輪廻転生 〈私〉をつなぐ生まれ変わりの物語
竹倉史人(著)
/講談社現代新書
この作品のレビュー
平均 3.4 (8件のレビュー)
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著者は1976年生まれで、東大文学部を卒業後、予備校講師などを経て現在東工大大学院の博士課程に在籍しており、宗教人類学を専門としている。
本書のテーマは所謂「生まれ変わり(=輪廻転生)」であるが、輪廻…転生の真偽を検証しようとしたものではなく、時代や地域によって様々なバリエーションがある輪廻転生という概念の整理・考察を試みたものである。従って、輪廻転生は有るのか無いのかといった著者なりの考えや結論が示されているわけではない。
著者は「輪廻転生」を以下の3つの類型に整理している。
◆再生型・・・世界中の民族文化に見られ、歴史的にも古層にある再生観念。生まれ変わる先は自分の家族や親族に限定される“循環”的な概念で、「宗教信仰」というよりは「生活習俗」に近く、多くが祖霊祭礼や呪術の実践とともに保持されている。
◆輪廻型・・・古代インドで生まれた転生思想。再生型の地縁・血縁の原理よりも抽象性の高い「カルマの法則」に支配され、どこに生まれ変わるかわからない“流転”的な概念。理想郷に到達することができない人間が繰り返し地上世界に生まれ変わると説かれ、転生自体が望ましいことと考えられていない。
◆リインカネーション(reincarnation)型・・・19世紀半ばのフランスを席巻した心霊主義の渦中で生まれた。霊魂の“進歩”が強調され、来世を自分の意思で決定する、という自己決定主義の教義が説かれる。「近代版生まれ変わり思想」ともいえ、現代のスピリチュアリティ文化に大きな影響を及ぼしている。
更に、米ヴァージニア大学医学部の付属機関DOPSで行われている、前世の記憶を語る世界中の子どもたちの事例の研究が紹介され、最後に日本における輪廻転生の概念について、上記の3類型全ての因子が見られることと、近年の祖霊観念の減衰は今後も続き、本書で取り上げた輪廻転生という物語は、それを補う新たな神話のひとつとして考えられると結んでいる。
私は基本的にリアリストであるが、我々人間が輪廻転生になぜこれほどまでに関心があるのかを考えると、そうした死生観が、人々の人生の意味を増大させたり、病人が苛まれる死の不安を軽減したり、愛する人を失った遺族の悲しみを癒す力になるからなのであろう。とすると、我々にとって大事なことは、輪廻転生そのものの真偽を突き詰めることではなく、輪廻転生という考え方を自分なり消化し、自分の中に位置づけることと言えるのかもしれない。
(2015年9月了)続きを読む投稿日:2016.01.16
「輪廻転生」というタイトル買い。
世界各地の「転生」の思想に関して、①再生型(自然信仰、血族への生まれ変わり) ②輪廻型(インド、仏教) ③リインカーネーション(スピリティスム)に分類してその例に…関して解説がある。
自分は仏教(浄土真宗)の立場だが、②輪廻型の整理はとてもわかりやすかった。縁起、生まれ変わる主体はなにかの説明もなかなかいいなと感じたが、唯識やってる人がみたらどうなんだろうな。素人的にはいい表現だと感じた。
意外とキリスト教系の「転生」の受け止め方の変遷が面白かった。かつてのキリスト教が滅亡に向かった「後退」属性だったというのはびっくり。神に創造されたときが最高潮で後は下り坂・・・。そこからのスピ系での「霊性を高める」系の台頭。
個人的にはスピ系が苦手なのだがこれを読んで、スピ系にもそれなりの歴史というかベースになる者があるのだということを学んだ。『霊の書』というのを読んでみたいような読んでみたくないような。。。
前世の記憶を持った子供たちが世界に結構いるって話もあるのだが、そういうこともあるかもしれないなとは思うけれどだから自分の中に新たななにかは生まれないな。自分としては、子供が母親を選んでおなかの中に宿るなんていうのは耐えがたい話だ。これは誰得なのだ?もし虐待する親がいたとして、選んだ子の自己責任とかいうわけ?ちょっと理解出来ないところもある。でもこれは著者のせいではなくて、思想としてそういうものがあるという話。
最後の著者が自分の思いを「おわりに」で書かれている。自分は真宗の立場だからなにも言えないけど、この方がこういう気持ちで学問に向き合ってこられてこの本が出来たと言うことはすごいことだなと思う。人間って、すごいな。
「輪廻転生」をキーワードに、人類が生と死をどのように見てきたかという概論として非常に面白い。他で見ないジャンルだと思うので、宗教に興味のある方にはお薦め。難しく捉えないで面白く読める一冊。続きを読む投稿日:2022.01.15
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