武満徹・音楽創造への旅
立花隆(著)
/文藝春秋
作品情報
世界的な名声を得た現代音楽の巨星、武満徹。
その生い立ち、青春、恋愛から創作の秘密まで、
「知の巨人」立花隆が迫った傑作ノンフィクション。
「ぼくはあの人にだったら、全部しゃべってしまおうと思っているんです」(武満徹)
6年間にわたって雑誌「文學界」に連載された伝説の超ロングインタビューが、
完結から18年のときを経て、没後20年目、ついに書籍化。
【おもな目次】
<第1部>
食糧基地で聞いたシャンソン/敗戦とヤミ屋と貸しピアノ/早坂文雄の棺
瀧口修造と「実験工房」/浅香夫人との結婚/結核と貧困の時代
黛敏郎からピアノを贈られる/ミュージック・コンクレートの夢/「ソン・カリグラフィ」と村上華岳
武満と安保闘争/ジョン・ケージ・ショック/六十年代の草月アートセンター
尺八奏者・横山勝也と琵琶奏者・鶴田錦史/海童道祖と「すき焼きの音」
調性の彼方へ/天才指揮者、小澤征爾/「ノヴェンバー・ステップス」初日 ほか
<第2部>
突然の訃報に接し/「時間の園丁」/ブラームスを再評価する/F#の神秘
追悼演奏会と「秋」/宮内庁楽部の高い評価/雅楽の影響/ぼくの音楽の作り方
名門オーケストラの反応/音に個性を取り戻せるか/クセナキスと、バリ島で
巨匠メシアン/日本的引き算のアプローチ/ジャスパー・ジョーンズのこと
いい演奏、悪い演奏 ほか
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商品情報
- シリーズ
- 武満徹・音楽創造への旅
- 著者
- 立花隆
- 出版社
- 文藝春秋
- 書籍発売日
- 2016.02.20
- Reader Store発売日
- 2016.08.26
- ファイルサイズ
- 13.9MB
- ページ数
- 784ページ
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この作品のレビュー
平均 4.8 (12件のレビュー)
-
新聞の書評欄を読み、買い求める。帯に没後二十年とある。もうそんなになるのか。
「僕はこんな本を読んできた」で読んだと記憶するが、著者は作曲した作品を楽譜に書き上げ、友人を驚かせたエピソードがあった。…音楽の才能という訳でなく、あくまで作曲の技法を習得しただけとあったが。そんな著者だからこそ、武満音楽の深くまで聞き進めていけたと思う。長期に至るインタビューの追加取材を重ね、家族や周囲への裏付け取材に当時の記録まで漁り、この稀有な作曲者の秘密に迫っている。
例えば、十二音技法は本やレコードやのCDのライナーノーツには全ての音を等価に扱う技法とある。素人にはさっぱり判らない。本書では、数学的にテクニカルな作曲技法と説明されている。他にも、セリーやクラスターについても同様。ジャズのリディア概念からの影響は著者だからこそ聞き出せた話と思う。本当に、立花さんのインタビュ時の反応の速さは驚かされる。
黒沢映画の作曲者、早坂文雄のこと、浪人姿の三船敏夫がノシノシ歩くシーンで流れる能天気な音楽。そして、シュールリアリストの瀧口修造からの影響。いずれも昔から不思議だった。読後は先人からの賦与が武満の肥やしになっていったことを知る。若き日の武満は風来坊。本来、生活実感から浮遊した感覚の人と知る。瀧口が若き芸術家の中心にあり、中でも武満とは父子のようであったことも。
武満が生きた時代の記録としても貴重な証言集と思う。
作曲者として世に知られた後も意外なエピソードは多い。ノベンバー・ステップスの初演のニューヨークフィルの演奏は必ずしも名演ではない。武満はオーケストラ団員一人一人に楽譜を書いている。レコードやCDでは判らないが、舞台の一部から音が広がっていったり、ある場所から別に音が流れたりするらしい。ああ、生で武満の作品を良い演奏で聴いたみたい。
プレイヤーにCDを置くといつものように厳しい音が流れるが、改めて確かに哀しいような美しい芯があることを聴き取る。そして作曲者はそれを時に意志を持って、断ち切っている。
個人的な話を少々。
高校生の頃にFMからテープに収録した「グリーン」。ロックの楽曲に間でもナガラ勉強の邪魔にならず、かえって頭が冴えるような気がした。ダラけてベッドで横になり聴いたりもしたが、不思議に耳に馴染んでいった。「オーケストラってこんな凄い音がするんだ」と思いつつ浸っていた。
大学からクラシックも聴くようになったが、最初は長調単調がはっきりしているロマン派は不自然に感じていた。
今はクラシックも愛聴している。現代音楽も聴くけど、武満徹とその他の現代音楽と個人的な括り方をしている。
この本が今後の武満研究の豊かな基礎となることを願う。そして、もっと武満作品をステージに掛けて欲しい。続きを読む投稿日:2016.05.12
1996年の逝去から24年、四半世紀が過ぎようとしているが、日本人作曲家として未だに武満徹を凌ぐ名声を獲得した者はいないように思える。残念ながら、クラシック音楽の社会的地位が当時よりも低下していること…を考えれば、これはつまり、彼を超える日本人作曲家が今後登場する可能性も低い、ということを示している。
本書は、立花隆が武満徹自身への膨大なインタビューと、関連するドキュメントの徹底的な読み込み、さらには武満徹の関係者へのインタビューも重ね合わせ、「文學界」での6年近い連載をベースに、武満徹の偉業を振り返るという一冊である。徹底的な取材量で知られる立花隆だけに、アウトプットとしての本書は781ページ。参考文献などはないから、この全てが本文であり(写真等のページはあるが10ページ程度に過ぎない)、武満徹という作曲家を知るのに、これより優れた本はないだろう。
本書を読んで最も印象的だったのは、後期の武満徹の作品における”フォーム”の重要性である。
西洋のクラシック音楽で最も利用される”フォーム”の一つはソナタ形式である。これは以下の3つの構造から成り立っている。
・提示部:2つの主題(片方が男性的であればもう片方は女性的、というように対立的な性格付けをされるケースが多い)が提示される
・展開部:主題の変奏、フーガ、転調などの作曲技法を元に、主題が発展していく
・再現部:再度、2つの主題が戻ってくる。そして、対立的な性格を持つ2つの主題は、弁証法的に解決され、クライマックスを迎える
武満徹はソナタ形式に代表される典型的な”フォーム”からの逸脱を志向した。しかし、弁証法という強いカタルシスをもたらす西洋音楽の”フォーム”に抵抗できる音楽世界を作るには、新たな”フォーム”を自ら作り出すしかない。それが後期武満徹の世界観となる。
この初期と後期の間には、もちろん、彼の名声を一気に広げた「ノヴェンヴァー・ステップス」の存在がある。ここでは琵琶と尺八という邦楽器の力を借りることで、新たな音楽世界を作り出すことに成功したわけだが、このような特定の楽器及び奏者を触媒とする手法には限界もある。その思索が様々な”フォーム”に基づき作曲される後期作品へとつながっていく。
例えば後期作品では、「海(SEA)」を題材として、E♭・E・Aの3音を”フォーム”として採用した「遠い呼び声の彼方へ!」などが挙げられる。そして、このような”フォーム”の存在は、リスナーにとってはどうでも良いことであり、ただ美しく強固な音楽世界を作りだすためのツールに過ぎない、という目線も重要であろう。
初期から後期までの作風の変遷を追いながら、武満徹が成し遂げた偉業を理解することができる。お勧めできる人は極めて限られるであろうが、武満徹を知らなかったとしても、音楽の創作に関わる人にはぜひ読んでほしいと切に思う。続きを読む投稿日:2020.04.19
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