死の淵を見た男
門田隆将(著)
/PHP研究所
作品情報
2011年3月11日、福島第一原発事故。暴走する原子炉。それは現場にいた人たちにとって、まさに「死の淵」だった。それは自らの「死の淵」だけではなく、故郷と日本という国の「死の淵」でもあった。このままでは故郷は壊滅し、日本は「三分割」される。使命感と郷土愛に貫かれて壮絶な闘いをつづけた男たちは、なにを思って電源が喪失された暗闇の原発内部へと突入しつづけたのか。また、政府の対応は・・・・・・。「死」を覚悟しなければならない極限の場面に表れる、人間の弱さと強さ。あの時、何が起き、何を思い、どう闘ったのか。原発事故の真相がついに明らかになる。菅直人、班目春樹、吉田昌郎をはじめとした東電関係者、自衛隊、地元の人間など、70名以上の証言をもとに記した、渾身のノンフィクション。
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商品情報
- シリーズ
- 死の淵を見た男
- 著者
- 門田隆将
- 出版社
- PHP研究所
- 書籍発売日
- 2012.12.01
- Reader Store発売日
- 2016.03.11
- ファイルサイズ
- 4.4MB
- ページ数
- 388ページ
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この作品のレビュー
平均 4.5 (182件のレビュー)
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吉田昌郎さんへの感謝を込めて。
主人公は吉田氏だけではなくいわゆるFUKUSHIMA50と言われる人たち。東電本社はともかく現場の人たちは限られた条件の中で出来ることはした。よくあの状況の中で自発的に必要な判断を出来たと思う。
一…例に挙げると福一を最悪の事故から救ったのは津波と全電源喪失直後に1号炉に冷却ラインを作り消防車の応援を呼んでいたことだった。事故直後の報道ではわからなかったが吉田所長の最悪の想定はチェルノブイリの10倍の規模の放射能漏れであり、班目氏はさらに福島第二と東海原発への連鎖まで想定していた。彼らは専門家でありその想定は重い。しかし、全電源喪失については防げる事故でもあったのが残念だ。
一号、三号が爆発した3月15日の明け方席に戻った吉田所長はゆらりと立ち上がり、机と椅子の間に胡座をかき目を閉じて座り込んだ。その時周囲の人間はプラントの「最期の時」を感じたのだが、吉田は腹を決めている。「私はあの時、自分と一緒に”死んでくれる”人間の顔を思い浮かべていたんです」「やっぱり、一緒に若い時からやってきた自分と同じような年嵩の連中の顔が、次々と浮かんで来てね。頭の中では、死なしたらかわいそうだ、と一方では思っているんですが、だけど、どうしようねぇよなと。ここまできたら、水を入れ続けるしかねぇんだから。最期はもう、(生きることを)諦めてもらうしかねぇのかなと、そんなことをずっと頭の中で考えていました」
その吉田にテレビ会議で管が言う。「事故の被害は甚大だ。このままでは日本国は滅亡だ。撤退などあり得ない! 命がけでやれ」「撤退したら、東電は百パーセントつぶれる。逃げてみたって逃げ切れないぞ!」
逃げる?誰に対して言ってるんだ。いったい誰が逃げると言うのか。(なに言ってんだ、こいつ)
厳しい批判を受けた中では班目氏はどうやら限られた情報の中で想定される事態を把握していたようだ。少なくとも官邸に対しての助言は間違ってはいない。しかし、どうしようもなく当事者意識が無く官邸が自分の言うことを理解しなければどうなるか薄々わかっていながら怒れる管に何も言えないでいた。伝わらなければ正しいことを言っても意味が無い。
最終段階では出来ることはないとわかっていても残ろうとした若者もいた。残ってくれると信じていたが退避したものもいた(彼らを責めるのは筋違いだが)。そして新潟から応援に来てそのまま残った協力業者もいた。一旦退避してから戻って来たものも多い。「ヤクザと原発」によれば協力業者の中には必ずしも使命感だけで残ったのではなく、その場のノリで残ったものもいる。それもこれも含めて彼らに救われたんだろうと思う。
個人的には今でも使える原発は使うべきだと思っています。例えば原発安全神話と温暖化は怖くないというのは対象が変わっただけで構造的には変わらないし、石炭は私の理解では原発以上に明らかに健康や安全に対してマイナスだし(例え高効率の発電が出来、PM2.5が解決できたとしても採掘事故の問題は残る)、単純に燃料費が上がるという経済的な損失も人によっては直接健康や安全に危害を及ぼす。それでも原発を無くしたいと言う素直な感覚は理解できるし、それを否定する気はない。いろんな問題をイノベーションが解決するかもしれないがまだ時間はかかるし、その上で何を選択するかということだろう。今後日本で新しい原発が稼働できるとは思えないので当面は天然ガスに頼り再生可能エネルギーのイノベーションを待つというのは一つの答えだと思う。その間のトレードオフを理解した上で原発を止めるというのはそれも一つのもっともな選択だ。続きを読む投稿日:2016.05.18
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当時の現場状況がよく分かリました。
筆者が指摘している慢心、日々の仕事でも教訓としたいと思いました。投稿日:2024.03.16
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