ミドリさんとカラクリ屋敷
鈴木遥(著)
/集英社文庫
作品情報
海の近くの湘南の街に、屋根から電信柱の突き出た家があった。その不思議な佇まいに惹かれて屋敷を訪れた著者は、90歳を超えたパワフルなミドリお婆さんと出会う。彼女は建築が大好きで、この家も自分で設計して建てたという。6世帯が共同で暮らす屋敷には、奇妙な仕掛けがいたるところに存在して――。カラクリ屋敷の秘密と波瀾万丈のミドリさんの生き様を軽快につづる、傑作ノンフィクション。
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- ミドリさんとカラクリ屋敷
- 著者
- 鈴木遥
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2015.05.25
- Reader Store発売日
- 2015.09.04
- ファイルサイズ
- 11.5MB
- ページ数
- 338ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
-
もうこのまま朝の連ドラにでもしていいんじゃないかと言う話だった。史上最年長100才のヒロイン
平塚市には電柱柱が突き出したお屋敷がある。木造二階建てで屋根は入母屋造り。曲がり屋と言うL字の形の作りになっていて立派な庭があり、そこここに色々な意匠が盛り込まれている。二階はみどり荘と言うなのアパー…トになっていてそのオーナーが主人公木村ミドリさん今年100才。最近ぶらり途中下車の旅に作者共々出たそうだ。
作者の鈴木遥さんが高校生の頃たまたま見つけ、大学進学で地元を離れる前についにこの屋敷の話を聞きたいと訪問したのが出会い、電信柱が飛び出した家が奇天烈なら、作ったばあちゃんはもっと強烈だった。「あんた、そんなに建築好きなら建築家になりなさい」と言われた鈴木さんは古い街並の研究を始め、3年後にまたミドリさんの話を聞きに戻る。
ミドリさんは北海道新潟村生まれ、両親はともに新潟県で生まれ子供の頃に新潟村の開拓に北海道に渡ったこの木村家と母方の武田家は成功を収め、ミドリさんの実家も曲がり屋のお屋敷だった。もともとの曲がり屋は厩をつなげ外に出ずに馬の世話ができるようにしたもので子供の頃背が高く電信柱と言うあだ名のついたミドリさんは手綱も着けずに馬に乗って遊ぶお転婆だった。大家族の木村家から養子に出され新聞配達の手伝いをしたら無くしてしまい、新聞が無くなったからもういいやと実家に戻ってしまう、わずか三日。親もおおらかでじゃあそうかとそのままもどったらしい。
ミドリさんの実家は原生林伐採が許可されていたらしく家には職人集団が住んでいた。材木だけただで渡して後は自分で作らせたそうで子供の頃から職人仕事を見たミドリさんは独学で建築を学んでいく。実家の仏間は開店扉になっており、押し入れはほかの部屋につながる。からくり屋敷と言うより忍者屋敷だが抜け道はいざという時のために作っておくもんらしい。近くに林業試験所ができそこを手伝い重宝されたことが木村家、武田家の発展の礎らしい。明治44年東宮殿下(大正天皇)がこの林業試験所に来ることになり父親が橋を造った。林行橋、そのままだ。滞在中の8月31日にミドリさんの兄が誕生し、次郎となるはずが東宮殿下が悠(ひろし)と命名したと次の日の新聞に出た。聞いてません!ということで戸籍上は悠だがみんな次郎と呼ぶ。学校の先生は悠と呼ぶが次郎は返事をしない。なかなかのもんだ。
昭和8年、ミドリさんは近所に住む本間吾市と結婚した。この旦那こそが後に電信柱の突き出た家を作った張本人で、なんとなく木村姓になったというあたりこちらもただもんではない。結婚した二人は札幌市月寒に引っ越ししリンゴ農園をはじめた。近くに陸軍歩兵第二十五連帯があり、戦争が始まると木村家は借り上げ官舎第一号になった。この家にも人が集まり、間借り人の佐藤三男さんは後に佐藤水産という会社を立ち上げいまでもミドリさんには毎年海鮮の詰め合わせが届く。木村家ではよくできたリンゴを詰めて税務署長に持っていく。そのひとりが後の総理池田勇人で農園の経営が思わしくなくなった時に池田のすすめでミドリさん夫婦は関西ペイント東京事業所の独身寮の住み込み管理人に募集した。朝9時集合に64組があつまりなかなか進まない。木村夫妻は勝手に抜け出しちゃんと昼飯を食ってきたがようやく夕方5時に木村夫婦に内定が出た。ちゃんと準備はしている。夫はヘリンボーンの背広、ミドリさんは一番上等な着物にキツネの襟巻き銀黒狐。写真を見ると今でもオシャレなばあちゃんなのだ。「派手すぎるのはダメ、地味でもダメ、野暮ったい服もダメ。髪は長からず短からず、長い髪で料理を作ると衛生上悪い」「怖じ気づいてはダメ、聞かれたら最後まで濁さずに返事する。勝負事では必ず目を見る。目をそらしたら負け・・・」
ミドリさんが平塚に家を買ったのもカンぺつながりで寮に魚をおろす人が土地を買わないかと持ちかけてきた。下調べは入念でござを引いて1日すわり先ず日当りを確認する。建築付きの夫婦は毎日作戦会議を練る。電信柱が家の中に入ったのは隣の家が土地を手放し増築した時、「電柱は家の中に入れたい」「外だとみっともない、家の中に入れれば収まりがいい」こういう夫にミドリさんも信者と化す。「電柱を中心として家を建てると、風が吹いても台風や地震が来ても倒れない丈夫な家ができる。これが一番丈夫なつくり。」そんな家は他にはない。実際には電信柱の間は壁にかこまれてるのでそこはどうなんだと聞いてみたいとこではある。L字の短い方に電信柱を挟んで増築し今度はこちらが長いL字になった。最初から人に貸すことを考えているのに作りは贅沢で各部屋の風呂にはタイル絵がふんだんに書かれていたりする。そしてこの家にもからくりは存在する。いざという時のために逃げ道は作っておくもんなんだそうだ。
続きを読む投稿日:2015.09.19
-
ミドリさんの人間的な魅力が凄すぎてとても面白かった。面白かったし読みやすかったが図などがないとわかりにくい事柄もたくさんあり、理解しきれないまま読み進めた(でも面白いからOK)ところが多く、消化不良で…はある。
ご近所野幌の開拓の頃のことも少し知ることができ、興味とワクワクが詰まった一冊。続きを読む投稿日:2022.07.20
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。