでもカールを支える存在であり続けた描写が神々しい。まさに天使だった。
「人は変わる」
陳腐な慰めを奇妙に、静かに納得させてくれた物語。
カール自身の変わっていく姿がそれほどに感動的だった。
乾いた翻訳文とも馴染みのいい、透明で美しい傑作だと思う。続きを読む投稿日:2017.10.15
トーマスラープ 「静寂」
副題「ある殺人者の記録」とあるが、殺人者の告白や事件解決の物語ではない。殺人者を否定は していないことに 違和感はあるが、宗教的倫理感と切り離して 死を取り上げている。
…殺人犯 カールが「死とは何なのか」を 確信していく心理過程を経て、生への希望を描いている。タイトル「静寂」の意味は、母胎であり、愛の象徴であり、親から子へ、生を贈る場所 と捉えた。
最初読んだ時、誤訳かと勘違いしたが、エピグラフと序文の意味は 最後の章でスッキリする。2部 の「死とは何なのか」の内省は かなり面白かった。
カールにとっての静寂の場所
*暗闇や水の中〜何の不自由もない我が家
*地下室〜カールが選んだ避難場所
*修道院=死が具象化する場所→死を裁く場所ではない、救済の道、神への道→カールにとっての我が家
1部 確信「言葉は一度でも口にしてしまえば、もう取り返しがつかない。願いも、呪いも、祈りも」
2部 愛「ある者の成功が自分の行動でなく、他者の行動に依存する決定的局面をゲームと呼ぶ」
3部 希望「逃走は前進に等しい」
「異常なものも普通になり、規則違反が規則になり、正常な状態になる。順応するのは人間の人間らしからぬ最大の才能〜生き延びるコツであり、破滅の原因ともなる」
死とは
*死とは 新しく始まる日
*死は こっそり一緒に歩いているとも知らず、人間は いつまでも生きていられると思っている
*死は奪われることはない。死は 他人の人生と結ばれ、それに固執することから解放してくれる
*死は生からの出口というだけでない。人生の道そのもの
*殺人者=死をもたらす仲介者〜救いとなる不思議な贈り物を手にした使者
*大事なのは生きている者でなく、死んだ者の幸福だ
続きを読む投稿日:2019.09.20
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