この作品のレビュー
平均 4.4 (14件のレビュー)
-
断っておきたいが、本書を全面的にレビューはしない。例えば「超国家主義の論理と心理」を取り上げてしまったら、それこそ五千字以上の論文にならないといけないと個人的には思うからである。
先日5月3日の3年…ぶりのリアル憲法集会に於いて本書の『「現実」主義の陥穽』(1952「世界」5月号)を話題にしていた。久しぶりに再読したくなった。今年はサンフランシスコ体制(安保体制)70年。正に70年前、丸山眞男は(軍隊の復活に反対している丸山に対して)「現実的でない」という言葉をよく使われたらしい。
現在日本の閣僚のほとんどが参加している日本会議が、「ウクライナは現実を突きつけた」と言っているらしい。
丸山眞男は、「現実的ではない」「現実を直視しろ」という主張には3つの特徴がある、と言っている。
①現実=既成事実に屈服しろ、という事に他ならない。それは容易に「現実だから仕方ない」に転化する。
②問題は多面的なのに、一面だけを強調する。
今回でもNATOへの批判は多々ある。例えばギリシャはNATOの戦車の動きを2週間止めた。ベルラーシでは、ロシアの戦車を止めるため、鉄道の信号システムを遅らせた人々がいる(その人たちがどういう処分を受けたかは明らかではない)。そういうことは報道されない。
「現実たれ、というのはこうした矛盾錯雑した現実のどれを指しているのでしょうか。実はそういうとき、ひとはすでに現実のうちのある面を望ましいと考え、他の面を望ましくないと考える価値判断に立って「現実」の一面を選択しているのです」
③「現実的」と呼ぶのは、たいていは支配勢力。反対する人たちは、「観念的」「非現実的」とレッテルを貼られがちだ。「なんといっても昔から長いものに巻かれてきた私たちの国のような場合には、特に支配層的現実即ち現実一般と見做されやすい素地が多いと言えましょう」
そこから丸山は、1952年の情勢について滔々と述べて、再軍備すべきという主張がいかにリスクが多いかを明らかにする。
現代も、「現実を見よ」という勢力の次の言葉は、「だから改憲するべきだ」「だから日本も核兵器をシェアするべきだ」「敵基地攻撃能力を持つべきだ」という主張を次々と発するようになった。選挙を睨んでの発言であることは明らかである。
長いものに巻かれてはいけない。
続きを読む投稿日:2022.05.18
丸山真男の代表的な論考14遍である。
超国家主義の論理と心理
軍国支配者の精神形態
福沢諭吉の哲学
戦争責任論の盲点
日本の思想 等々
かつて文庫本や新書等で何度かトライしたが、その都度よくわか…らずそのままになっていたものが多い。その他初めての論文も含めて通読するなかで、丸山真男に対して今回はかなり理解が進み納得感があった。
先の大戦・15年戦争の総括を真剣かつ誠実に行なった政治学者という印象を新たにした。戦争責任の問題や軍部の無責任体制の解明など、日本の海外思潮受容の歴史特性まで遡って統治体制を政治思想や組織構造面から分析する思考の深さと明解さは秀逸なものを感じる。天皇の戦争責任の指摘には政治学者としての矜持や覚悟が滲んでいる、「退位以外になくうやむやな居座りこそ戦後の道義頽廃の第一号」。日本共産党の責任論はまだソ連社会主義への幻想に浸っていた時代でもあり、ファシズムへの批判の鋭さに比してまったく無内容であり、
日本の戦後リベラルに繋がる限界の萌芽をみる。
福沢諭吉の評価については、彼の「惑溺」に陥らない思惟方法と価値意識、多元的価値の知性による試行錯誤の過程が文明だとという主張、「世の中と交際を多くし議論を捏ねくりまわし進歩の先陣を切って世の中をデングリ返す」という哲学等が取り上げられ、日本の思想史における彼の価値を発掘し重要性を再確認した丸山の功績と意義はとりわけ大きいものがあると思う。
話は変わるが、丸山の超国家主義の「超」たる所以を思想信条や道徳・宗教の「私事」、倫理的実態としての価値内容をも国家主権の支配根拠においたという当時の国体をベースにした政治体制の分析は独伊と比較して十分納得できる。続きを読む投稿日:2023.02.11
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。