にんじん
ジュール・ルナール(著)
,窪田般彌(訳)
/角川文庫
作品情報
「にんじん」――ルピック夫人は末の男の子をそう呼ぶ。髪の毛は赤く、顔はそばかすだらけだから。にんじんは、部屋の片隅にうずくまりながら、家族のために役立つ機会を待ちぶせしている。が、母親の口汚いののしりと邪険な態度が、そんな彼の気持ちを打ち砕く――。愛に飢え、愛を求めながら、母親のあまりの反応のなさに悩み傷つく少年の姿を生き生きと描き、読者の感涙を誘う不朽の名作!
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この作品のレビュー
平均 3.5 (22件のレビュー)
-
赤い髪の毛をした、少年が、母、兄、姉、父と過ごす日々を、
綴った連作ショートショートといった感じだろうか。
どうにもこれは著者の、自伝的な小説のようだ。
ちなみに、
この物語には、
「子供を愛せぬ母…と、母を愛せぬ子供との宿命的な対立(悲劇)」
という解釈がまずあったらしく、
それを訳者は、
「むしろ、愛し合っているくせに、愛し合う手段を持ちえぬ、
故の日常(喜劇)」と捉えているようだ。
個人的には、前者というよりは後者に近しいとは思うものの、
訳者のあとがきを読んだ限りでは深読み感は否めない。
この物語の面白さは恐らくは読み手によって、内容が、
まるで変わってくるというところだろうと思う。
なぜならば、この著作の特徴を列挙するならば、
・残酷な描写がしばしば見られる。
・登場人物たちがそれぞれ残酷な面を持ちえている。
・コミカルに描かれているものの、総合的に観るとリアリティが高い。
・細やかな日常が綴られている。
・キャラクター性が強くて、それぞれの登場人物が活き活きと脳内で再生できるようになる。
・残酷な描写の裏には、所々不器用な愛情が見え隠れしている。
・物語から透けて見える著者の自伝的性質。
となるだろうか。こうした特徴を持つ以上、正直、この物語は読み手によって、悲劇にも喜劇にも、自伝にも、何にでも変わりえるだろう。では、なぜこうした性質を持ちえてしまったのだろうかと言うと、それはつまりある種で屈折し、そしてある種で世界を残酷なまでにはっきりと見渡す慧眼を著者が持ちえていたからだろうと感じる。
恐らくは家族それぞれが不器用で、うまく愛情を伝えることができずに、それでいて各々が高慢であったのだろう。つまり、周りから見ればにんじんは虐待されているようにしか映じないかもしれないが、しかし、にんじんは彼らを愛してもいるし彼等に愛されているということも理解しているので、憎みきることはできずに、どこかしらコミカルな要素が入りこんでしまう。しかし、にんじんの内には沸々としたうねりのようなものが残ってしまう。ストレスと言ってもいいだろう。それが歪みなにかしらの形で発散され、それが、にんじんのときおり放つ残虐性へと昇華(というとあれだが)されていく。また、彼は愛されているということを理解しながらもやはり自信がない。その自信のなさが、「やたらと醜い、醜い」と己の外見をこきおろす描写へと表出しているのではないか。
この物語を読むときに、残虐性が目に付き、ついでコミカルな描写や人物性が目に付き、最後にそれでもどこかしらに漂う互いを思いやる愛情が目に付くのではないだろうか?個人的にはこの残虐性は胸糞が悪くなるところがあり、また、コミカルな部分もなんというか、虐められっ子が「遊んでいるだけだよ」と言い、虐めっ子が「じゃれあっているだけだ」と言うような、そういう胸をすくような奇妙な思いやりがあり、さらにはそれでも「本当は愛し合っているのだ」という都合のよさが目についてどうにも、胃がむかむかするような性質を持ち合わせているようにも感じられるのだが、これこそがおそらくはリアルなのだろうと感じる。たいていのひとが頭に描いている親子の関係というものはどうにも、理想化されたものであろうように思われるし、実際にひとってやつは過去の経験を美化する傾向にもあるので。
例:親離れした子供が親を思い返すとき。学校を卒業した後に部活の顧問や部長を思い返すとき。退職した後で上司を思い返すときなど……、たいてい時間が経つと美化されるものであろう。続きを読む投稿日:2011.04.23
原題 Poli de Carotte by Jules Renard
#英語 タイトルは見つからず。
愛情を求める少年…でも残酷
読み終えて複雑な気持ちに
かわいそうな話、と単純化するのもピンとこな…いし
不可解な余韻をくれた本続きを読む投稿日:2021.07.10
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