最後の資本主義
ロバート・B・ライシュ(著)
,雨宮寛(訳)
,今井章子(訳)
/東洋経済新報社
作品情報
ライシュの提案する、新しい資本主義の形。政府か市場か、の二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールを見直すことで、資本主義を壊すことなく、サステナブルな資本主義を構築できる。
市場メカニズムのルール自体が、勝者だけが勝ち続け、富が一方的に上方に移動するような仕組みになっている。ここにメスを入れずして、ゲーム終了時の所得再分配の率だけを議論しても意味がない。ルールそのものを、そして資本主義そのものを、一部の勝者のためだけに利するものではなく、大勢の人が生き残っていけるようなものにしていこう。
このままでは、人間の働くことの価値はますます小さくなり、稼ぐことのできるものは資本のみとなってしまう。技術が発達し、ロボットがどんなにすばらしい財・サービスを提供できても、それを買うことのできる層は消滅する。そしてロボットが代替するのは単純労働だけではないのだ。頭脳労働でさえも、ロボットにとって代わられる時代が来ている。
今こそ、新しいルールの下で資本主義を立て直さなければならない。そうでないと、資本主義はその土台部分から壊れてしまう。
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商品情報
- シリーズ
- 最後の資本主義
- 著者
- ロバート・B・ライシュ, 雨宮寛, 今井章子
- 出版社
- 東洋経済新報社
- 書籍発売日
- 2016.12.02
- Reader Store発売日
- 2016.12.03
- ファイルサイズ
- 2.6MB
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この作品のレビュー
平均 4.2 (11件のレビュー)
-
ゲームのルールを作れるだけの権力を保有している人々に富が集まっている。
自由市場は荒野に自生しているわけではない。ルールが市場を創造している。国家がルールを定める。
小さな政府と大きな政府、自由か規…制か、の選択は無意味。
どういうルールか、が問題。
市場支配力はどのくらいが適当か。正解はわからない。
自己破産のルールの個人と企業の違い。
自由とは、誰にとっての自由か。企業の自由か普通に働く人の自由か。
自然産物には特許は与えられないのが変更された。肺炎球菌ワクチン。製薬会社が自社製品を処方した医師に報酬を払うことは合法。
ミッキーマウス法=著作権法が伸びている。
ゲーブル会社の独占により、ネットの料金が高く、スピードが遅い。
種子を産まない大豆のため、種子会社に依存する農家が増えた。
ICTの独占。アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、アマゾン、アリババなど。
独占禁止法の適用に正解はない。政治的力を発揮させない視点。この視点を見失っている。経済力の横行によって暗に政治的独占が進行している。
新しい時代の倒産。大手航空会社のすべてが過去20年以内に一度は倒産している。大きすぎて潰せない。
学費ローンは解消できない。
執行の独占。
判事を選挙で選ぶようになった。
給料がその人の価値を決める、というのはトートロジー。CEOの高い報酬はストックオプションによる。
人件費を削るのが株価を上げる短期的な方法。その結果、ストックオプションで高い報酬を得る。売上を上げるよりも、短期的な株主へのリターンを選択する。
自社株買いなど、人件費が増大しないため、長期的な売り上げは上昇しない。
労働者の交渉力が弱まった。グローバル化による人件費の抑制。ドイツは労働組合のちからが強い。ウエルチは、業績が良いときでも人を入れ替える。
失業率が高いことも一因。
GMは労働組合があるが、ウォールマートにはない。
最低賃金を上げると失業が増える、のは言葉のあや。最低賃金は小売サービス業が多いので、雇用の減少はわずか。競争が激しいので物価の上昇もない。
所得格差と教育格差。
相続税の緩和で、働かないお金持ち増加。家族信託は最大90年であったのが無期限になった。王族信託によって、何世代も引き継げる。
私立大学は潤沢な寄付による基金がありその運用益は非課税。公立大学の基金はほとんどなく、補助金は削減されている。公立大学の学生が増えているため一人あたりの予算は少ない。
自由市場か政府か、というのは見せかけの選択。市場の設計、構築、機能させる選択肢が見えにくくなっている。
このままいくとどうなるか。
他人を大幅に裕福にするという理由で、自分にも少しは有利な話を断る1000ドルを二人で分割する実験。
相互不信感の中で、疑心暗鬼、不正行為の横行、などにより世の中はマイナスサムゲームになる。
草の根運動による政治力が減少した。人々は、労働組合、在郷軍人会のような組織にさく時間がない。
アメリカは二大政党以外の選択肢が生まれにくい仕組みになっている。
独占禁止法の活用。製薬会社、クレジットカード業界の寡占を防ぐ。グラススティーガル法を復活。フランチャイズ契約約款の改善、株価吊り上げのインサイダー取引の禁止、法の完全執行、罰金処罰による会社の違反の抑制。
従業員とCEOの報酬比率による法人税の増減。または労働者の給与を上げると法人税率が下がる仕組み。
会社は誰のものか。株主か、ステークホルダー全員か。
株主資本主義とステークホルダー資本主義との違い。合成の誤謬。
ロボットによる労働力の代替。ケインズの「余暇の使い方に悩むようになる」という予言が実現したら。
思考実験=すべてを作ることができる小さな箱があるとする(Ieverything=アラジンのランプの現代版)。ほしいものができても、失業していれば誰も買えない。
多数による大量生産と大量消費が、少数による無制限生産と、それを買える人だけの消費。
十分な拮抗勢力の台頭によって、バランスが保たれるはず。
知的財産の保護は、その1代限りでよい。
相続税の復活で、金持ちの固定化を防ぐ。
ベーシックインカムがあれば、芸術活動やボランティア活動に専念する人も増えるだろう。続きを読む投稿日:2017.05.22
ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言え…ば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシステムになってしまっているから、そのルールを修正することで資本主義を健全な形に戻そう、ということです。その意味では、訳者解説の中にもありましたが、本人は共産主義者でもアナーキストでもなく、資本主義礼賛者であって、今の「ゆがんだ」資本主義を「健全な」資本主義に戻す必要がある、というのが主眼になっています。
また彼の主張の中心にあるのが、特に米国を中心に起こっている「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という政府の介入度合いをベースにした対立はまやかしであって、資本主義のルールが「誰を利するようになっているか」という視点で対立軸を考えるべきという主張でしょう。「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という視点は、特に知識人の間では根強く、おそらくその根底には、ハイエクvs.ケインズの論争があります。それに対してライシュの視点は、むしろ資本家と労働者の対立にフォーカスをあてたマルクス色が強いと言えるのかもしれません。ただ厳密に言えば、ライシュ氏自身も本書で述べているように、現代の資本主義では「資本家になった経営者」と労働者の対立と言った方がよいとは思います(つまりストップオプションを大量に付与された経営者と従業員の対立)。
本書で説得力があると感じたのは、米国が過去にも同様の境地に陥った際に、民主主義が最後は機能して、多数のための資本主義、つまり資本主義が民主主義と折り合いをつけた事例をいくつか紹介していることです(19世紀のジャクソニアンの登場など)。それらを事例に挙げながら、ライシュ氏は米国の資本主義はまだ終わっていない、今は修正の時である、と力説されていてそこは希望が持てる点でした。その意味では邦題の「最後の資本主義」というのは少し誤ったニュアンスを読者に与える気がしました。このタイトルだけを見てしまうと、あたかもライシュ氏はアンチ資本主義者であって、資本主義の終焉は近いぞ!と歓喜の声を上げている論者かのような印象を与えてしまいます。ですから邦題は素直に「資本主義を救え」のようなものにした方が著者のメッセージが伝わるのではないでしょうか。続きを読む投稿日:2023.04.30
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