この作品のレビュー
平均 3.9 (36件のレビュー)
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しぶとく続く(笑)
「10代の頃に読んだ作家を再読しよう」企画の第四弾。
山田詠美は村上春樹や村上龍と並んで
学生時代からよく読んでた作家だけど、
中でもいちばん好きで
思春期に自分っていうものを作…る上で最も影響を受けた作品が
「ぼくは勉強ができない」でした。
新装文庫本の綿矢りさの秀逸な解説の言葉、
「私にとって本作は美学という科目の教科書で、ただ勉強するだけでは得られない、個人がどう世の中を粋に生きてゆくか決めるスタンスを教えてくれた。血肉となって現在でも身体の中で息づいている」
がこれ以上ないほど僕の思いを言い得ていて
「ああ~、僕だけやなく、みんなコレを読んで大人になったんやなぁ~」と分かって感慨深かった(笑)
今回再読してあらためて思ったけど、
僕に学校では決して教えてくれない「生き方」を教えてくれた17歳の時田秀美くんはフィリップ・マーロウ同様に
今でも自分にとってのヒーローだった。
しかし、なぜ四半世紀も前の作品が
これほどの影響力と支持を集めてきたのか。
まぁ読めば分かると思うんやけど、なんと言っても17歳の主人公・時田秀美くんの凛としたカッコ良さに尽きる。
カッコ良いと言っても喧嘩が強いワケでも、スポーツ万能なワケでも、飛び抜けてイケメンなワケでもなくて(笑)、
(秀美くんは人気者ではあるが、性格はむしろ穏やかでヘラヘラして、威厳がないし貧乏人であります笑)
偏見に支えられた大人たちや
媚びへつらったり、間違った美意識で動いてるクラスメートたちとの戦い方、向き合い方、苦悩する姿が、とにかく男前なのです(笑)
(僕が学生時代に初読みした秀美くんの感想は、なんと色気のある男だろ~だった)
母子家庭は不幸なのか。
避妊具を持つことは不純なのか。
優しそうに見える子がクラス委員になってはいけないのか。
(そこにあるのは勉強ができなきゃ委員長の資格がないという大人たちが決めた暗黙の了解だ)
大人たちが植え付ける偏った価値観に一人立ち向かい、
大人たちが作った暗黙の了解や常識に異議を申し立てる
詩人のようにロマンチックな少年。
父親の顔すら知らない秀美くんを
「一度言ったことは簡単に引き下がらないカッコいい男になるのよ」と言って育て上げてきたのは母親であり、おじいちゃんの愛である。
クラスのみんなに向かって「僕は勉強ができない」と平然と言ってのけ、
「恋は勉強より楽しいのだ」と先生やガリベンくんに
この世の真理を提示してみせる心意気と気概。
自分を過大評価することなく、
人生で大切なのは決して学校の勉強ではないのだと言い切る颯爽とした姿は、
本当のカッコ良さや男らしさを求め真実を模索していた青臭い学生の僕には本当に衝撃的だった。
そして年上の女性である桃子さんとの恋愛の中で
人は恋人とでなくても寝てしまうことがあると知ったり、
人生を構成しているのは殆どが無駄と呼ばれる領域で
恋愛には不健全で淫らな精神が必要だということ、
事実は事実で定義とは違うということ、
自分の中にある嫉妬の感情や憎しみの感情の存在に気づいたり、
書物が人間にもたらす効用や喪失感を初めて知ったり、
秀美くんが物語の中で人生の勉強をこなしていくと同時に
読む側の僕らも見過ごしていた大事なことにふと気付かされていく。
(この小説が凄いのは、今読んでもストンと腑に落ちたり、目から鱗の瞬間が沢山得られること)
「大学を出ないとろくな人間になれない」という大人はいても
「いい顔の人間になりなさい」と諭す大人の少ない事実。
(秀美くんはまさにそう言われて育ったのだ)
カッコいい生き方とはなんぞや
など
この小説には本当にいろんなことを教えてもらった。
彼氏と自由恋愛する秀美くんの母親。
近所のおばあちゃんに恋をしては秀美くんのムースで髪を整え、秀美くんのお気に入りの服を勝手に拝借するお茶目なおじいちゃん。
バーで働く秀美くんの恋人の桃子さん。
可愛く見えるための努力を惜しまない幼なじみの真理。
美しく病弱な副委員長の黒川礼子。
すべてを計算し尽くす、媚びた美少女の山野舞子。
先生と生徒ではなく、男同士として接してくれるサッカー部の顧問の桜井先生。
魅力的な登場人物がひしめき、
難しいことは抜きにして
純粋に青春ストーリーとして楽しめるのがまた素晴らしい。
歯切れのいいリズミカルな文体。
メッセージ性とユーモアの絶妙なバランス。
懐かしいホームコメディの香り。
青春と呼ばれる季節に生きる者の苦悩と喜びを瑞々しい感性で描いた
今でもまったく色褪せない名作です。
是非とも若いうちに読んで欲しいなぁ~続きを読む投稿日:2015.06.11
ぼくは勉強ができない…、暗いお話?って思ったんだけど、端的に言うと自分の偏見を他人に押し付けるな!みたいなね、お話だった。
ズキューンってきたよ、こういうの好き…(*☻-☻*)
確かに、そういう傾向が…度々あると思うんだよね。例えばさ…、思いつきませんでした。
続きを読む投稿日:2024.03.13
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