イランの野望 浮上する「シーア派大国」
鵜塚健(著)
/集英社新書
作品情報
2015年7月、欧米諸国との核開発問題協議が劇的な「合意」に達した。これによって、イランは国際社会のキープレイヤーとして大きく浮上する。シーア派イスラム大国として中東地域の「勝ち組」となり、「反米」というスタンスを利用しながら諸外国としたたかに渡り合い、シリア情勢の「黒幕」として暗躍するイラン。特派員として現地に駐在し、政治状況から庶民のメンタリティにまで精通する著者が、世界情勢を読み解くポイントとなるこの国の「素顔」と「野望」について詳細にリポートする。【目次】はじめに/第1章 シーア派大国への野望/第2章 核開発問題協議――「合意」へのプロセス/第3章 うごめく諸外国の思惑/第4章 「反米」の表と裏/第5章 等身大のイラン社会/第6章 日本はイランとどうつき合うべきか/おわりに
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商品情報
- シリーズ
- イランの野望 浮上する「シーア派大国」
- 著者
- 鵜塚健
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2016.05.22
- Reader Store発売日
- 2016.07.15
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
最近大統領選挙があったイラン。
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穏健派の現職、ロウハニ大統領が57%の得票率で勝利。
保守強硬派のライシ師の得票率38%。(時事通信)
保守強硬派がよく集会でコールする「アメリカに死を!」の理由が理解できる一冊。
そりゃ言いたくもなるな!と読みながら思いました。
今度はアメリカ側のイランに関する本を読みたくなりますね。投稿日:2017.05.21
イランという国に馴染みのある日本人はそう多く無いと思うが、カスピ海とペルシャ湾を結ぶ一体に日本の4倍以上の国土、さらには9000万人近い人口を持つ中東最大規模の国だ。世界史好きな人はかつてこの地に存在…したペルシア帝国や、サファビー朝、ウマイヤ朝、アッバース朝などアフリカ北部、地中海沿岸までの広大な土地を支配する大帝国のイメージが強いだろう。現在のイランの場所も中東の石油を求める世界各国にとっても、イスラム圏東西の横断にも、交通の要所となっている。石油や天然ガスの埋蔵量はロシアすらも凌ぐほどで、日本人から見たイランのイメージは薄くても、世界各国から見たイランの重要性たるやかなりの存在感を示している。国際的な各国との関係性においては、反米の旗手であり度々アメリカからの爆撃に晒されている。またお隣イラクとの関係は、中高年世代にとっては毎日ニュースに流れたイラン・イラク戦争のイメージが強く、当然ながら良好な関係とは言えない。だがそれも過去の話であり、イラクのサダム・フセイン(スンナ派)がアメリカによって排除された後、国民の大半を占めるシーア派による政権樹立がシーア派の国イランとの関係性を改善させる。更には再びアメリカにより、イランに敵対的なタリバンが弱体化させられた事でイランは労せずして周囲の敵対勢力が無くなりつつある。これは敵対するはずのアメリカの中東戦略の失敗と言われるが結果的には正にその通りと言える。こうして長年対立するシーア派とスンナ派のイスラム世界は、後者のサウジアラビア中心の新米勢力に対して前者はイラン、イラク、シリア、レバノンの「シーア派の三日月地帯(孤)」としての存在感を高めていく。
日本との関係性では、イランに対して明確なイメージを持つ人は少ないと思うが、ダルビッシュ投手や歌手のMayJさんはイラン人の血筋でありスラリと高い鼻、ほりのはっきりした美しい顔立ちは、正に中東の香りを漂わせるような人の交流は存在する。ペルシャ時代にも外交関係は存在し、寺院などでペルシャの陶器を所蔵するケースも少なく無い。現代は日本はアメリカ寄りの外交政策を取らざるを得ないので、表立ってイランに近づく事が出来ず、代わりに中国や韓国がイランでの存在感を高めている様だ。
本書はこの様なイランの地に新聞社の特派員として派遣された筆者が、歴史や対外的なイランの姿を明らかにしていく内容であるが、馴染みの薄い日本人にとっての入門書として非常に読みやすい。何となく不安定な国のイメージから、将来最も有望視される国の一つとして、地政学的にも宗教的にも経済的にも興味の尽きない国であることを教えてくれる。
何よりこの地はかつての大帝国であり、世界の半分と言われた地域である。アメリカ、中国、日本、EUに並ぶイスラム世界の筆頭としては、親米派かつスンナ派のサウジアラビアが君臨するのか、反米派かつシーア派のイラン勢力が君臨するのか目が離せない。続きを読む投稿日:2023.10.28
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