滅びの風
栗本 薫(著)
/ハヤカワ文庫JA
作品情報
朝、自分のベッドで目をさましたとき、リーはその日がなぜ他の一日と違っているのか、理解できなかった。しかし、今日が特別な日であることは確かだった――魅力的な妻と愛しい息子を持つ男。その申し分のない生活にも、いつのまにか滅びの風がやってくるのだった――表題作を含む五篇を収録した連作短篇集。栗本薫が“死を見つめよ”のメッセージを核に、透徹した視点で、人類の歴史と滅亡について物語る問題作登場!
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商品情報
- シリーズ
- 滅びの風
- 著者
- 栗本 薫
- 出版社
- 早川書房
- 掲載誌・レーベル
- ハヤカワ文庫JA
- 書籍発売日
- 1993.02.28
- Reader Store発売日
- 2017.04.30
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
栗本薫がどこから来て,どこへ行こうとしていたかが分かる本。
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p114「ナイロビの郊外」
エジプトが鍵であることが分かる。
「ピラミッド・ミステリーを語る―ハイテクで知るピラミッド5,000年の謎 (レクチュア・ブックス)」を読んでおいてよかった。共著者の 吉村作治 が、自由な発想で妄想するように煽っている。
p131 「アガサクリスティ」
が出てくる。アガサクリスティはエジプトものなども執筆。
「地震」「チェルノブイリ」など滅びへの道を不安に思う栗本薫の心情は理解できた。その反動が「グインサーガ」に現れているという予測が付くようになった。
本書は、栗本薫を理解する鍵がいっぱい転がっている。
図書館で借りてきた本に書き込みがあった。
実現を現実と逆転させるような記述。
p176
「ありうべからざるくらいにもすばらしい創造と、私の手の生み出すあまりにも悲惨な実現とのギャップの間で,発狂寸前になるからだ。」
どう考えても実現でよく、現実だと合わない。
誰が誤植だと思ったのだろう。投稿日:2012.09.24
「私たちは、もう滅びているの」
栗本薫の生死観。「滅び」の詰まった短編集。個の死と、人間の滅亡。時の流れと、地球のまたたき。あっという間に終わるのではなく、気づけばじわじわと、AIDSや戦争やその他の…一つ一つは小さくても複雑な何かで、人類はゆっくりと「滅び」に向かって進み続けている。短編を読みその感覚の中に浸ると、今の生活が諦念を持って静かでもあり愛しくもあるように感じられます。
「巨象の道」と、赤ん坊のミイラを見た体験が著者が一番表現したかったものかなぁ。これはアレ(エイズ)で死に向かうまだ元気な若い夫婦の話だったけど、モチーフが当時話題になったばかりのエイズなだけで、2人の会話、本当の人生、人間の終焉、その辺はいつの時代にも通じる気がします。若干同じ話をくどくど聞かされてる気もするけど、その分染み透ってくる。
「それは、広大な草原を、たった一頭でのろのろとよこぎり、誰も知らぬ谷あいの死の場所をめざして、たゆみなく歩み去ってゆく、老いて死を待つばかりの巨象の、目のまえのもったもたしかな運命と不条理に対して、「生」に残されたさいごの尊厳と勇気そのものの象徴のようなすがただった。」
「でもとにかく、私たちは、そういうことをすべて、バラバラに、一つ一つの孤立した症候群としてしかとらえることができなかったんだわ。本当はそれは、ただ、「現代」という時代に、固有の滅びの相だというのにしかすぎなかったのに」続きを読む投稿日:2022.03.09
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