人はなぜ逃げおくれるのか――災害の心理学
広瀬弘忠(著)
/集英社新書
作品情報
地震や洪水、火災などの災害に遭遇した時、身をまもるために素早く行動できる人間は驚くほど少ない。現代人は安全に慣れてしまった結果、知らず知らずのうちに危険に対して鈍感になり、予期せぬ事態に対処できなくなっている。来るべき大地震のみならず、テロや未知の感染症など、新しい災害との遭遇も予想される今世紀。本書では災害時の人間心理に焦点をあて、危険な状況下でとるべき避難行動について詳述する。【目次】プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して/第1章 災害と人間/第2章 災害被害を左右するもの/第3章 危険の予知と災害被害の相関/第4章 「パニック」という神話/第5章 生きのびるための条件/第6章 災害現場で働く善意の力/第7章 復活への道筋/エピローグ 「天」と「人為」の狭間に生きる人間として
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 人はなぜ逃げおくれるのか――災害の心理学
- 著者
- 広瀬弘忠
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社新書
- 書籍発売日
- 2004.01.21
- Reader Store発売日
- 2015.09.04
- ファイルサイズ
- 1.9MB
- ページ数
- 240ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.7 (43件のレビュー)
-
(2012.06.28読了)(2012.06.22借入)
【東日本大震災関連・その95】
この本は、2011年の東日本大震災よりだいぶ前に書かれた本なので、地震や津波に特化して書かれた本ではありません…。そういう意味では、地震や津波について知りたかった人には、物足りない面があるかと思います。
そういう向きには、東日本大震災後に出版されたものの方がいいでしょう。
【目次】
プロローグ 古い「災害観」からの脱却を目指して
第1章 災害と人間
第2章 災害被害を左右するもの
第3章 危険の予知と災害被害の相関
第4章 「パニック」という神話
第5章 生きのびるための条件
第6章 災害現場で働く善意の力
第7章 復活への道筋
エピローグ 「天」と「人為」の狭間に生きる人間として
参考文献
●異常や危険に鈍感(11頁)
私たちの心は、予期せぬ異常や危険に対して、ある程度、鈍感にできているのだ。
ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内のものとして処理するようになっているのである。このような心のメカニズムを、〝正常性バイアス〟という。
災害心理学の観点からすると、人間はなかなか動こうとしない動物なのである。
●パニックにならない(14頁)
地震や火事に巻き込まれても、多くの人びとはパニックにならない。
異常行動としてのパニックは、多くの災害や事故ではあまり起こらないのである。
●津波の経験(77頁)
津波を経験したことのない地域を津波が襲った場合には、大きな悲劇が待っている。地震のあとには津波の危険があることをイメージできない人々は、避難しようとしない。
●危険の過小評価(84頁)
かりに危険を感じたからといって、直ちに避難行動を始めるわけではない。その次には、危険の大きさを評価する段階がくるのである。なかには危険を過大にとらえる人びともいるが、一般には、危険は、実際よりも過小に評価される傾向がある。そのために、多くの災害では、避難勧告や避難指示が出されても、それに従って避難する人びとは少ない。
●幼い子供と老人(89頁)
幼い子供がいる家族では、避難行動は早めに始まる傾向があり、老人や病人のいる家族では遅れる傾向がある。このため、後者への支援がより重要になる。
●パニックを恐れるあまり(130頁)
パニックを恐れるあまり、危険の大きさを緩和して伝えたため、事の重大さが伝わらず、そのために、多くの人びとの死傷を避けることができなかった。
●パニック発生の条件(140頁)
第一の条件は、緊迫した状況に置かれているという意識が、人びとの間に共有されていて、多くの人びとが、差し迫った脅威を感じている、ということである。
第二の条件は、危険をのがれる方法がある、と信じられることだ。
第三の条件は、脱出は可能だという思いはあるが、安全は、保障されていない、という強い不安感があることだ。
第四の条件は、人びとの間で相互のコミュニケーションが、正常には成り立たなくなってしまうことである。
●パニックを防ぐには(146頁)
パニックによる死傷者を出さないためには、すでに述べた四つの条件のうちの、いくつかが成り立たないようにすればよい。
●サバイバー(153頁)
生存者を、災害を生きのびたサバイバーととらえるか、被災者ととらえるかの違いは、あたかもグラスにビールが半分ほどになった時に、まだ半分あると考えるか、もう半分しかないと考えるかのちがいに似て、生存者の人生に、生き方の上で大きな差異を生み出す。
●老齢者ほどきつい(155頁)
災害は、被災した人々の生活環境を激変させるが、激変した環境に適応できる人々と、適応できない人々を、選別して分離する。阪神大震災を見ても、関連死を含めた死者全体の半数以上が60歳以上の人びとで、この震災は老人の災害という側面を持っている。震災後の経済的・社会的ストレスも老齢者ほど重いのである。
●生き残りの条件(171頁)
生きたいと強く希望することは、生き残りのための十分条件ではない。生きたいと強く願えば、必ず生き残れるというものではない。けれども、生きたいと欲し、決して諦めないことは、生き残りのための必要条件である。
●被害の不平等(191頁)
広島で被爆して生き残った人々の中に、「もう一度ピカが落ちて、みなが同じようになればよい……」と語った人がいる。
●関東大震災後(200頁)
1923年の関東大震災以前の東京は、政治や文化の中心ではあったが、経済や商業に関しては、大阪の実力は、東京とほぼ肩を並べていたのである。しかし、震災復興の過程で、東京の都市機能が格段に整備されたために、復興後の東京は、文字通り日本における政治・経済・文化の中枢として発展することになった。
(2012年7月4日・記)続きを読む投稿日:2012.07.04
タイトルは「なぜ逃げおくれるのか」であるが、その原因について洞察しているというよりは、災害全般について、筆者の考えが整理されている。
パニックとはギリシャ神話に出てくる半獣神「パン」が由来だというのは…初耳であったし、災害ではパニックは簡単に起こらないということも主張している。
また、日本では災害で生き残った人達を「被災者」と呼ぶが、実は「サバイバー」なのだという見方は斬新である。続きを読む投稿日:2022.06.21
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。