完本 皇居前広場
原 武史(著)
/文春学藝ライブラリー
作品情報
空間政治学の鮮やかな達成明治時代にできた皇居前広場は天皇、左翼勢力、占領軍によって、それぞれの目的のために使われた。定点観測で見えてくる日本の近代。
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商品情報
- シリーズ
- 完本 皇居前広場
- 著者
- 原 武史
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春学藝ライブラリー
- 書籍発売日
- 2014.10.20
- Reader Store発売日
- 2015.07.17
- ファイルサイズ
- 47.1MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (2件のレビュー)
-
【空間政治学の鮮やかな達成】明治時代にできた皇居前広場は天皇、左翼勢力、占領軍によって、それぞれの目的のために使われた。定点観測で見えてくる日本の近代。
投稿日:2014.10.17
集会用広場として世界最大を誇るのは中国の天安門広場。面積は
約44㎡。その天安門広場を上回るのが日本の皇居前広場だ。芝生
部分を含めての総面積は46万5千㎡になる。
時折、皇居へ行くことがある…。それは新年の一般参賀であったり、
天皇誕生日の一般参賀だ。天皇陛下をはじめとした皇族方のお姿
を一目見ようと、人出は多い。それでも一定の静けさを保って
広場はそこに存在している。
現在でこそ、皇居前広場が活用されることは数えるほどしかない。
しかし、昭和初期から戦後しばらくの間、そこは人々が集う場所
であった。
本書は明治期から平成までの宮城前広場/皇居前広場の変遷を5つの
時期に分けて考察している。
東京は一時の居場所と捉えていたであろう明治天皇と、著者曰く
東京があまりお好きでなかった大正天皇の在位時代はあまり活用
されなかった広場が一変するのは、昭和に入ってかららしい。
「無用の長物」と見なされていた広々とした空間は、昭和天皇の下、
天皇制の儀礼空間となる。
戦争へ向かう時代、昭和天皇が白馬「白雪」に跨って、二重橋(奥の
鉄橋の方)にお姿を見せれば、そりゃ国民は歓呼の声を上げるだろうな。
「血のメーデー」事件は知っていたが、敗戦後には占領軍のパレード
や復活祭の為に即席の教会が作られていたのは知らなかった。
明治期からの皇居前広場の定点観測も勉強になったが、「血のメーデー」
事件の警察報告と目撃者の証言の食い違いが興味深かった。
警察側の資料ではメーデー参加者側から暴動が起きたとされているのに、
作家・梅崎春生が書き残したものでは、デモ隊をすんなりと広場に通し
た警官隊だったが、その後の暴動のきっかけは警官隊が先に警棒を振り
かざしてデモ隊を襲撃したかららしい。
これって、もしかして警察側はわざと広い空間である皇居前広場へ
デモ隊を誘導したのではないだろうか。この事件を「左翼はどんな
乱暴をするかもしれない」との暴力的破壊活動の見本とし、同年の
7月に「破壊活動防止法」を施行しているのだから…と言うのは
うがち過ぎか。でも、やりかねないと思うんだ。日本の警察組織
なら。
皇居前広場は一応「国民公園」なのだが、ここが普段から集会等に
活用されることはほぼない。届け出が必要なこともあるが、申請
しても許可が出ることがないんだろうな。
天皇陛下のお膝元で政治集会なんてもってのほか…と思われている
だろうし。
尚、皇居前広場の地下には迷路のような東京の地下鉄も通っていない
のだそうだ。次に皇居前広場が賑わうのは平成の代替わりで現皇太子
殿下の即位のパレードの時かな。
東京のど真ん中には、国民公園という名の禁忌の空間がある。続きを読む投稿日:2018.04.23
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